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気になる本たち

好きな本がみつかる、ブックトークより

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2014年10月16日 (木)

第11章 おわりに



何を選ぶか?

 本にかかわる職業で、最近‘ブックディレクター’などと称し、図書館以外の空間で私と同じような仕事をする人が出始めました。『本の声を聴け』(高瀬毅/文藝春秋)に書かれている幅充孝という人物もその一人です。彼は書店員から、本の世界でのキャリアをスタートして、いまでは書店はもとより、病院・美容室・デパート・ブティックなどの本棚を飾る本を選び、それらの施設のデザインもしています。帯解説によると「彼が本を並べると本棚が輝き始める」のだそうです。

 私がライブラリーで行なう(選ぶ・並べる・語る・仕舞う)という作業は、それぞれに異なった種類の判断が必要です。その中で最も厄介なのは、選ぶ本を決めるときです。もちろん「メンバーに読んで貰いたい」を念頭に置くことは第一ですが、一方では、「しっかりと読まれなくとも、手にとってさえ貰えればいい」のも、また「手にとって貰えなくとも、書棚にあればいい」というのもあります。ライブラリーの書棚を輝かせるべく私が選ぶのは、以上の3つの価値基準枠で共通して、〈おもしろい〉本を探し、それを選ぶことにしています。


 ところが、これがとても厄介なのです。なぜならば‘おもしろさ’にはきまりがなく、捉えどころがないからです。まず、何か見たり聞いたりしたことや何かをしていて、可笑しかったり、滑稽だったりする‘おもしろさ’があります。次に、何かを見聞きしたり、実際に何かしていて、楽しく、愉快になれたり、心地よくなったり、癒されたりしながら周りの雰囲気に浸って、趣や風情を愉しむときに感じる‘おもしろさ’もあります。さらに、対象が何であれ、感動し、独特の魅力を感じて興味をそそられて自分で進んで何かしてみたいなどと思ったときに感じる‘おもしろさ’もあり、それぞれすこしずつ意味が違っています。それに「人がおもしろいと感じるのは、何かを見聞きしたり、何かをして、その結果自分に変化が起こり、自分の成長を確信したときである」。こんなことを言った文学者(五木寛之)もいました。

 自分が読む本を選ぶのはなんとかできたとしても、ライブラリーで人様の読む本を選ぶときにはさらに厄介です。‘おもしろさ’は人それぞれで、人それぞれの生活の時々に、人それぞれのライフステージに応じて異なるからです。

 認知科学者の佐伯胖は、‘おもしろい’本が成立することについて、このように述べています(『認知科学の方法』東京大学出版会)。一つは、そのテーマと内容の独創性です。そしてテーマと内容の時代感覚、最後に‘優れた読者’との出会いです。独創性と時代感覚は創作者の能力ですが、どのように創りだされるのでしょうか。この研究者はこう述べています。まず、日常性と結びついたテーマを自らの動機で選択できる能力。第二に、そのテーマに関する過去の事実を徹底的に調べることができる能力。第三に、調べた事実を前後左右、タテヨコナナメから検討し、独自の視点からまとめあげられる能力。第四に、その視点からテーマについて新しい発想をもち、新しい概念形成ができる能力。そして‘優れた読者’との出会いについてこの研究者は、中国の古諺、「人事を尽くして天命を聴(まか)す」のような意味のことを語っています。

 ライブラリーでの選書で ‘おもしろさ’を読みとる能力も、まったく同じことが言えるでしょう。(了)

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