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井上慎一CEOが語る日本初・本格的LCC「ピーチ」の戦略

アジアの空を、もっと近く、面白く

日本元気塾経営戦略キャリア・人
更新日 : 2013年11月08日 (金)

第10章 アジアの流動をつかみ取る!

写真左:米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授) 写真右:井上慎一 (Peach Aviation 株式会社 代表取締役CEO)
写真左:米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授) 写真右:井上慎一 (Peach Aviation 株式会社 代表取締役CEO)

 
LCCで日本とアジアをつなぐ

米倉誠一郎: ライアンエアーのマーフィー氏は、とにかくコストマネジメント、ホスピタリティだと強調した。どちらも日本人の強みとするところです。日本は優れたコスト管理技術を数多く生み出してきました。多くの日本人がそれを忘れているなかで、ピーチではそれがコアになっている。一方、海外の企業がホスピタリティを重視している点が少し意外でした。

井上慎一: どれほど素晴らしいサービスがあっても、飛行機は飛ばなければ、顧客価値はありません。彼らはそれを大切にしています。LCCの代表格であるライアンエアーと大手航空会社3社を、年間の定時出発率、手荷物事故発生率(1000個あたりの紛失・破損率)、就航率(予定発着便数に対する実際の発着便数)で比較した調査結果があります。いずれの結果も、ライアンエアーが上回っていました。決して、安かろう、悪かろうではない。こうした理由から、搭乗旅客数でライアンエアーは世界でもトップクラスの成績を残しています。

米倉誠一郎: なるほど。いま、ピーチの就航路線は4時間圏内。拠点が広がれば、さらにアジアに広がっていくと?

井上慎一: 我々の目標は、アジアのリージョナルエアライン(地域航空会社)になることです。当初から短距離路線だけを考慮し、欧米といった長距離線は考えていません。現在、沖縄の那覇空港を関空に次ぐ第2のハブ空港とすべく進めています。沖縄に拠点ができれば、そこからまた4時間圏内に飛べるようになります。アジアにおけるキャッチメントエリアが広がる。実はこれがLCCの基本的なビジネスモデルなのです。

米倉誠一郎: 沖縄から4時間となると、どのあたりまででしょうか?

井上慎一: ベトナムやフィリピンなどです。

米倉誠一郎: そうなれば、乗り継ぎも可能になる。例えば、アジアの人が沖縄に来て、首里城などを楽しんだ後、関西に飛び、そこからさらに、仙台や北海道に行くことも考えられる。それでも旅費はLCC価格だと。まさに気軽に活用できる“空飛ぶ電車”ですね。

こうした新しい発想を持った企業が日本にも現われ、アジアの流動をつかみ取っていく。僕は最近、バングラデシュによく行きますが、彼の地の物価水準は日本の数十分の一です。LCCの価格設定は、日本人が喜ぶだけでなく、いわゆるBOPの人たちにとっても非常に嬉しいはずです。その意味でも、LCCは日本とアジアを結びつける大きなカギになる。

井上慎一: 米倉先生に最初にお会いした際に教わった掟をいまも大切にしています。「いきなり大きなイノベーションは起こせない。小さなイノベーションの積み重ねが、やがて大きなイノベーションにつながる」です。日頃から色々なことに興味や関心を持ち、自分にルールや限界を設定せず、何事もチャレンジしてみる。これを続けることにより、新たな発見があり、道は開けていく。私はいま、そのことを実感しています。

米倉誠一郎: ありがとうございます。ピーチ・アビエーションが大きな志を持ち、イノベーションに取り組んでいることがよくわかりました。

「日本元気塾」も、大きな志のもと、立ち上げて4年になりました。実はいま、ある程度の高度に達して、同じ場所をグルグルと旋回している時期かもしれません。そこから抜け出し、継続的にイノベーションを起こしていかなければならない。自己否定を続けなければ、アジアや世界の潮流の中で戦うことは難しい。今日は僕自身も勉強になりました。皆さんもイノベーションを起こすために、今日からすべてを一人称で語りましょう!(了)

<気づきポイント>

●ビジネスを発想するコツは、インフォメーションではなく、インテリジェンスを集めること。
●すべてを一人称で語ることで、物事の本質が見えてくる。
●大きなイノベーションは、小さなイノベーションの積み重ねである。

該当講座

アジアの空を、もっと近く、面白く

~日本初・本格的LCC Peach の戦略~

アジアの空を、もっと近く、面白く
井上慎一 (Peach Aviation 株式会社 代表取締役CEO)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)

井上慎一(Peach Aviation㈱代表取締役CEO)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
日本初の本格的LCC(Low Cost Carrier)として、2012年3月就航したピーチ。これまでの航空業界と異なるやり方で、安定的な低コストを実現させ、かつ可愛らしく、気軽に利用できるブランドイメージで、順調に顧客を広げています。人々のライフスタイルを変えるイノベーションの本質と、今後のアジアでの事業展開・戦略に迫ります。


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