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自分らしく輝く

白木夏子、安藤美冬 ーー 多様性の先に見えた新しい起業のカタチ

更新日 : 2013年07月08日 (月)

第6章 自由で働きやすい枠をつくる起業という方法

白木夏子(HASUNA Co.,Ltd.代表取締役・チーフデザイナー)

 
女性も男性も心地よく働ける環境を

安藤美冬: 2013年の元日、NHKEテレで放送された『ニッポンのジレンマ』という番組でご一緒した際、夏子さんが「女性は起業に向いている」「起業したほうが働きやすい」とおっしゃっていました。その理由を教えていただけませんか?

白木夏子: 私は以前、不動産投資ファンドに3年間勤めましたが、まさに男性中心の社会がありました。週7日働くのは当たり前、終電で帰宅できれば良いほうで、真夜中に上司に呼ばれてタクシーで会社に駆けつけたことが何度もありました。そうした状況で、結婚して子どもを産んで育てることは、まったくイメージできませんでした。

最初の1年半は最前線で働き、後半はバックオフィスに移り、会計などを担当しました。そこに子育てをしながら働いている女性がいました。彼女の動き方を見ていると、周囲にとても気を遣っていた。時短勤務で夕方に退社する際は、必ず「すみません」と謝りながら部屋を出る。子どもの病気を理由に休むときには、翌日必ず周囲のスタッフにお菓子を配っていました。私はとても不思議に感じ、男性中心の働き方が根底にあるから、そうしたことになっていると思ったのです。

いっぽうで、会社の外を眺めると、子育てしながら起業した人、フリーランスで働いている人がたくさんいました。それを見て、「自分で働きやすい新しい枠をつくるべきだ」と感じたのです。少なくとも現在の日本では、新しい枠をつくり出さないと女性は気持ちよく働くことができないと思います。

公的機関や大企業では若干変わってきたかもしれませんが、日本では「社会人たる者かくあるべし」という常識が、男性を基準にしてつくられていると思うのです。子育てをしながら働くことに対して柔軟に対応できない社会の空気がある。ならば、旧来の組織という枠から外れて、自分らしく柔軟に働くために、起業したほうがよい。先日の発言にはこうした背景がありました。

私が参加している世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、世界の男女格差に関する年次報告書を出しています。2012年版では調査した135カ国中、日本は101位。先進国の中ではほぼ最下位です。この問題を昨年秋のダボス会議で議論したところ、最終的には日本社会の多様性の少なさに行き着いてしまいました。

働き方については、女性だけでなく、男性も同じように悩まれていると思います。社会の中に旧来の働き方のイメージが根強く残っているから、女性だけでなく男性も休暇が取りにくい。多くの男性が“イクメン”になりきれない理由も、このあたりにあるのではないでしょうか。