記事・レポート
‘AI’=ROBOT?
世を席巻するAIを読む
更新日 : 2017年07月18日
(火)
第5章 ‘AI’を哲学する
現代思想家によるAI論
澁川雅俊: 「AIは、いつ主観的世界を持ち始めるのか?」「私というものを持ちうるのか?」「そうならば、それはいかにしてなし得るのか?」「その世界とは、その身体とは何か?」。まだまだAIに関する疑問は尽きません。
『いま世界の哲学者が考えていること』〔岡本裕一朗/ダイヤモンド社〕は、「我々の身にいま何が起こりつつあるのか」「我々は何者なのか」を問うてきた前世紀までの哲学者と同様に、現代社会の重要なイシュー「ITは人類に何をもたらすのか」「バイオテクノロジーは人間をどこに導くのか」「資本主義は21世紀でも通用するのか」「人類が宗教を捨てることはあり得ないのか」「人類は地球環境を守らなければならないのか」などのテーマについて、21世紀の哲学者の思考をレビューしています。
いずれの問題にもAIが関わっていますが、ITに限定すれば、「スマートフォンは本当に市民のためのメディアか」「世界はいま監視社会、管理社会に突入しようとしているのではないか」「人間と同等の会話ができるAIは本当に生まれるのか」「IT革命は人間の未来をどこに導くのか」について論じています。
「グーグル・ビッグデータ・人工知能」との副題が付された『情報社会の〈哲学〉』〔大黒岳彦/勁草書房〕は、google、SNS、ロボット、AI、シンギュラリティ、情報倫理などのキーワードから、急速に変容しつつある現代情報社会の本質を考察しています。学術書ではありますが、AIビジネスに舞い上がる人も、それに懸念を抱く人も傾読すべき1冊です。とりわけ、ロボットが「遺伝子の意図的改良と不老不死を獲得する‘生物革命’が起き、全知全能の類に至る」人間の進化を促すと宣言しています。先に挙げた『人工超知能が人類を超える』にショックを覚えた読者には、この本を併せ読むことをお薦めします。
『いま世界の哲学者が考えていること』〔岡本裕一朗/ダイヤモンド社〕は、「我々の身にいま何が起こりつつあるのか」「我々は何者なのか」を問うてきた前世紀までの哲学者と同様に、現代社会の重要なイシュー「ITは人類に何をもたらすのか」「バイオテクノロジーは人間をどこに導くのか」「資本主義は21世紀でも通用するのか」「人類が宗教を捨てることはあり得ないのか」「人類は地球環境を守らなければならないのか」などのテーマについて、21世紀の哲学者の思考をレビューしています。
いずれの問題にもAIが関わっていますが、ITに限定すれば、「スマートフォンは本当に市民のためのメディアか」「世界はいま監視社会、管理社会に突入しようとしているのではないか」「人間と同等の会話ができるAIは本当に生まれるのか」「IT革命は人間の未来をどこに導くのか」について論じています。
「グーグル・ビッグデータ・人工知能」との副題が付された『情報社会の〈哲学〉』〔大黒岳彦/勁草書房〕は、google、SNS、ロボット、AI、シンギュラリティ、情報倫理などのキーワードから、急速に変容しつつある現代情報社会の本質を考察しています。学術書ではありますが、AIビジネスに舞い上がる人も、それに懸念を抱く人も傾読すべき1冊です。とりわけ、ロボットが「遺伝子の意図的改良と不老不死を獲得する‘生物革命’が起き、全知全能の類に至る」人間の進化を促すと宣言しています。先に挙げた『人工超知能が人類を超える』にショックを覚えた読者には、この本を併せ読むことをお薦めします。
望まぬ未来の可能性
澁川雅俊: 『人工知能は敵か味方か』〔J・マルコフ/日経BP社〕には、「パートナー、主人、奴隷—人間と機械の関係を決める転換点」との副題が付けられています。この本のアジェンダは、「この10年、グーグルが自動運転車を開発し、ロボット会社を何社も買収した。アップルはパーソナル・アシスタントのSiri(Speech Interpretation and Recognition Interface)を発表した。そしていま、人工知能やロボットが人間のビジネス、教育、ヘルスケア分野に導入されつつある。人工知能は、人間の仕事を奪う敵になるのか、それとも人間の能力を‘拡張’する味方になるのか」というもの。
著者は、ピュリッツァー賞も受賞したニューヨーク・タイムズ紙のベテラン敏腕記者で、米国のIT業界を基盤としたAIビジネスの現状を踏まえ、「自立的ロボットはいつとは特定できないが、必ず実現する」と語っています。そして、その時に問題となるのは、「人間がAIをどう使って、この世界をどうしたいのかを明確にできるかどうかだが、概してテクノロジーが予想外に使われることは、歴史的事実が証明している」と警告しています。
『人工知能』〔J・バラット/ダイヤモンド社〕は、「人類最悪にして最後の発明」との副題があるように、シンギュラリアンが論じる‘未来’に反論しています。著者は2014年『タイム』誌が選ぶAIによる人類滅亡を論じる重要な識者5人に、スティーブン・ホーキングやイーロン・マスクとともに選ばれたTVプロデューサーで、数々のAI研究者や技術者の取材を通じて次のように主張します。
「最初に作られる賢い機械、およびそれに続いて作られる人間より賢い機械は、最終的には我々の生活と融合することなく、逆に我々を征服する。研究者はAGI(汎用人工知能)を追究することによって、自分より賢く、自分では制御できず、十分に理解することもできない知能を作ってしまうことになる」。
著者は、ピュリッツァー賞も受賞したニューヨーク・タイムズ紙のベテラン敏腕記者で、米国のIT業界を基盤としたAIビジネスの現状を踏まえ、「自立的ロボットはいつとは特定できないが、必ず実現する」と語っています。そして、その時に問題となるのは、「人間がAIをどう使って、この世界をどうしたいのかを明確にできるかどうかだが、概してテクノロジーが予想外に使われることは、歴史的事実が証明している」と警告しています。
『人工知能』〔J・バラット/ダイヤモンド社〕は、「人類最悪にして最後の発明」との副題があるように、シンギュラリアンが論じる‘未来’に反論しています。著者は2014年『タイム』誌が選ぶAIによる人類滅亡を論じる重要な識者5人に、スティーブン・ホーキングやイーロン・マスクとともに選ばれたTVプロデューサーで、数々のAI研究者や技術者の取材を通じて次のように主張します。
「最初に作られる賢い機械、およびそれに続いて作られる人間より賢い機械は、最終的には我々の生活と融合することなく、逆に我々を征服する。研究者はAGI(汎用人工知能)を追究することによって、自分より賢く、自分では制御できず、十分に理解することもできない知能を作ってしまうことになる」。
「サイバー空間と新自由主義」との副題が付けられた『人工知能と21世紀の資本主義』〔本山美彦/明石書店〕は、社会的公正を理念に掲げた新自由主義を背景にしたビジネスに、とりわけ労働破壊、証券取引・金融不安に対する警告を発しています。著者は、人工知能と化した科学者の姿を通して、過度に高度化した科学技術がもたらす危機を描いた米中英合作のSF映画『トランセンデンス』(2014年公開)をいま、目の当たりにしているようだと述懐しています。
標題に「人工知能」とありますが、話題の中心はITであり、経済学者である著者は、モラルサイエンスとしてスタートした経済学の根幹が、いまや競争の修羅場で勝者となるために社会的公正を忘れ去り、利益を追い、際限なく巨大化するサイバーリベラリズム(ITを信仰する新自由主義企業経営)にすり替わっている事実を痛烈に批判しています。
標題に「人工知能」とありますが、話題の中心はITであり、経済学者である著者は、モラルサイエンスとしてスタートした経済学の根幹が、いまや競争の修羅場で勝者となるために社会的公正を忘れ去り、利益を追い、際限なく巨大化するサイバーリベラリズム(ITを信仰する新自由主義企業経営)にすり替わっている事実を痛烈に批判しています。
該当講座
アペリティフ・ブックトーク 第41回 ‘AI’=ROBOT?
今回は、人工知能(AI)にまつわる本がテーマのブックトーク。
ライブラリーフェロー・澁川雅俊が、さまざまな本を取り上げ、「今までの」そして「これからの」AIを読み解きます。
‘AI’=ROBOT? インデックス
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第1章 想像できることは、必ず実現できる
2017年07月12日 (水)
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第2章 そもそも、AIとは何ですか?
2017年07月12日 (水)
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第3章 人間の脳とディープラーニング
2017年07月14日 (金)
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第4章 ‘シンギュラリティ’と2045年問題
2017年07月14日 (金)
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第5章 ‘AI’を哲学する
2017年07月18日 (火)
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第6章 AIとビジネス
2017年07月18日 (火)
注目の記事
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