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活動レポート

宇宙技術でヒューマンスキルを強化しよう!
1980年~85年生まれのメンバー限定! メンバー交流会

活動レポート



アカデミーヒルズ ライブラリーメンバーの開催レポート
開催日:2019年9月30日(月)
文・写真 / 小林 こず恵(エディター/六本木ヒルズ ライブラリーメンバー)

2019年9月30日、「1980年~1985年生まれのメンバー限定」と題された交流会。これからの社会を担う30代のビジネスパーソンに向けて「宇宙技術でヒューマンスキルを強化しよう!」というテーマで、有人宇宙システム株式会社 有人宇宙技術部主幹の山口孝夫さんにリーダーシップについてお話し頂きました。

会場には50名を超える参加者が集まり、最後には、なんと参加者全員で宇宙プロジェクトを考えるシーンも…!?
企業で働くマネジメント層はもちろん、すべてのビジネスパーソン必見の内容です!
 

宇宙も企業も一緒。求められるのはヒューマンスキル


スピーカーの山口孝夫さんと、本イベントのモデレーター小林江里子さん(ライブラリーメンバー)。

「宇宙飛行士と企業の中間管理職は似ている」と話す山口さん。いずれも共通して、“ヒューマンスキル”が重要だと言います。

ーー宇宙飛行士も企業の中間管理職も、様々な担当者と協力して動かなきゃいけない点では一緒。宇宙飛行士には、異分野の人々と良好な対人関係を築いていくヒューマンスキルが求められます。常に生命の危険に晒されているわけですから、皆とうまく連携していかなければ生死に関わるわけです。

国際宇宙ステーションの宇宙飛行士は、アメリカ、ロシア、欧州、カナダ、日本と多国籍。また、地上には、管制官であるフライトディレクター、エンジニア、研究者、医療要員、訓練要員など、様々な立場の人たちがいて、連携しています。宇宙と地上が一緒になって仕事をしているわけです。



山口孝夫(やまぐち・たかお) 有人宇宙システム株式会社(JAMSS)有人宇宙技術部主幹 博士(心理学)
これらすべての人とうまくコミュニケーションが取れなければ、国際宇宙ステーションは運用できません。

一方、企業も同じ。チームメンバーはもちろん、他部門や外部企業と円滑なコミュニケーションが取れないと、事業がうまく回りません。いずれもヒューマンスキルが問われるという点では同じそうです。

リーダーに必要なのは“信頼、勇気、覚悟”


では、 “良好な対人関係”を構築するために必要なヒューマンスキルの要素とは?

ーー大事なのは「コミュニケーション」「状況認識」「意思決定」「ワークロード調整」「チームワーク」の5つ。意思疎通を行い、状況を把握し、適切な意思決定を行い、チームで実行するスキルです。すべて大事ですが、最終的にチームが一丸となって目標達成するためには、何においてもリーダーシップが求められます。

ちなみに、国際宇宙ステーションにおけるリーダーは必ずしも船長ではなく、時と場合によって変化します。スペースシャトル時代は船長イコールリーダーでしたが、今は違います。国際宇宙ステーションは規模も大きく、実験も仕事も多岐に渡るので、タスク毎にその分野のエキスパートがリーダーになるんです。船長であっても誰かに任せる時はフォローという立場に回ります。

よく考えたらそれはすごいことで、リーダーがフォロワーを信頼しているからこそ成り立つわけです。どんなに能力があっても、誠実じゃない人には任せられないですよね。ましてや宇宙という緊張感ある空間で、信頼なしにはありえません。「相手への信頼、仕事を任せる勇気、でも最後には、何かあったら自分が責任を負う覚悟」。この3つを持つことが、リーダーシップにおいて非常に重要だと言います。


「連携のストーリー」を語れないとダメ



「リーダーシップにおいて重要なのは「信頼・勇気・覚悟」の3つ。加えて、宇宙で予期せぬ緊急事態が起こった時は、「一瞬でチームの意思疎通を図る」必要があり、宇宙環境ではいつでも迅速な判断が求められます。」と山口さんは続けます。

ーー国際宇宙ステーションには常時6人の宇宙飛行士がいるわけですが、先程お話ししたように、地上にいる様々な人たちが関わり成り立っています。宇宙で緊急事態が起こった際には、関わるすべての人に瞬時に伝わるストーリーを語れることが大事になってきます。それが「連携のストーリー」です。

「連携のストーリー」とは、まずは大きな夢(Vision)を示し、そして道筋(Strategy)
を示し、最後にやり方(Activities Directions)を示すことです。「VSA」と呼んでいますが、どれが欠けてもいけません。またシンプルで簡潔であることも大事です。緊急事態は説明に10分も1時間もかけていられません。3分以内に皆を動かせるような説明が求められます。

これは、大規模組織を動かす時も一緒です。ビジョンを示さないと人は動かないし、だからと言って語っているだけでもついてこない。ビジョン、道筋、行動を簡潔にわかりやすく伝えて、ようやく動き出します。

それからもうひとつ、夢を語る際に気をつけてほしいこと。それは、自分の夢だけを描いてはダメだということ。みんなの夢を描いて伝える必要があります。自分のためだけにやっていたら、厳しい場面になった時にメンバーは離れていってしまう。どの分野においても、カリスマと呼ばれる人たちはこれがちゃんとできている。大規模組織はとてもひとりでは動かせない。だからこそ「連携のストーリー」を身につけて、周囲を巻き込む必要があるでしょう。


「火星探査のミッション」にチャレンジ!


後半は、ビジョンを語れるようになるトレーニングということで、「火星探査のミッション」にチャレンジするワークショップが行われました。

世界が賛同する「火星探査プロジェクト」を考え、その後、グループで具体的な計画を立てます。火星で何を成し遂げたいのか? ということを念頭に置いて考え、それからグループで具体的な計画を立ててみます。実生活からかけ離れたテーマということもあり、捻り出すのに苦労している様子でしたが、皆で話し合っているうちにアイデアも膨らんだのか、見事採用されれば火星に連れて行ってくれるという設定も手伝ってか、終盤は各チームとも話が止まらないほどでした。 


全グループの火星探査プロジェクトを発表
最後に、各チームからそれぞれのプロジェクトのプレゼンテーションが行われました。その中のひとつで「いがみ合っている国のトップをひとつの宇宙船に乗せれば、戻ってきた時に仲良くなっているのでは? 」という発表に山口さんは、「とてもユニークなアイデアですね。実は、国同士がひとつになるということは、実際にもあります。宇宙飛行士も最初のうちは、地球を見た時に「この場所が生まれ故郷だ」と自国を指しているのですが、時間が経つにつれ「これが私たちの地球だ」という地球視点に変わってきます。大統領や世界の首相を宇宙ステーションに乗せる事で、国単位ではなく、ひとつの地球という感覚を持てるようになると、とても有効なのではないかと思います。」と賛同しました。

最後に


参加者にエールを送る山口さん
 「今日皆さんにやってもらったトレーニングは、一回だけでは掴めないでしょう。
職場に戻って、大きなビジョンじゃなくてもいいので、とにかくVSAを繰り返しやってみてください。みなさん一人ひとりがリーダーシップを身につけて、ビジョンを語れるようになって頂きたいと思っています。応援しています。」と、会場に集まった30代のビジネスパーソンに、山口さんからエールが贈られました。


山口氏を囲み、参加者全員で集合写真
前半のセミナーとワークショップのあとは、山口さんも交えて交流会が行われました。
参加者からは「仕事でも活かせそう」「組織をいかに円滑に回すか、そのヒントになった」「リーダーはひとりではないという視点が新鮮だった」などという感想が飛び交い、同じ悩みを抱える同世代ということもあり、参加者同士の交流は途切れることなく、熱いまま、幕を閉じましたーーー。