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「ガッツリ」にがっくり~すてきな日本語!?~

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カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2011年08月11日 (木)

第9章 素晴らしきかな、日本語(2)

六本木ライブラリー ブックトーク 紹介書籍

澁川雅俊: 「言葉は、脳みその働きを決める」という言説を如実に表すように、人工知能の開発にかかわるコトバと脳の関係を詳細に研究している人物が『日本語はなぜ美しいのか』(黒川伊保子)を書いています。この本は標題の示すように日本語を誇りとしているわけですが、著者は<発音感性>、すなわちコトバの音、あるいは響きによってものごとを体感することの重要性に着目しています。そのうえで彼女は、日本語は母音を中心とする音声、あるいは音響を通じて、心地よくものごとを認識するという特殊性をもっているという日本語論を展開しています。

その点で、世界でももっとも美しいコトバである日本語を捨ててまで、いま流行りの早期英語教育をすることには問題があると説いています。そういう不自然な言語教育は幼児期における情緒形成を阻害すると警告しています。

私たちはイメージで考えることもありますが、大概はコトバで何ごとかを考えます。ですからコトバと脳が密接にかかわっているわけですが、ここに脳科学者と俳人がコトバを通じて、日本文化とは、日本とは、を考察している本があります。『言葉で世界を変えよう』(茂木健一郎、黛まどか)は、副題で示されているように「万葉集から現代俳句へ」の情感を表す詩歌の流れを通じて日本語と日本人を追求しています。そして<五・七・五>調は、喜怒哀楽の真髄を表現したいときに、自然にわき起こってくるリズムで、脳に最も心地よく響く、と結んでいます。

歩いているときも電車の中でも両耳にイヤホンを付け、横文字混じりのポップスやロックを聴いている若者たち、たまたま彼らも<コトバで世界を変えよう>としているわけですが、そういう若者たちが<五・七・五>調にそう感じるかどうか、私にはわかりません。しかし三十一文字や十七文字で、大げさにいえば世界を切り取る、表現するという技はメールやツイッターなどで自らを発信している若者たちの言語生活、とりわけ書き言葉、ここでも大げさな表現をするならばエクリチュールと同期するといってもいいでしょう。なおエクリチュールとは、話しコトバ(パロール)に対して、<書かれたもの、書法、書く行為>に注目した際に使われる用語です。

そのエクリチュールに関連して、かつて習字とかペンマンシップとか、美しく端正な字で書くことが日本語に長ずる技法の一つとして重視されていました。それがいまでは、一般には年賀状の宛名書きや、たまに思い立って出す手書きの手紙などのような希な行いになってしまっています。そんなことが無意識に「書」とか「書道」とかカリグラフィーをコトバとは違う領域、つまりデザインやグラフィック・アートなど別のものに仕分けてしまったようです。

しかしメールやツイッターをはじめとし、ブログや電子書籍などのメディア、つまり自己を表現する表現媒体の進化を考えると、そのことを軽視できません。そんなことを考えているときに、つい先だって出版された本を見つけました。『活字とアルファベット-技術から見た日本語表記の姿』(家辺勝文)がそれです。この本は、どちらかというと専門書ですが、印刷技術史、とりわけタイポグラフィの歴史を踏まえて、デジタル技術による日本語表記の問題を詳しく検討しています。(終)

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