2013年04月09日 (火)  19:00～20：30

これまで“病気を治す”といえば、病気の症状ひとつひとつに標的を絞り、それを個別に治していくというものでした。これは、生理現象や疾患を細かく分けて理解するという生命科学の発展の歴史を背景としています。

しかし、この方法論では、現代に生きる私たちが抱える複雑系疾患群に対応することができません。ひとりの個人が多彩な病気の症状を呈する複雑系疾患群は、例えばメタボリックシンドローム・生活習慣病を見ても、肥満から糖尿病、動脈硬化、肝臓病、さらに自己免疫疾患や不妊など、多様な症状に進展することが知られています。他にも癌や腎臓病、精神疾患など、さまざまな病気で患者数が増加していますが、この様な状況では、個々の症状に対して治療を行っても、最終的に全身を健康な状態にするのは困難です。場合によっては、ひとつの病気に施した治療が他の病気を引き起こしたり、より悪化させてしまう可能性も否定できません。

本セミナー講師の宮崎徹氏は、このような現代の複雑系疾患群に対して、一見無関係に見えるさまざまな疾患の底流に、それらを結びつける共通したメカニズムとそれを制御する分子－東洋医学でいうツボの様なもの－が存在するのではないか、そしてそれを見出し適切にコントロールすることによって、多彩な病気を統一的に制御して、身体を健全な状態に保つことが出来るのではないか、と考え研究を行っています。

宮崎氏らはそのようなツボの一つとして、血中に高い濃度で存在するAIM（Apoptosis Inhibitor of Macrophage）というタンパク質を発見しました。
AIMは顕著な抗肥満効果を示す一方で、糖尿病や動脈硬化などのさまざまな生活習慣病の疾患連鎖を引き起こすことも明らかとなってきました。それらに加えて、肥満に伴う自己免疫疾患や肝臓病の発症・悪化に決定的に関連することも見出しました。

このようにAIMは、現代社会で増加するさまざまな疾患群の病態を統一的に制御する、現代病のツボとなる分子である可能性が高いのです。これらの知見を紹介すると共に、AIMによる、生活習慣病だけにとどまらないさまざまな現代病に対する新規治療法開発の可能性をお話しいただきます。

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