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美術館館長と経済学者が熱く語る「アートの新たな可能性」

南條史生×竹中平蔵 in 六本木アートカレッジ

更新日 : 2012年04月27日 (金)

第7章 アートを発展させる力と抑える力

南條史生(左)竹中平蔵氏(右)

竹中平蔵: 経済学の観点から2点申し上げると、日本ではアートを発展させる力と、抑える力が両方働いています。発展させる要因はおそらく2つで、1つは技術の発展とともに自由な時間を得られたことです。アートはつくるのも楽しむのもタイムコンシューミングですから、自由時間が増えたからこそ、そういうことをできるようになったというのが1つ。

もう1つは、これも技術の発展のおかげですが、表現手段が増えたことです。例えば携帯電話の待ち受け画面も、今は自分で好きな画像をつくれますよね。アーティスティックなものも簡単につくれるので、アートと日常生活の区分がなくなってボーダレスになってきています。これは南條さんがおっしゃった通りです。

一方、抑える要因は所得です。これまで食文化も含めて日本でいろいろなアートが出てきたのは、やはりお金があったからです。目の肥えた旦那衆がお金を使っていろいろなものを改良したり、日本全体の所得水準が高くなってみんなの舌が肥えたりしてきたのです。

しかし今、日本では所得が伸びないどころか、場合によってはマイナスになっています。今まで、所得が1%増えたらアートに対する支出は2%増えていました。ということは、所得が1%減ったらアートに対する支出は2%減ることになります。先ほどご紹介したように、実際、地方自治体の中にはアートに対する支出を大幅に減らしているところもあります。経済が強くないと、長期的には社会におけるアートの発信力は弱くなるわけです。

最後になりますが、アートというのはアーティストの役割が重要です。でも同時に、受け手の役割もすごく重要です。「猫に小判、馬の耳に念仏」という言葉がありますが、受け手に文化的な蓄積があるかないかで、アートに対する評価が決まります。だからこそ、こうした議論に積極的に参加される皆さんのような素晴らしい受け手がいらっしゃるということは、日本にとって心強いことだと思います。きょうはありがとうございました。(終)

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  六本木アートカレッジ「アートの新たな可能性」

今求められているのは、経済的な豊かさ以上に心の豊かさ。それは個人レベルだけではなく国家レベルでも同じではないでしょうか。だからこそ、ソフトパワー(文化や政治的価値観、政策の魅力など)が注目されています。
その中心的役割を担うのがアート。社会、政治、経済と密接な関係にあるアートが、未来の社会でどのような可能性を持つのでしょうか。森美術館の南條館長とアカデミーヒルズの竹中理事長に対談していただき、アートがいかに社会と深く関わっているか、そして、ソフト・パワーがいかに国策として
重要になっていくかの議論を通じて、アートと社会の関係性について考えてみたいと思います。

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