六本木ヒルズライブラリー

Beethoven2020
ベートーヴェン生誕250周年記念
〈エントランス・ショーケース展示〉

更新日 : 2020年09月11日 (金)




今回のエントランス・ショーケース展示は「Beethoven 2020」と題して、今なお時代や国を超えて愛される偉大な作曲家・ベートーヴェンの生誕250周年を記念した展示です。
 
音楽の歴史を変えたと言われるほど、革新的な作品の数々を生み出したベートーヴェン。展示ではその生涯や人間性、作品の制作過程に加え、日本で広まった歴史も辿ることで、新たなベートーヴェンの姿に迫ります。

 
【展示紹介動画】
曲目:ベートーヴェン ピアノソナタ 第8番<悲愴> 第2楽章
ピアノ:森 泰子
Beethoven Piano Sonata no.8 Pathetique


 
▼名曲が完成するまで

ベートーヴェンは作曲のための下書きを大切に保管していました。悪筆で名高い彼の筆跡を読み解けば、名曲の着想の原点や完成までの道筋を見て取ることができます。
 
「エロイカ・スケッチ帳」と呼ばれる182ページからなるスケッチ帳。1802年の冬から1804年前半に使用されたもので、主に《交響曲第3番「英雄」》や《ヴァルトシュタイン・ソナタ》、そして《交響曲第5番(運命)》 Op. 67 などへのアイディアが書き込まれています。(『《交響曲第5番(運命)》 Op. 67 スケッチ』)
 




▼楽譜の出版事情

教会や宮廷に雇われていなかったベートーヴェンにとって、楽譜の売り上げは重要な収入源でした。掛け算が苦手で、お金の計算に苦労したという逸話もありますが、出版社とは熱心に交渉をしました。
 
たとえば創業1719年の老舗楽譜出版社であるライプツィヒのブライトコプフ&ヘルテル社。この出版社はベートーヴェンと関わりが深く、《交響曲第5番》、《交響曲6番「田園」》、劇付随音楽《エグモント》など20曲以上の初版を出版しました。
 
 




▼ベートーヴェンとピアノ

ベートーヴェンが生きた時代、ピアノは誕生してまだ100年ほどの「新しい」楽器でした。音域やペダルなど、日々進化する楽器に合わせ、ベートーヴェンも新たな性能を活用した曲を次々に作り出しました。
 
1803年、パリのエラール社からベートーヴェンに贈られた新しいピアノは、足ペダルに加え、高音域の鍵盤を備えていました。好奇心旺盛なベートーヴェンは、さっそくその新しい仕様を存分に生かした力強い作品を作曲しました。
 
 




▼日本でのベートーヴェン
 
明治中期以降、ドイツ文化が積極的に取り入れられる過程で、ベートーヴェンの音楽は次第に日本人にも知られるようになります。今では《交響曲第9番》、「第九」が年末の風物詩として愛されるほどになりました。
 
現在では日本の漫画にも取り上げられるようになったベートーヴェン。『のだめカンタービレ』のヒットは、クラシック音楽やベートーヴェンの《交響曲第7番》に注目が集まるきっかけとなりました。
 
 





ベートーヴェンといえば、耳が聞こえないにもかかわらず作曲を続けたことで知られていますが、その魅力は苦悩に打ち勝つ音楽家というイメージだけにとどまりません。

今回の展示では、音楽への底知れぬ好奇心や生涯独身の裏に隠された恋愛エピソードの数々など、今まで知られていなかったベートーヴェンの新たな側面がきっと見つかるはずです。
 

 
企画・監修:越懸澤 麻衣(音楽学)
協力:公益財団法人サントリー芸術財団 サントリーホール

 


※エントランス・ショーケースはアカデミーヒルズ会場ご利用者とライブラリーメンバーのみご覧いただけます。