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0円の仕事~NO LIFEWORK, NO LIFE.~

箭内道彦が語る「タダでもやりたい仕事」

更新日 : 2015年08月26日 (水)

第5章 僕は、福島と結婚した


 
故郷へのメッセージ

箭内道彦: 東日本大震災の直後、福島中央テレビから「福島県民に向けてメッセージがほしい」と依頼されました。福島が大嫌いだと公言していた僕が、福島が大変な時に何を言えばいいのか。複雑な気持ちを抱えたまま撮影に入り、次のように話しました。

福島県郡山市出身、クリエイティブディレクターの箭内道彦といいます。
一体、僕に何ができるだろうってことを考えながら、いろんなことをしてるんですが。
1つは県民の皆さんに、非力ではありますけど、
心強いっていうふうに思ってもらえるようなことは、
できるだけ何でもしていきたいなと思っていて。

一生、福島県のこれからのために僕は頑張っていくってことを、
ここで約束させていただきつつ、
その中には風評をね、全国からの風評をどう払拭していくかっていうことを、
僕の専門である広告だったり、コミュニケーションの発信を含めて考えていったり。
いろんなことをしてこうと思っていますので、一緒に頑張っていきましょう。


これを撮影したのは3月20日。硬くこわばった表情に、当時の僕の気持ちが表れていると思います。なぜ、これをご紹介したのかと言えば、僕は元々、未来に対して約束することがとても苦手だったからです。

約束できない男の約束

箭内道彦: 僕は昔からロックが大好きで、「明日のことなど分からない」という生き方に憧れ、背伸びをしながら生きてきました。現在は50歳で独身ですが、その理由も未来に対して約束ができないから。結婚したら、離婚したくなるかもしれない。そうなれば、約束を破ることになる。

そんな僕に2010年、結婚情報誌『ゼクシィ』からCM制作の依頼が届きました。「結婚のことはまったく分かりません。興味もありません。だから無理です」。丁重にお断りしたところ、同誌の編集長から「そんな箭内さんが結婚をどのように表現するのか、ぜひ見てみたい」と言われました。それは、僕も見てみたいなと思いました(笑)。その時に作ったのが、内田裕也さんと樹木希林さんご夫婦のCMです。30年近く別々に暮らすお二人にとっては、初めてのCM共演でした。

お二人の協力により、とても素晴らしいCMができましたが、僕の中に結婚願望は芽生えませんでした。それほど約束嫌いだった僕が、生まれて初めて誰かに約束をしたのが、福島中央テレビのメッセージだったわけです。

「頑張れ」「応援する」では期間限定的な印象があり、福島の人達には届かない。「一生支えます」でなければダメだ、と思いました。そして、この言葉を口にした時、「僕は、福島と結婚したのだな」と感じました。この場合、相手の意志はまったく確認していませんが(笑)、とにかく僕は何があっても一生支え続けると、福島に約束しました。

「一生支える」と約束した人間が、「明日のことなど分からない」という生き方では、何ともお粗末な話です。できるだけ健康に過ごし、長生きをしなければいけないという発想も、この時初めて芽生えました。

2011年3月、『月刊 風とロック』とともに、福島を支え続けることが僕のライフワークに加わりました。福島の人達に対して、どれほどのことができているのか分かりませんが、僕としては「一生支える」という思いを常に持ちながら、いまも活動しています。

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六本木アートカレッジ 0円の仕事~NO LIFEWORK, NO LIFE.~
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「0円でやる仕事」、それが「ライフワーク」。なりたい職業より、やりたいこと。箭内流のライフワークの考え方、見つけ方についてお話しします。