オピニオン・記事

一人ひとりが世界を変える方法

マイクロソフトから途上国の子供たちに教育支援をする“天職”に出会うまで

更新日 : 2009年09月29日 (火)

第8章 現地の文化を尊重すること、熱意を持ってやり遂げること

Room to Read CEO、ジョン・ウッド氏

会場からの質問: 貧しい地域に学校ができたとしても、子どもたちが農作業などの重要な担い手なので、通わせたくても通わせられないといったことを聞いたことがあるのですが、そういったことに遭遇したことはありますか?

ジョン・ウッド: 我々の仕事の90%は農村部で、本当に貧困が厳しいところなので、まず、種まきや収穫期に合わせて学校行事のカレンダーをつくります。学校の先生も、農作業をしなければならなかったりするのです。

大事なのは親を関与させることです。学校をつくるときに両親にもかかわってもらいます。というのも親御さんたちが、「それはいいことだ」「教育は大事だ」と考えなければ結局学校もつくれないし、うまくいきません。

しかし本当に英雄的な親は、世界各地にいるものです。朝日が昇る前に起きて、1時間歩いて現場に行ってセメントをピックアップして、高台にある学校の建設地まで運ぶということを毎朝やっているような、そんな親もいました。

やる気のない人に働きかけても無駄だと思うのです。「自分たちのために、これをやりたいんだ」という人たちを私たちは助けたいわけです。

米倉誠一郎: ウッドさんの本の中に「レンタカーをわざわざ洗車する人なんていない」と書いてあったのですが、要するに自分たちでつくった学校だから自分の子どもを行かせたいとか、そういうコミットメントをうまくデザインするということですね。

会場からの質問: 例えばAという地域で必要とされる教育は、それなりの理由と背景があると思うのです。教育プログラムをサポートするときに、その教育内容についてはどのようにかかわるのでしょうか?

ジョン・ウッド: できるだけ現地の著者、あるいは現地のイラストレーターの方に、現地の言葉で、現地の子どもたちのためのオリジナルのコンテンツで、ということを考えています。

今や生徒が本を書いていて、それを出版しようともしていますし、すでにオリジナルのストーリーを300ぐらい出版しています。やはり中身をどれだけ現地の文化に基づいたものにするのかというのは非常に重要です。

Room to Read CEO、ジョン・ウッド氏

会場からの質問: 私は学生です。「ここにいる人たちみんないい教育を受けている、金持ちの人たちだ」ということをおっしゃっていて、僕もそうだと思うのですが、先進国には先進国ならではの教育の問題があると強く思っています。

大学生に根性がないとか、そもそも全然授業に行かないとか。図書館の数はたくさんあるけれども、1年に読む本の数が1人1冊未満だったり、いろいろな問題があると思います。ジョンさんが日本や先進国の教育の問題と思うところはどこか、教えてください。

ジョン・ウッド: その分野は専門家ではないので、知識がないことに答えるべきではないと思います。ただ、問題として言えるとすれば、例えば日本やドバイの親から、携帯電話があったり、ブログがあったり、子どもたちにはいろいろ気が散る要素があるので本を読めなくなってしまう、そういった原因が周りにたくさんあるということをよく聞きます。つまりエンターテインメントの側ばかりで、エデュケーションにならないということです。

会場からの質問: 提携、協力活動、コラボレーションのようなものは、NPO同士で考えていますか。というのも、私にとって募金というのは、同じ目標なのに競争し合っているようなところがあるように思えるのです。

ジョン・ウッド: 熱意が大事だと思います。何に対する熱意かということなのです。世界を変えたいと思うのだったら時間がかかります。例えば、午後ボランティアでちょっとやっただけで世界が変えられるなどというのは、うそです。

これはやはり長期的に考えなければならない、あるいは生涯かけてとか。ですから、そのためには熱心な気持ち、それが一番大事です。特定の目的のために、そういった想いがなければ無理ですし、それは強制するものではないと思います。それは内から出てくるものだと思います。

また、たくさんの奨学金制度や図書館、あるいは学校をつくることができたのは、ほかのNGOとのコラボレーションがあったからこそなんです。いろいろなすばらしい組織との協力関係を持つことができていることを大変感謝をしています。

米倉誠一郎: 僕もアンドリュー・カーネギーの「金持ちのまま死ぬのは醜い」という言葉を学生に教えています。築いた富は、最後は社会に還元すべきですよね。ウッドさんのコンセプトは大金持ちだけにそれを求めるわけではなく、それをコレクティブに多くの人々でやろうじゃないか、ということですね。

あるとき我々も寄付先を決断しなければいけないんです。そのときに「誰が一番情熱をもって事にあたっているか」というのは一目瞭然のような気がします。時勢厳しい折ですが、皆さん、これをよく覚えておいて寄付していただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。(終)

関連書籍

マイクロソフトでは出会えなかった天職—ぼくはこうして社会起業家になった

ウッド,ジョン, 矢羽野 薫【訳】
ランダムハウス講談社


該当講座

特別セミナー
「“一人ひとりが世界を変える”方法がここにある」
Room to Read CEO、ジョン・ウッド氏をお招きして
John Wood (ルーム・トゥ・リード 創設者 兼 共同理事長)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)

『マイクロソフトでは出会えなかった天職(原題:Leaving Microsoft To Change the World)』の著者、ソーシャルアントレプレナーのジョン・ウッド氏による特別セミナーです。 マイクロソフトのエグゼクティブであった氏が、非営利団体ルーム・トゥ・リード(Room to Re....


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