記事・レポート
吉田カバンの社長が語る「メイド・イン・ジャパン」ブランド
変わらないけど変わり続ける“ぶれない経営”に迫る
更新日 : 2010年02月19日
(金)
第3章 経営の基本のすべては倉庫番時代に学んだ
吉田輝幸: 私には、大学卒業後は公認会計士になりたいという希望がありました。当時は就職先というのはほとんど大学のゼミの先生が決めていまして、私は某銀行に決まっていましたが、ある日、先生から「君はお父さんの会社を将来手伝わないのか? よく相談をしてきなさい」と言われました。
私には1人の兄と2人の姉、それから1人の弟がおりました。兄も弟も入社していました。父から「どうしてもお前にも入ってほしい」と言われ、教授からも「銀行に入っても、5、6年で辞めてお父さんの会社に入るのであれば、初めからお父さんの背中を見て働きなさい」と勧められ、最終的に父のところに入ることにしました。
入社してすぐに配属されたのは倉庫番でした。今のように物流倉庫がない時代です。私は最初、「倉庫を整理すればいい」という考え方でいましたが、その後そうではないことに気付きました。今ではこの経験は、いろいろな面でありがたかったと感じています。それは、職人さんとの接点、営業スタッフとの接点、それから物の動き方がすべて倉庫にいるとわかったからです。
職人さんは皆、昔堅気の職人気質の強い方々ですので、最初はなかなか口を利いてくれないのですが、年が経つにつれ、いろいろなことを話してくれました。カバンについての知識も、職人さんから教わりました。
営業スタッフは毎朝、当日売る商品を倉庫に取りに来ます、売れている商品、売れが鈍い商品の傾向は、営業が帰ってくるとすぐにわかるわけです。それだけで物の流れ、会社の実情がよくわかりました。
倉庫で約5年間、勉強をさせてもらいました。そのあと、仕入れ部や経理部、総務などでもいろいろな勉強をし、昭和50年から取締役、平成14年に代表取締役社長に就任いたしました。
私には、プライベートブランド「PORTER」を日本一にしたいという大きな願望がありました。発表当時、わが業界は海外ブランドとの提携が盛んで、市場でもそれが歓迎され、「PORTER」ブランドは売り場の隅に追いやられてしまいました。しかし、「いつか絶対海外ブランドは日本に直営店を出すようになり、日本でライセンス契約をしている会社は淘汰されて苦しくなる」と考えていました。
その後、各メディアがものづくりのよさを理解してくださり、わが社のカバンを取り上げてくれるようになりました。また「PORTER」を愛してくださる消費者の皆さまが定着してまいりました。
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該当講座
吉田輝幸(株式会社吉田代表取締役社長)
首藤敏明(博報堂ブランドコンサルティング社長)
本セミナーでは、独自の輝きを放つ日本発のブランドを育てた経営者の一人である、吉田カバンの吉田輝幸氏をお招きします。1935年の創業以来一貫して変わらない鞄づくりに対する技術のこだわりと、長く愛され続けるブランドをどのように確立してきたか、その手法に迫ります。
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