六本木ヒルズライブラリー
ビジネス書で振り返る「平成」
更新日 : 2019年05月14日
(火)
〔平成元年~平成10年〕
平成は激動する世界情勢の中で始まりました。
ベルリンの壁崩壊から、湾岸戦争、ソ連の崩壊、そして北朝鮮のミサイル発射へと、目まぐるしく国外の様相は変化します。
一方、国内でも消費税制度の始まりと軌を一にする景気の悪化、オウムサリン事件や阪神淡路大震災など日本の行く末に影を落とす出来事が重なり、世間全体に内憂外患の雰囲気が醸成されてゆきました。
そんな中で注目された書籍は、不透明な世界の展望を示すものに限らず、個々人が能力や資産を伸ばして生きていくための自己啓発やスキルアップといったジャンルです。一般に普及し始めたパソコンのハウツー本など、IT技術も積極的に利用しようとする人々のたくましさが感じられます。

〔平成11年~平成20年〕
平成十年代を終始支配していたのは、やはり日本経済の不況感でしょう。
ゼロ金利政策が始まっても一向に景気回復の兆しは見えず、追い討ちをかけるようにサブプライムローン問題が発生します。ビジネス書において注目されるのも、株、起業、キャリアの守り方といったジャンルのものでした。
しかし、その一方で人生訓となるようなビジネス書の人気も高まりました。終わりの見えない不景気を、精神的な面から乗り越えようとする意識の現われだったのかもしれません。


〔平成21年~平成30年〕
平成の終わりは、東日本大震災によって始まりました。
もはや経済成長期の日本を取り戻すことができない、そんな諦念が広がる中で、世界や社会全体を意識したビジネス書はほとんど見かけられなくなりました。
求められたのは、対人関係や生き方を指南する自己啓発本です。SNSの広まりや、社会の多様性が尊重されるようになった日本社会で、一人ひとりがどのように気持ちよく生きるのか。お金とは異なる視点から「幸せ」を求めようとする日本社会は、長きに渡って平成に付きまとった不況感の裏返しかもしれません。

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