六本木ヒルズライブラリー

組織・コミュニケーションに効く6冊

更新日 : 2025年03月25日 (火)





転職や職場の移動、あるいは趣味や学び直しのため新しいコミュニティに入る……年度の切り替わりに伴い、新たな出会いも多いこの季節。人間関係が広がることは楽しく、刺激的なものですが、決して楽なことばかりではありません。環境が変われば価値観やルールも変わります。どんな相手でも、一から関係を築くことは大変なものです。今月ご紹介する書籍は、人間関係や組織運営の悩みに答える6冊。リーダーとして部下を迎えるという方にも、新入りとしてチームに飛び込むという方にもおすすめです。
 

冒険する組織のつくりかた
「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法
安斎勇樹/テオリア
部下も、マネージャーも、経営者も、なぜ「会社がつまらない」と思うのか?会社のどのポジションにいるかにかかわらず、成長意欲があり優秀な人ほど、組織のために自分を抑えるという苦い経験があるのではないでしょうか。その原因は、「世界観のズレ」。旧来の、社員を道具として統制する組織ではなく、一人一人の自由な挑戦を組織が支えるという形が現代では求められています。

本書はそれを「冒険」と捉え、チーム作りから学習文化にいたるまで、具体的な実践方法が満載。アカデミックな組織論に裏打ちされた本書は、多くの有名企業における改革の実例も収録しています。組織人には必携の一冊です。

1%の革命
ビジネス・暮らし・民主主義をアップデートする未来戦略
安野貴博/文藝春秋
東京都知事選でほぼ無名状態の出馬から、15万票もの支持を集めるに至った筆者が掲げる日本の未来戦略とは?本書は「テクノロジー」によって、日本の行政、教育、政治をアップデートするマニフェスト集です。

AIエンジニアである筆者は都知事選でも、チーム運営や民意の集積においてテクノロジーを活用。政治をより透明性が高く、柔軟なものにしようと実践してきました。実装と修正を繰り返し改善していく「システム」を作ることを目指す——本書で語られるエンジニア的アプローチは、組織運営や起業のみならず、あなたの人生における未来戦略になるはずです。

人生の経営戦略
自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20
山口周/ダイヤモンド社
仕事とプライベートの時間配分、成長の停滞をいかに打破するか、若者との関係をどう築くか。人生の悩みは様々ですが、ここで人生を「寿命という限られた資本をいかに利用するかというゲーム」と捉えてみるのはいかがでしょうか。

本書は一つ一つの悩みを経営学の視点から分解し、対処することで、人生はより豊かに、より無駄のないものになると言います。とはいえ、目標はお金の最大化ではなく、人生の価値の最大化。人生120年時代が現実味を帯びてきた今こそ、この複雑で長い「人生」というプロジェクトを成功させるため、よき「経営者」になってみてはいかがでしょうか。

リジェネラティブ・リーダーシップ
「再生と創発」を促し、生命力にあふれる人と組織のDNA
ローラ・ストーム、ジャイルズ・ハッチンズ/英治出版
現代、「サステナビリティ」に象徴されるように、リーダーに求められる責任は、その人が所属する企業やコミュニティを越えて、社会や世界に対しても課せられたものになっています。にもかかわらず、情勢の急激な変化や複雑化への対応が常に求められる中、それを背負う一個人のことがどれほど考えられているでしょうか。

本書が提案する「リジェネレーション」は生命システム論を基に、外部である社会と内部である個人をいかに調和し、つなげるか、という視点に基づく組織論です。常に一つの命としての自分を視野に入れ、内面を調和させることが、社会のために最大限のパフォーマンスを発揮することに繋がるのです。

他者と働く
「わかりあえなさ」から始める組織論
宇田川元一 /NewsPicksパブリッシング
この世にはありとあらゆる「問題解決のノウハウ」があるのに、なぜか自分の企業はうまくいかない。本書はそんな問題を解決する答え——ではなく、解決できないことを受け入れるためのメンターです。

重視するのは「対話」。これは豊富なコミュニケーションが必要だ、という意味ではなく、相手とわかりあえない、という問題を認識し、そこから新しい関係性を作るという視点に切り替えることを意味します。上下関係、同僚関係、あるいは家庭内においても、必ず「わかりあえない」部分は生まれるものです。しかし、それこそ新たなリソースになる。本書はあらゆる組織、あらゆる人間関係に響く本質的組織論です。 

アドバイスしてはいけない
部下も組織も劇的にうまくいくコーチングの技術
マイケル・バンゲイ・スタニエ /ディスカヴァー・トゥエンティワン
困っている部下を助けてあげたい、教えてあげたい……そう思うのは人の性。しかし、それこそが落とし穴かもしれません。コーチングとは、今起きている問題を解決することではなく、これから先起きる問題に対応できる人材を育てること。そのためには、部下の話を聞き、励まし、選択を後押しする必要があります。

変えるべきは部下の日常であり、長期的な関係性なのです。また、部下のコントロールから解放されることは、同時に自分自身の生産性も高めることに繋がることでしょう。アドバイス・モンスターではなく、話を聞くリーダーになるために、本書はきっと最良のコーチングをしてくれるはずです。

今回ご紹介した6冊は、どれも組織や会社のためになると同時に、その一部である自分自身をいかに大切にするか、という視点に立っています。組織やコミュニケーションの改善は、本来、自分にとっても間違いなくプラスになるはずのことなのです。それゆえ、人間関係の悩みを飛躍のチャンスと捉え、前向きに取り組んでいくことが、この変化の多い季節の最大の秘訣なのかもしれません。その良き相談相手として、ぜひ今月の書籍を手に取ってみてはいかがでしょうか。
 

冒険する組織のつくりかた

安斎勇樹       
テオリア

1%の革命

安野貴博       
文藝春秋

人生の経営戦略

山口周        
ダイヤモンド社

リジェネラティブ・リーダーシップ

ローラ・ストーム、      ジャイルズ・ハッチンズ
英治出版

他者と働く

宇田川元一      
NewsPicksパブリッシング

アドバイスしてはいけない

マイケル・バンゲイ・スタニエ
ディスカヴァー・トゥエンティワン