オピニオン・記事

ホームレスから企業の上場を果たした男

「ありがとう」を生み出すQ&Aサイト「OKWave」ができるまで

更新日 : 2010年03月09日 (火)

第6章 Q&Aサイトをつくると決めてから~企画・営業・資金工面~

米倉誠一郎氏(左)兼元謙任氏(右)

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兼元謙任: 「あんなに頑張ってきたのに、何もなくなった」と思ったら、本当にやる気がなくなって。秋葉原からトボトボ歩いて、工事現場で力尽きて、そこに寝たんです。翌朝早く、工事の人がたくさん来て、「お前、どこの現場?」って聞くんですよ。僕はそのとき、急いで東京に出てきたから、スキーウェアにボストンバックという格好だったんです。

米倉誠一郎: そのままじゃないですか。それで、間違われてしまった。

兼元謙任: 連れて行かれたのがコンビニの裏でした。そこで3つ暖かいお弁当をくれたんです。「お金は?」と聞いたら、「いいんだ、売れ残ったやつだから」と。それを食べたら泣けてきて。でも、「楽ちん」とも思ったんです(笑)。それからいろいろご指南いただいて。

米倉誠一郎: ホームレスピープルの新人として丁重に扱われて、「まあコミュニティに入れよ」ということで、入ってしまったということですか?

兼元謙任: はい(笑)。本当に13年間は、よく生きていたなというぐらい張り詰めてやっていましたから。

米倉誠一郎: ホームレスとして、どれぐらい漂流したのですか?

兼元謙任: 2、3カ月だったと思います。

米倉誠一郎: そこで、先ほどの中国の人に会い、ボロクソに言われて、「これじゃあ、いかん」と思って、例の社長さんのところにもう1回行ったのですか?

兼元謙任: そうです。仕事を下さいとお願いしたんですが、何度も断られました。それでも秘書の方に追い縋って、何とか時間をつくってもらいました。それでやっとのことでもらった仕事が、名刺のデザイン1枚、1,000円です。ものすごくうれしかった。

米倉誠一郎: 「質問したら、答えてくれる」Q&Aサイトをつくるぞと思ってからは、どうされたのですか?

兼元謙任: 企画書を書きました。そして知り合いの社長さんに、「この企画を通してくれたら、何でもします。死ぬ気で働きます」とお願いしました。すると「掲示板とかメールがあるから、Q&Aというのがあえて今必要な理由がわからない。それに儲かる気がしない」と言われました。

それでもしつこくお願いしたら、「お前が身銭を切ってやるんだったら、やる」と言われたんですが、お金がありませんでした。実は、稼いだお金のほとんどを妻にずっと送っていたんです。

米倉誠一郎: ホームレスだったときも、働いていたということですか?

兼元謙任: そうです。ホームレスには3種類ございまして。働きたくても働けない人、働けるけれど働かない人、働きながらやっている人。

米倉誠一郎: 2年間、ホームレスだった間も仕事をして、仕送りしていたんですか?

兼元謙任: ええ。風邪をひいたり、怪我をしたりしたら保険証がないので大変です。みんなそうですが、命がけでした。

有限会社を立ち上げるのに400万必要だったのですが、ある人から「カード会社20社から、20万ずつ借りたら400万になる」と言われて、「お金の集め方はいくらでもあるんだな」と思いました。やりたいこともできて、自己反省もできたので、妻に電話して、「こういうことをやりたくて会社をつくる。お金はカードで借りようと思っている。もう1回やり直してくれないか」と話しました。

そしたら、仕送りしていたお金を全部貯金通帳に残していてくれたんです。それが416万円あって、「これ使ってください」と。「ラッキー」みたいな(笑)。だってローンで借りたら「どれぐらい利息がつくんだろう?」とか計算していたので、もう、うれしくて。

もう1回、一緒にやり直そうと、東京にテラスハウスを家賃8万ぐらいで借りました。そしてそこの一室に、Q&Aをやる会社をつくるためにネットに接続して、サーバーもつくって、立ち上げていきました。

米倉誠一郎: 前段のお話の中で、気になったことがあります。「世界に出て行くとき、人によっては知識を商品化できるのではないか」ということですが、僕が『OKWave』で一番感動したのは、いわゆる“義賊”モデルなんです。鼠小僧次郎吉のように、金のあるところから金をとって、困っている人を助ける。知識を持っている人から知識をもらって、無料で困っている人を助ける。こうしたコミュニティのノウハウを企業にちゃんと売りに行けるという、2つのモデルが共存していることが素晴らしいと思ったんです。

だから、『OKWave』がそれを売るというのには、ちょっと違和感を覚えたのですが。

兼元謙任: P&Gの話をさせてください。P&Gには約7,500人の研究者がいたのですが、経営危機に直面したとき、「コネクト&ディベロップ」という戦略をとって各部署の壁を取っ払い、さらに社外ともつながって、世界中にいる150万人の研究者の知識を活用するという方向転換をして復活したのです。

これと同じように、我々が知識を持っている方を企業に仲介するというのは、まっとうなことだと思っているのです。

米倉誠一郎: 多様な知識を1社が独占するのではなく、クラウドソーシングみたいに広いところで緩やかにつなぎながら、その中で貢献した人にフィーを支払うということですか?

兼元謙任: はい。

米倉誠一郎: なるほど。今の話でだいぶクリアになりました。善意から出た知識でお金をとるというのには、僕は抵抗があるのですが、『OKWave』のこれまでのあり方には、日本から出た可能性のあるIT企業に久々に会ったような気がします。きょうはどうもありがとうございました。(終)

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兼元謙任 (株式会社オウケイウェイヴ 代表取締役社長)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)

兼元謙任(株式会社オウケイウェイヴ代表取締役社長)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
日本最大級のQ&Aサイト「OKWave」のノウハウを生かしたビジネスモデルと、2年間のホームレス生活を経て企業の上場を果たした兼元氏のライフトーリーに迫ります。


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