六本木ヒルズライブラリー

『仕事に追われない仕事術』出版記念セミナー
究極の集中力・安らぎ・充実感を実現する「タイム・マネジメントの黄金法則」とは?
開催レポート

ライブラリーイベント

【Discover21×アカデミーヒルズ ライブラリー】
『仕事に追われない仕事術』出版記念セミナー
究極の集中力・安らぎ・充実感を実現する「タイム・マネジメントの黄金法則」とは?
2016年12月6日(火)19:00~20:30@スカイスタジオ



画期的なタイム・マネジメントの書として全英ベストセラーになった『マニャーナの法則』の改定版『仕事に追われない仕事術 ーマニャーナの法則・完全版ー』(著・マーク・フォースター/訳・青木高夫)の刊行を記念し、本書の訳者・青木高夫さんをお迎えして時間管理術のセミナーを開催しました。『マニャーナの法則』は、青木さんのイギリス赴任時代、仕事が一番つらかった時期に出会った本で、当時、夢中になって読みふけったそうです。青木さんご自身、この本から多くのひらめきをもらい、仕事術の技術的なことから人生観まで、大きな影響をうけた書籍ということで、とても熱の入ったお話になりました。
この本には18のキーワードが出てきますが、これを3つの大きなエッセンスの中で拾いながら「マニャーナの法則」が提唱する仕事術の解説を訳者であり、実践者でもある青木さんにしていただきました。

タイムマネジメントの課題


まずは、現状の課題からです。皆さんのタイムマネジメントはうまくいっているでしょうか?うまくいっていない場合、その原因はなんでしょうか?それには、コミットメントが関係してくると言います。コミットメントとは、この仕事を引き受けますという周囲や自身への宣言ですが、このコミットメントのしすぎにより、仕事を抱えすぎているのではないでしょうか?コミットメントばかりしていると圧倒的に時間が不足し、いつまでたっても仕事が終わらないというサイクルに陥ってしまいます。かつて青木さんも、依頼されるとすぐに引き受けてしまう傾向にあったそうです。仕事をやってもやっても、新たに引き受けるのでいつまでも仕事は終わらないというスパイラルを断ち切るには、「リミット」を設けることを提案しています。著者は本の中でデフォルトで仕事はNoと言いなさいと言っていますが、さすがにその流儀を日本にそのまま持ち込むわけに行かないので、Noと言えない時は、ある程度の期限を設けて引き受けるようにすると良いといいます。これができないと、どんどん仕事が入ってきて、いかに仕事術を改善しても状況はよくはなりません。

そして、もう一つの問題が、誰でも使っているTo Doリストです。やるべきことのリストは、コミットメントのしすぎでどトイレットペーパー化してしまいます。一日にできる仕事量と、リストに書く項目数のバランスを考える仕組みになっていないTo Doリストは、大抵は、リミット無しではどんどん長くなる傾向にあります。ここでも「リミット」を設けることはとても重要なポイントになっています。

また、長くなったリストに先順位をつけることもよくやりがちなことですが、それでは、優先順位の低い仕事はいつやるのか?という問題が新たにでてきます。優先順位は、たいてい緊急度が高いものが優先され、重要度が高くても、リスト上では緊急度が高いほうが優先されてしまいます。重要度の高い仕事とは、経営企画とか経営計画とか3年後のありたい姿を作るとかとても重要な仕事である場合が多いのですが、「来年の販売計画を作る」と「メールの返信」が並ぶと、日常の業務では期限のあるメールの返信が優先されてしまいます。そして、重要度の高い仕事をいつやるか?というと期限が迫ってくる2、3日前になり、やっと緊急度が上がってきて、慌ててやっつけるという事態を招くことになります。本来スケールの違う仕事ですが、優先順位をつけることにはこんな問題がかくれているのです。

タイムマネジメントの解決策の提案


そこで提案されたのが、クローズドリストです。クローズドリストはオープンリストと違い、項目が増えないリストで、自分のできる範囲とリストの項目のバランスの取れていて、必ずやるというWill Doリストです。バランスがとれているので、今日は早く帰ると決めた日のWill Doリストは短くなります。

そのリストに入らないものは、マニャーナの法則を使います。「マニャーナ」とはスペイン語で「明日」という意味ですが、マニャーナの法則は、仕事をすべて明日やるという方法。その日に来た仕事は一旦バッファーゾーンに置き、一日置いて、改めて仕訳をしてWill Doリストに入れます。その日は前の日から送られてきている仕事に集中します。こうすることで、仕事の種類をまとめて処理できるため、効率が良くなります。それでも仕事がはみ出してしまう場合は、きっと仕事量が合っていないということが考えられるので、仕事の量を見直します。マニャーナの法則の著書は1日も待てない仕事は滅多にあるものではないと言います。

また、緊急度と重要度の優先順位の問題については、朝一番にやる仕事「First task」にリミットからはみ出した仕事や遅れてしまった仕事、重要度の高い仕事を処理するようにします。そして、重要度の高い仕事はプロジェクトであることが多く、仕事の単位が大きく、取り掛かり難い傾向があります。その場合は、手掛けられる仕事まで分解して「First Task」に載せます。重要度の高い仕事は抵抗感がある場合が多いので、取り掛かれるまでやさしくして、抵抗感を取り除くことが大事だと言います。青木さんもFirst TaskやWill Doリストなどは、自身も日常的に活用していて、とても役に立っているそうです。

なぜ、タイムマネジメントするのか?なぜ改善するのか?



このようにして、タイムマネジメントをすると仕事が効率的になり、時間の余裕ができてきます。
では、その時間を何に使いますか?

時間に余裕ができたので、もっと仕事を入れてしまっては、結局仕事に追われて同じ状況を招いしてしまいます。著者は空いた時間には、本当の仕事をしてほしいと言っています。メールを送ったり、請求書を出したりという仕事を「忙しいだけの仕事」ということに対し、構想を練ったり、企画を考えたりする仕事を「本当の仕事」と定義しています。事業を目指すところに近づけるための対策を考えたりすることは、チャレンジングであり、嫌だと思うことも沢山あると思いますが、忙しいだけの仕事だけしていては、前に進みません。考える時間を作ってください。考えない人を作ってしまうと、毎日の仕事は終わっても人間も成長しないし、組織も成長しないと著者は言っています。

青木さんが所属するホンダの創業者、本田宗一郎氏は「プライベートな生活をエンジョイするために仕事の時間を酷使してください。」と社員に言っていたそうです。タイムマネージメント、仕事術というのは、そういうことのためにあるのではないでしょうか?と青木さんは著者に成り代わり参加者に訴えます。趣味やゆっくり過ごすことで、豊かな気持ちになり発想力も高くなります。もちろん、もっと仕事をしてもいいけれど、その時は考える仕事をしてほしいと言います。この仕事術は、青木さんが身をもって実践してきたことだけに、大変説得力のあるセミナーでした。

【スピーカー】青木 高夫(本田技研工業株式会社 社長付/専修大学 大学院 客員教授)