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「ガッツリ」にがっくり~すてきな日本語!?~

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カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2011年08月04日 (木)

第5章 でもやっぱりむずかしい敬語、丁寧語

六本木ライブラリー ブックトーク 紹介書籍

澁川雅俊: 適正な日本語のコツについて考察している本は、どれもが敬語の使い方について何らかのことを示唆しています。『鵜の目鷹の目烏の目』の著者、川本信幹が書いた『みがこう、あなたの日本語力』は本来、私たちの日本語力を検定するためのドリルですが、「<敬語>をみがいて豊かな人間関係を」築くことが重要であると指摘しています。

そしてそれに続き、コトバとコトバ遣いについて以下のような要点を示しています。「<文法>は日本語運用の隠し味」「<語彙>は豊かなほうがよいか」「<表記>軽視すると恥をかきます」「<言葉の意味>運用の幅広げる語意の理解」、そして最後に「<漢字>漢字力に見える、あなたの教養度」——それらはすべてうなずけますよね。

ところでこの本には、日本語の適正な使い方を90日間で訓練する練習問題がたくさん掲載されているのですが、検定のための準備動作として「あなたの言語環境を点検してみましょう」という、ちょっとしたチェックリストがあります。例えばこんなことです。「(1)新聞も取っていない。(2)近所に書店がない。(3)近所に気軽に利用できる図書館がない。(4)話し相手があっても、いつも同じ話題ばかりである。(5)手紙のやり取りをしない。(6)家に国語辞典がない。」どうですかあなたは? それらの多くにチェックが付いたら、訓練をしたほうがいいとこの著者は提言しています。

確かに敬語をきちんと使うことはなかなか難しい。『バカ丁寧化する日本語』(野口恵子)で、著者は日々接する若者たちのそれを中心とした<おかしな日本語>傾向、とりわけ先の「お疲れさまです」ではありませんが、マニュアルどおりのコトバの応対に着目し、それが日本人のコミュニケーションのあり方に大きな影響をもたらすと指摘しています。

『敬語で解く日本の平等・不平等』(浅田秀子)では、敬語を正しく使うのかがなぜ難しいのか、その根底にある問題が追求されています。「目から鱗」の感がありますので、かいつまんで紹介しましょう。欧米やかつての中国では身分の上・下間での交流はなかったので、敬語の言い回しが広く作り出されることはなかった。一方日本では有史以来幕末に至るまで両者にかなり密接な交流があり、その繋がりのうえで両者をつなぐコトバとして敬語が成立した。

つまり敬語にはコトバの問題を超える日本の社会文化的な背景があると主張しているのですが、基本的には身分の上・下がなくなったいま、それは単なる丁寧語となり、今後どうなるか不明なところがあります。なかなか難しい問題ですね。

つい先だって出された『敬語再入門』(菊地康人)という本は、敬語の発達を概観し、現代社会で豊かな言語活動と円滑な人間関係の構築するのに不可欠な、敬語、あるいは丁寧語を適切に使いこなすコツを解説しています。国語学者の書いたしっかりとした内容の本ですが、文庫本で、手軽に読むことができます。

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