六本木ヒルズライブラリー

デトックス~自分を見つめ直す6冊~

更新日 : 2025年02月21日 (金)





総務省が毎年公開している情報通信白書によれば、現在、日本のデータ流通量は5年前の4倍近く、さらに5年後には8倍ほどに増加するという予測があります。SNSや動画サービスの氾濫で「情報疲れ」が社会問題となっている昨今、変化と加速を続ける現代社会において最も必要とされるのが「心のデトックス」ではないでしょうか。心身をリセットして、今一度自分にとって大切にすべきものを見定める。今月はそのきっかけとなる6冊をご紹介いたします。
 

時間デトックス
無駄をスッキリさせて、人生の質を高める
吉武麻子/日本実業出版社
どんな人にも与えられるが、どんなにお金を積んでも増やすことのできないもの。そう、「時間」は最も平等で、最も限られた資源です。にもかかかわらず、すぐに無駄遣いしてしまうのも、時間の特徴かもしれません。

本書が掲げる「時間デトックス」はそんな無駄を徹底して省くためのヒントを与えてくれます。ポイントは「捨てる、任せる、ゆるめる」の三つ。時には未来の自分に頼ったり、お金に頼ったり。大切なのは、やるべきことに迷う時間を無くし、やりたいことと向き合うことです。……読むべきかどうか、まだ迷っていますか?そんな迷いを捨て去るために、オススメの一冊です。

スマホ・デトックスの時代
「金魚」をすくうデジタル文明論
ブリュノ・パティノ/白水社
アテンション・エコノミーという言葉に聞き覚えのない方も、メールの通知が気になって仕方ない、とか、ちらっとYouTubeを見始めたら2時間経っていた、といった経験には身に覚えがあるのではないでしょうか。

アルゴリズムによって注意力をコントロールされ、デジタル世界に時間や関心を独占されてしまう私たちを、本書の著者は「金魚」にたとえます。そして、人間らしさを取り戻すためには、スマホの画面という鉢の中から飛び出す必要がある、と。そのためには、デジタルメディアが使う技術を理解し、その危険性を把握すること。これこそがデジタルデトックスの第一歩になるのです。

アーユルヴェーダが教える
せかいいち心地よい こころとからだの磨き方
アカリ・リッピー/三笠書房
生野菜をたくさん摂る、朝食にはヨーグルト、運動は毎日2時間……この世に健康法は無数にありますが、どうも効果がない、と感じることも少なくありません。もしかすると、それは「体質」が合っていないのかも。

インド発祥の伝統医学アーユルヴェーダは、人それぞれの体質に合わせ、健康なバランスをとろうという考え方。身体的な問題に限らず、心の健康も重視することで、人生全体の幸福を目指します。そんなアーユルヴェーダの入門として、ぜひ本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。体質診断とそれに応じた具体的なアドバイスが満載。人生を変える一冊になるかもしれません。

消耗せずに成果が出る「情報の捨て方」
山本大平/三笠書房
成長するために、より良い結果を得るために、人は「インプット」に励むもの。しかし、情報が多ければ多いほど、ノイズが増え、迷いが増えます。結局目指すアウトプットは一つ。ならば重視すべきはインプットを整理する、情報の「捨て方」ではないでしょうか。

本書は様々な企業でプロデュースや組織改革に携わってきた戦略コンサルタントの「無駄のない思考法」を大公開。チャットは控える、準備をしすぎない、交流会はやめる……やるべきことは実にシンプルです。誰でも明日から実践できる具体的なヒントが見つかるはず。思考、時間、そして心の余白を取り戻すために、まずは「情報」を手放してみませんか?

超ミニマル・ライフ
四角大輔/ダイヤモンド社
ミニマリスト、と聞くと、とにかくシンプルに、身軽に、「減らす」ことをイメージする方も多いのではないでしょうか。しかし、次世代のミニマリストとして長年実践を続けてきた本書の著者は、「最大化」をキーワードに掲げます。すなわち、浪費を減らし効率化を目指すのは、あくまで幸福を最大化するリソースを増やすためなのです。

身体を軽量化する食事法から、仕事を軽量化するワークスタイルの提案まで、本書はあなたの人生を徹底的に軽く、豊かにするメソッドを一冊に集約。わたしたちが普段どれほどの無駄に囲まれているか、きっと驚かされることでしょう。ミニマリストを志す方、人生を見直したい方にぜひおすすめです。 

日々初心、今がすべて
~この瞬間に心を込めて生きる~
塩沼亮潤/三笠書房
欲や不安を取り払い、心身を健康に保って善行を積む。そんな心のデトックスを何千年も昔から取り組んできたのが、仏教です。現代よりも遥かに老いや病が避けがたく、死が身近にあった時代から、仏教は人々の心に寄り添い、理想のライフスタイルを提示してきました。

本書は数々の厳しい修行を成し遂げた住職による、仏教的デトックスの指南書。とはいえ、オススメされるのは滝行や断食ではなく、ちょっとした日々の思考法です。長い年月をかけて磨かれた「仏の教え」は、現代でもアクチュアルな指針となります。苦しみを無くすのではなく、苦しみ方を変えてみる、そんな柔軟な教えにきっと心が軽くなるはずです。

情報技術の発展により、世界はますます便利に、快適になっているのに、なぜ私たちは不安や悩みに囚われるのか。今回ご紹介した6冊にはそんな疑問への答えが詰まっています。共通する視点は、「心」、「時間」、そして「今」を大切にすべきだということ。それを曇らせる余計なものをデトックスしよう、という考え方です。急速な変化を続ける社会だからこそ、時に立ち止まることを恐れず、自分を見つめ直す必要があるのかもしれません。ぜひ、お手にとってみてはいかがでしょうか。
 

時間デトックス—無駄をスッキリさせて、人生の質を高める

吉武麻子
日本実業出版社

スマホ・デトックスの時代:「金魚」をすくうデジタル文明論

ブリュノ・パティノ
白水社

アーユルヴェーダが教える せかいいち心地よい こころとからだの磨き方

アカリ・リッピー
三笠書房

消耗せずに成果が出る「情報の捨て方」

山本大平
三笠書房

超ミニマル・ライフ

四角大輔
ダイヤモンド社

日々初心、今がすべて ~この瞬間に心を込めて生きる~

塩沼亮潤
三笠書房