オピニオン・記事

『日本最悪のシナリオ』に学ぶ危機管理とリーダーシップ

“想定外”の危機を乗り越える方法とは?

経営戦略政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2014年03月07日 (金)

第12章 他人を巻き込む際はWhyとWhatを重視せよ

船橋洋一(一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長 慶應義塾大学特別招聘教授)


利己的ではなく利他的な説明を
 
会場からの質問: リーダーシップとは、最終的に自分の利害とは関係のない問題に対して、当事者意識を持てるかどうかだと言われていました。自分についてはできるかもしれません。しかし、周りを巻き込むとなったときに、具体的にどのように働きかければ、当事者意識を持ってもらえるのでしょうか?

塩崎彰久: 「こうしたことが行いたい」というストーリーを語るときは、5W1Hを基本として説明します。その際、私たちはどうしても、相手とビジョンを共有するために、Howを説明するテクニックにおぼれやすいのです。しかし、本当はHowよりも、WhyとWhatを突き詰めていくことが、人を動かす上では非常に重要なポイントとなります。なぜ、変化を起こしたいのか。なぜ、その変化が相手の人にとって大切になるのか。それを、自分の体験の中から実感を持って説明するのです。

もう1つ、他者に協力を求めるときは、目的を表すWhyの内容を、「私がこうしたい」という利己的な説明ではなく、利他的な説明に変える。こうすると、非常に効果が高くなると言われています。Whyの内容を、公的、社会的なところまで昇華することができれば、それだけ人を巻き込みやすくなるのです。

会場からの質問: 男女雇用機会均等法が制定されて30年近く経ちますが、男女の賃金格差は解消されていません。女性の場合、ライフイベントごとに賃金が下がり、労働条件が悪くなるといった問題がありました。一方で、保育士や看護師など、従来は女性に特化されていた職業に、均等法の名の下、男性が入ってきています。しかし、女性と同じ低い賃金で男性も雇われています。そのために、男性も家庭を持つこと、子どもを持つことが不安だ、といった状況に陥っています。どのような社会的バックアップがあれば、男女の賃金格差は埋まっていくのでしょうか?

荻原国啓: 賃金に関する画一的なロールモデルを変えていくためには、やはり企業に対するインセンティブとペナルティが必要になります。近年は政府も、企業に対してワーク・ライフ・バランスへの取り組みや、共働きを支える体制作りを促しています。また、東京都では、子育てや共働きをバックアップする企業の認証制度を設けています。しかし、こうしたものにはインセンティブもペナルティもありません。

本来は、政府がもっと踏み込んで取り組むべき課題であり、税制優遇などのインセンティブ、労働基準法違反といったペナルティの両方が必要だと思います。こうしたバックアップがあって、はじめて賃金格差は改善されていくように思います。

船橋洋一: 皆さん、ありがとうございました。本日の講演が、未来への希望を見いだす方法を真剣に考えるきっかけとなれば幸いです。(了)

<気づきポイント>


●日頃から最悪のシナリオまで含めた対策を講じておくことで「想定外」の数は減らせる。
●自らの利害と離れた問題に対して、変化を起こすために発揮するのが本当のリーダーシップ。
●他者に協力を求めるときは、目的を表すWhyの内容を利他的な説明にすると効果的。

関連書籍

『日本最悪のシナリオ 9つの死角』

日本再建イニシアティブ
新潮社


該当講座

“日本最悪のシナリオ”に学ぶ「危機管理」と「リーダーシップ」
竹内幹 (一橋大学大学院経済学研究科 准教授)
塩崎彰久 (パートナー弁護士 長島・大野・常松法律事務所)
荻原国啓 (ピースマインド・イープ株式会社 代表取締役社長)
船橋洋一 (一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長 慶應義塾大学特別招聘教授)

船橋洋一(一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長)他
一つの危機はどのような経緯で最悪な状況を迎えるのか、何がトリガーになり、負の連鎖の生み出すのか、危機悪化の原因とは何なのか、最悪シナリオの例より検証します。最悪の状況を考えることにより、リスクを認知し、最悪から逆算することで、今すべきこと、将来に向け備える必要があることを明確にしていきます。後半は、「危機の本質を理解するためのアジェンダ設定力」「リーダーシップ・組織のあり方」など議論を深めます。


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