記事・レポート

鶴田真由 X 高木由利子『記憶の底に眠るもの』

存在の表現を通して、文化を発信する

更新日 : 2013年09月17日 (火)

第1章 記憶の底に眠るもの

映画や舞台など演技を通じて“人の存在”を表現する、世界中を旅しながら独自の視点で“人の存在”を写し取る。そんな共通項をもとに、女優の鶴田真由さんと写真家の高木由利子さんは、『記憶の底に眠るもの』プロジェクトに取り組んでいます。
自然と共に生きる表現者と生活文化を紹介するプロジェクトの詳細をはじめ、写真や文章、映像などの媒体を通して、ふたりが伝えたい存在とは?といった表現活動の根源まで。<六本木アートカレッジ>でのトークセッションから、その輪郭が浮かびあがってきました。

ゲストスピーカー:鶴田真由(女優)
ゲストスピーカー:高木由利子(写真家)

鶴田真由(女優)
鶴田真由(女優)

 
自然と共に生きる表現者

鶴田真由: 私は10年ほど前、共通の友人を介して、初めて由利子さんにお会いしました。それ以前から私は、由利子さんの写真が醸し出す世界観が好きで、いつかお会いしたいと思っていました。

私たちは現在、日本ロレックス株式会社が立ち上げた『日本列島 知恵プロジェクト』(http://www.chie-project.jp/)の中で、一緒にお仕事をしています。このプロジェクトは、日本の里山・里海に古くから伝わる自然と共生するための知恵や、その知恵が受け継がれる地域の生活文化を取材し、発信していくものです。

このプロジェクトの中で、私たちは『記憶の底に眠るもの』を展開しています。自然とふれ合いながら活動する表現者たちに取材を行い、人は自然の中で何を感じ、どのようなメッセージを受け取っているのか。写真、文章、映像という手段を使い、表現者おひとりにつき、3つのコンテンツをアップして、ウェブで公開しています。

染織家・志村ふくみ

鶴田真由: 『記憶の底に眠るもの』第1回に登場いただいたのは、京都・嵯峨野で活動されている染織家の志村ふくみ(※編注)さんです。私は、志村さんが草木染で作られた紬織(つむぎおり)のお着物や、独特の雰囲気を持った随筆が大好きで、初回は志村さんにと思い、ご依頼しました。

話を進める前に映像を見ていただきたいと思います。まずは志村さんの第1回、第2回をご覧ください。この映像は「スチルムービー」で、写真を連続的に使い、繊細な動きを表現しています。

(第1回/http://www.chie-project.jp/memories/story1_movie.html

志村ふくみ1 人生は経糸と緯糸 from chie.project on Vimeo.


(第2回/http://www.chie-project.jp/memories/story2_movie.html

志村ふくみ2 生命のうまれる小宇宙 from chie.project on Vimeo.



志村さんの撮影時間は半日のみ、事前の打ち合わせもほとんどないままに始まってしまいました。限られた時間で撮影しなければならず、由利子さんも大変だったと思います。しかし、後日見た写真は、素晴らしいものばかりでした。由利子さんの瞬発力に驚かされました。

高木由利子: 普段はとてもスローですが、カメラを構えると、スイッチが入ります。写真家の仕事は結果がすべて。エクスキューズは一切通用しません。撮影時間が5分でも、5日間でも、とにかく結果が良くなければダメ。そうしたプレッシャーに耐えられる人が、写真家に向いていると思います。

※編注
志村ふくみ
紬織の重要無形文化財保持者(人間国宝)。草木染の絹糸を使った紬織の第一人者。随筆家としても大佛次郎賞、井上靖文化賞などを受賞。

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