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活動レポート
石倉洋子教授の著書『タルピオット』はGASセミナーから生まれた!
~なぜイスラエルでは多くのイノベーションが生まれるのか?~
活動レポートグローバル政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2020年05月01日
(金)
セミナー開催日:2018年11月13日
セミナータイトル:グローバル・アジェンダ・シリーズ2018
なぜイスラエルでは多くのイノベーションが生まれるのか?
~イスラエル国防軍発、知能集団養成プログラムに迫る!~
登壇者:トメル・シュスマン(タルピオット・プログラム元チーフインストラクター兼副司令官)
石倉洋子(一橋大学名誉教授)
文:清水
アカデミーヒルズが2018年11月に開催したセミナーがベースとなった、石倉洋子氏の近著『タルピオット ~イスラエル式エリート養成プログラム~』。当時のセミナーの様子を振返りながら、本書をご紹介します。
最近出版された石倉洋子氏の著書『タルピオット~イスラエル式エリート養成プログラム~』は、書籍にも書かれている通り、2018年11月に開催したGlobal Agenda Seminar(GAS)のオープンセミナー「なぜイスラエルでは多くのイノベーションが生まれるのか?~イスラエル国防軍発、知能集団養成プログラムに迫る!~」がベースとなっています。
中東のシリコンバレーと呼ばれ、数々のハイテク・スタートアップ企業を輩出するイスラエル。その成り立ち、文化とともに、注目されるのが人材育成への力の入れようです。とりわけ、セミナーで注目したのが、イスラエル国防軍で毎年50人しか選ばれないエリートプログラムである「タルピオット」でした。
セミナーでゲストとしてお越しくださったのが、今回の書籍の監修をされたトメル・シュスマン氏です。彼自身が「タルピオット」の卒業生であり、チーフ・インストラクターとして訓練生の指導にもあたっていた経験から、その選考プロセス、プログラムの構成や内容についてお話くださいました。シュスマン氏が卒業生仲間とヘルスケアのテクノロジー分野で起業していることからも、ここでの学びがスタートアップに活かされることが説得力を持って展開されました。
セミナーで語られた「タルピオット」プログラムの詳細は、毎年1万人の候補者から50名まで絞られる選考方法に始まり、軍隊を人材育成のプラットフォームとして使うという3年間に渡るプログラムの内容、卒業後の進路まで、そのアプローチのユニークさもさることながら、イスラエルの人材育成に向けた強固な意志を感じさせるものであり、その迫力に会場にいた参加者は圧倒されるばかりでした。
そして、このプログラムが、スタートアップネイションとしてのイスラエルの強さの源泉の1つであり、「ここに日本企業が求めるイノベーションを生み出すヒントが隠されている」と石倉氏が確信したことから、本書が書かれることになったのです。セミナーで語られた「タルピオット」プログラムの詳細は、毎年1万人の候補者から50名まで絞られる選考方法に始まり、軍隊を人材育成のプラットフォームとして使うという3年間に渡るプログラムの内容、卒業後の進路まで、そのアプローチのユニークさもさることながら、イスラエルの人材育成に向けた強固な意志を感じさせるものであり、その迫力に会場にいた参加者は圧倒されるばかりでした。
書籍では、イスラエルの成り立ち、紛争の歴史、天然資源に乏しい環境、文化的背景を丹念に追い、イスラエル現地での起業家を中心に、多くの関係者へのインタビューがなされ、豊富なデータとともに展開されています。
なぜ起業がリスクではなく、チャンスと捉えられるのか。なぜ、失敗が許容される文化があるのか。なぜ、ユダヤ人は既存の枠組みや前提条件を疑うことから始めて新しいアイデアを生み出せるのか。
イスラエルの建国の背景、ユダヤ人として迫害や差別を長年に渡って受けてきた負の経験が、こうした文化・価値観を形成していることも本書で指摘されています。
特に、ユダヤ人が世界各地で迫害や差別を受けてきた経験、昨日まで親しくしていた隣人が手のひらを反すように差別する側に回ることを目の当たりにしてきた経験が、「絶対的に信頼できる存在は無い」という文化を醸成したのではないか、という指摘には心が痛みます。しかし同時に、「負の経験を乗り越える逞しさ」を感じさせるところでもあり、対比として日本人が平和で危機感をなくしてしまっているのではないか、という懸念も沸いてきます。
セミナーが焦点を当てたタルピオットの詳細は本書の中心となるものの、その視点はその先のイスラエルと日本の協働に向かっており、特に書籍の後半では日本企業とイスラエルのスタートアップとの協働について具体的なアドバイスが書かれています。
その後に、世界から周回遅れの日本イスラエルとの協働を通じて、具体的にイスラエルの人材育成やスタートアップ推進政策から何を学ぶことができるのかという視点が続きます。
2010年に石倉氏とアカデミーヒルズがGASを開講したときに石倉氏の原動力となった「日本が世界から取り残されている」という危機感が、本書でも石倉氏のモチベーションとなっていることが随所で伺うことができ、まさに、本書はGASが抱えてきた危機感とも連動していると言えるのです。
この書籍はあらゆる媒体で書評として取り上げられていますが、そのうちの1つに、GAS2012の卒業生である小林武史さんが書かれた書評もあります。イスラエル礼賛だけではない視点が展開されているクリティカルな書評として、他の書評とは一線を画しています。
自宅で読書をされている方も多いこの時期に、ぜひ手に取って頂きたい一冊です。
タルピオットに学ぶイノベーションの生み出し方 - イスラエル国防軍による最強のエリート教育
石倉 洋子 : Naama Rubenchik日本経済新聞出版社
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