六本木ヒルズライブラリー

【ライブラリーイベント】 開催レポート
慶應SFCのスタートアップシリーズ2016②
「IT」は、これからの時代を「生きる力」-ライフイズテック株式会社-

ライブラリーイベント

日時:2017年3月16日(木)19:15~20:45@カンファレンスルーム7
 



慶應SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)卒業の起業家・創業者をお招きしてお話を伺うシリーズ。2016年度第2回は、「IT」を英語と同じように、これからの時代を「生きる力」であると考え、「IT」を好きになり活用する事で、中学生・高校生たちの可能性を広げることを目指して中高生向けのIT・プログラミングキャンプを実施しているライフイズテック株式会社代表取締役の水野雄介さんにお越しいただき、応援団をあつめる」というテーマでお話を伺いました。ファシリテーターは2015年に続き、SFCインキュベーションマネージャーの廣川克也さんです。

水野さんは、慶應義塾大学理工学部、同大学院を卒業後、IT企業を経て27歳のときに3人の仲間とライフイズテックを創業しました。起業のための十分な資金がなかったため、20名ほどの先輩を頼り、資金提供をお願いして資本金の300万を集めたのだそうです。その後もGoogle日本法人元社長 村上憲郎氏、脳科学者 茂木健一郎氏、MOVIDAJAPAN 孫泰蔵氏など業界の大物たちの協力を得て事業を展開してきました。さらに昨年には、プロサッカー選手の本田圭佑氏さんが「次世代に少しでもより平和で明るい未来を残す」ことを目的に立ち上げた投資ファンド「KSK Angel Fund」が第1号の投資先として、ライフイズテックに約7億円の投資をして話題となりました。

では、それほどに強力な「応援団」をつくるコツはどこにあるのでしょうか?

応援団を集める4つのポイント


水野さんは、起業してほどなく、経済誌の『経済界』が主催する「金の卵発掘プロジェクト」という大会に出場し、優勝されました。このときの審査員が、サイバーエージェント藤田氏、GMO熊谷氏、ドワンゴ夏野氏 ZOZO前澤氏 グリー田中氏という豪華な顔ぶれだったそう。とても狭い会場で、非常に近い距離でのこのメンバーへのプレゼンテーションは、とても緊張したけれど、良い機会をもらったとこのときの体験を振り返ります。この大会のすぐ後に、藤田氏より何か一緒にやろうという連絡をもらい、現在、サイバーエージェントとジョイントベンチャーも作っているのだそうです。このような恵まれた機会があったとはいえ、その機会を最大限に活かし、相手に印象付けるには4つのポイントがあると水野さんは言います。

1つめは「本質的で壮大なビジョン」。例えば、ライフイズテックは、「2020年に20万人の子どもたちがデジタルのものづくりしている社会」を目指しているとうたっています。その根拠は、子供の野球人口が18万人なので、その子供の野球人口を超えることを大きな目標としています。「野球のエースもカッコいいが、ITで物を作っているヤツがかっこいい」という文化を作りたいという多くの人が共感できるようなテーマの設定をしています。

2つめは、「イノベーションへの挑戦」。他の人がやっていない、新しいことへの挑戦をすることに常に力を注ぎます。例えば、ITキャンプでのメンター役の大学生=ライフイズテックリーダーズを企業から協賛をいただいて教育し、ITキャンプでのリーダー経験を経て、最終的にはスポンサー企業に採用してもらうという企業にも学生にも水野さんにもメリットのある仕組みをつくったり、野球のドラフト会議を模した「ITドラフト会議」を開催するなど、常に新しいことに楽しみながら取り組んでいます。

アナロジーを使って聴き手の記憶に残る


3つめは「足元の実行力」。ベンチャーは実績がないので、実績の積み上げが欠かせませんが、実行力と言うのをどう見せるかが大事。実績はなくても、具体例をもって動きのよさや動かす力があることを示すことも大事だそうです。

4つめは「イメージングワード」。極めて多忙で大勢の人に会うキーパーソンにどれだけ短い時間でどれだけ印象を残せるかは、印象的な言葉だと言います。その中でも特に重要なのは「イメージングワード」。ワーディングの中に、アナロジー(たとえ)を入れることによって、聞き手のイメージが一気に広がり、自分のことをきちんと記憶してもらえるそうです。例えば、「IT界のイチローを作りたい」、「ITキャンプ/スクールはIT界のディズニーランドで、楽しいだけでなく学びたいと思えるのが価値」などの言葉を伝えることで、たくさんの人の協力を得られるのではないかと言います。

当日は、大型の投資を決めたときのプレゼンテーションを再現していただきました。事業を始めるにいたった自分の想い、事業の現状、ビジネスモデルの特徴、他にない特徴的な仕組み、今後の事業進出、事業の社会性、数字についてを具体例を交えながら熱く語り、最後にLife is Tech!のVISIONは「21世紀の教育変革」であると締めくくりました。SONYも「世界のSONY」と言い出したのは、実は当時の盛田社長ご自身だったという逸話を盛り込み、Life is Tech!も自らが大きなVISIONを掲げて、それを実現していくという実行力をアピールしてプレゼンテーションは終わりました。

VISIONを熱く語る情熱


資本金300万円で起業した当時、まだ何もなかった水野さんたちに、インキュベーションマネージャーとして手をかしたファシリテーターの廣川さんは、「6年前と全然変わっておらず、嬉しい。相変わらず引き込まれて、情熱が伝わってくる。」とコメントし、感慨深い様子でした。

力強いプレゼンテーションの後、Q&Aでは会場から続々と手が上がり、「共感を得るためのコンセプトを作るコツはあるか?」、「メディアとの付き合い方のコツは?」、「1日に何時間、1週間に何日仕事をしますか?」など質問があり、水野さんの熱い想いに参加者の皆さんも引き込まれたようでした。

水野さんは、事業を展開していく上での数字については厳しい目をお持ちですが、大金を稼いだり、成功のステイタスといったことには全く興味がないそうで、もっぱら、どうすればより良い教育改革が実現するのかということで頭がいっぱいのようでした。最初にお会いした時は、業界の大物を大勢応援団にしてしまうというやり手の起業家というイメージから程遠く、「若い」という印象を受けましたが、歯切れよく、力強く自身のVISIONについて生き生きと語る様子を拝見していて、応援団をつくるいちばんのコツは水野さんの情熱なのだろうと思いました。

【第2回 ゲストスピーカー】水野雄介氏 (ライフイズテック株式会社代表取締役)
【ファシリテーター】廣川 克也(SFCインキュベーションマネージャー)

●ライフイズテック株式会社