六本木ヒルズライブラリー

Discover21×アカデミーヒルズ
ビジネス書大賞2015 記念トークセッション
「ビジネス書から見る世界のビジネストレンド」

ライブラリーイベント

日時:2015年6月17日(水)19:00~21:00
~「2015 ビジネス書大賞」表彰式~

文/小林 麻実 写真/結縄 久俊




日本で出版された優れたビジネス書を選び、それを表彰することによって出版界、ビジネスパーソン、そして日本全体を活性化していこうという「ビジネス書大賞」。その表彰式と記念トークイベントが、六本木ライブラリーで開催されました。


審査員特別賞『21世紀の資本』
~こんなに売れるとは、まったく思いませんでした!~





表彰状の授与に続き、第一部では「ビジネス書大賞審査員特別賞」を受賞された翻訳家・評論家の山形浩生氏のスピーチが行われました。山形氏は昨年、トマ・ピケティの大著、『21世紀の資本』を翻訳されています。それらを踏まえ、「出版業界の枠を超えて社会現象とまでなった『21世紀の資本』をはじめ、数多くの経済書・ビジネス書の翻訳を通じて日本社会に貢献した功績が評価された。」ということが授賞理由となっています。

「こんなに売れるとはまったく思いませんでした。」という第一声から始まった山形氏のスピーチでは、「なぜ売れたのか」の推察から書籍内容の解説、翻訳出版の裏側まで非常に興味深いお話が続きました。
日本語版のタイトルが『21世紀の資本』であって『21世紀の資本論』ではない理由は、マルクスの『資本論』との違いを明確にするため。—ちなみに中国語版のタイトルには「論」がつき、韓国語版にはつかないそうです。

自分が知りたいことは皆も知りたいことではないか? と、意義ある翻訳を続ける山形氏。「今売れることよりも、5年後に残る本になるよう、原著の母国での位置づけや解説を加え、議論が始まる「場」を作っていくことが必要ではないかと思っている。そのためにはこの六本木ライブラリーのような「場」も重要」とのお言葉も頂きました。

「ビジネス書とは何か?」
~ビジネス書を取り巻く環境は、海外と日本でどのように異なるのか?~



第二部は、「ビジネス書大賞」を受賞した『ゼロ・トゥ・ワン』日本語版の編集者・松島倫明氏、翻訳家・関美和氏、序文を寄稿した京都大学客員准教授・瀧本哲史氏によるパネルディスカッション。モデレータのオトバンク代表取締役会長である上田渉氏は、ご自身の起業経験も合わせて、この本で描かれるスタートアップや、世界のビジネストレンドについてのお話を引き出していきます。

「『ゼロ・トゥ・ワン』は単に起業についてのノウハウを書いた本ではなく、思想を持った本なので、その点が理解されるようになるために瀧本氏に序文を依頼した。」と松島氏。それを受けて「起業の世界にいる人は放っておいても読むだろうから、それ以外のターゲットを設定した。」と瀧本氏。関氏も、「初めて原著を読んだ時からこの本の世界に圧倒され、一般の本とは全く違うと感じました。」と翻訳出版までの経緯をそれぞれ語って頂きました。

そして、「そもそもビジネス書とは何なのか?」、「ビジネス書を取り巻く環境は、海外と日本でどのように異なるのか?」と、世界の最先端のビジネストレンドを知る第一人者たちのトークが続き、参加者も巻き込んで知的なディスカッションが繰り広げられました。

来年はどんな本が選ばれるのでしょうか? アカデミーヒルズ会員制ライブラリーの会員の方には、ぜひそれを決める一票を投票して頂きたいと思っております。今後のライブラリー事務局からのお知らせにご注目下さい。

左から〈パネリスト〉松島倫明氏、関美和氏、瀧本哲史氏〈モデレーター〉上田渉氏