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[3週連続企画] 解剖!六本木アートカレッジ

第2弾は、現代アートのプラットフォーム作りに取り組むNPO法人 AITへの訪問記

更新日 : 2011年11月02日 (水)

 会社訪問記第2弾に登場してくれるのは、六本木アートカレッジで4つの講座を担当してくれるAIT(特定非営利活動法人 アーツイニシアティヴトウキョウ/エイト)。アート界で戦力となる人材を送り出す教育プログラムを核としたその活動に触れるとともに、講座を受講するにあたってのおすすめポイントなどを伺うために、代官山のオフィスへお邪魔してきました。


文/さとうわたる 写真/さの[アカデミーヒルズ スタッフの活動レポート]

サブタイ1


AIT ディレクターの塩見有子さんが応えてくれました。


出迎えてくれたのは、AIT理事長の塩見さん。設立のはなしは、はじめての横浜トリエンナーレが開催され、アートへの注目が集まり裾野が広がった2001年にさかのぼります。

「90年代から、アートマネジメントが大学などでも学べるようになり、活発になってきたという背景があります。しかし、実はアートのマネージャーがいても、マネジメントをする対象や場がないという状況も一方でありました。AITの設立メンバーの何名かは、海外でアートを学んでいたため、東京で足りないのは教育じゃないか? アートの価値を世の中で高めていくには、大人へのアートのエデュケーションが必要じゃないか? アートについてより深く考えたり、議論したりすることで知識を増やす場をつくってはどうだろう?ということに、自然にみんなの意識が向いていきました。そうしたさまざまなアートのプラットホームを作り出そうというアイディアの一つとして、現代アートの学校「MAD」が立ち上がりました」

「MAD」の意味は、Making Art Different。アートを変えよう、違った角度で見てみようというメッセージが込められています。展覧会をつくるキュレーションとそれを批評するオーディエンス、それぞれを育成する2つのコース、30名でスタートしたMAD。10周年を迎えたいまでは1600人ほどの修了者を送り出し、アーティストのみならず、美術館、ギャラリー、アートフェアといったところで活躍をしているそうです。

「アートは、人々の心を動かす力があります。たとえば、過去に独裁者たちがアートを危険なものとして排除しようとした歴史がありますよね。極端に言ってしまうと、アートって洗脳みたいなところがあるのかもしれません。全く違う考え方を取り入れることによって、今まで自分が考えてきたことがガラガラと崩れる瞬間というか、そんなふうに人生に影響を与えてしまうことも、アートの力のひとつだと思います。それは、信じてきたことが崩れるわけですから、「この世の終わり〜!」と思うかもしれませんが、でも実は、その先に、より豊かな人生が待っている気がします。そこまで大げさではなくても、似たような経験を受講生から聞くと、嬉しい気持ちがします」

こうした大きな手応えをつかみながら「MAD」がスタート。翌年にはNPO法人としてAITが誕生。そして、教育プログラムを軸にレジデンシー、スカラシップ、エキシビション、展覧会と、複合的な活動へと発展をとげています。また、昨今注目を集めるアートとビジネスの関係を取り入れたコースが来年度には登場する予定だとか。

「NPOの場合、会費や「MAD」等の事業収入を得て、それが私たちの活動資金の一部となる。その資金を使って、より公共性の高いプログラムを作り、支援して下さる方々に還元しなければならない。いかに、多くの人から必要とされるNPOとして存続できるか、その仕組み作りに気を配っています」

サブタイ2


タテ・ヨコ・ウエ・シタ どこからみても[AIT]となる秀逸なロゴ。

暖かい雰囲気の中、取材はすすみました。
アートって、なんか難しそう・・・・。そう思っているビジネスパーソンは多いのではないでしょうか? はじめての方にこそアートをよく知ってもらいたい、体験してもらいたいと願う「六本木アートカレッジ」。今回、AITさんにはプログラム提供という形で参加してもらいました。タイトルからしてドキッ?!と興味をもってしまう、11/23のプログラムについてそれぞれポイントを語ってもらいましょう。


「アートは、過激なイノベーション?--近現代美術入門」
アートには、ある美術運動が興れば、その運動とはまた違う運動が始まり、前進をしてきた歴史があります。イノベーション=何かを壊して新しいものをつくると考えると、その視点でもアートを語ることができますよね。アートは、既存の価値や考え方を壊すことについては得意なので。このレクチャーでは、20世紀以降のアートの歴史を概観したい人向けに、イノベーションというキーワードを軸に考えていきます。

「アンディ・ウォーホール以後:アートの価値とブランディング」
ここでは、アートの価値がどのように定まっていくか、ウォーホールを出発点に考えます。ウォーホールは、シルクスクリーンという大量生産が可能な手法で、作品を次々と制作し、「一点もの」という価値に疑問を投げかけ、市場のありかたを変化させました。「この作品はなぜこの値段がするの?」とか、オークションで売られる値段とギャラリーで売られる値段の違い、アートフェアの位置づけなどいろいろな謎に迫っていきます。

「アートシーンを動かす世界の50人」
世界のアートシーンでは、誰がどのような仕事をしているか、非常にわかりにくいと思います。それこそ、注目のアーティストが展覧会を企画していたり、いつもラフな格好をしている人が、実は大物コレクターというようなこともあります。アート界ってどうなっているのだろう、誰が動かしているのだろうという素朴な疑問に対して、アート界で活躍するプレイヤーに焦点を当てて、その仕組みや構造を探ります。

「アート体験と経験経済」
アート作品のなかには、食事を共に食べる行為だったり、マッサージをしてくれたり、リラックスして本が読めたりなど、見るだけではなくて参加や体験をすることでアート作品のかたちをつくっていくトレンドがあります。「え?これがアートなの?」と思ってしまいそうな、新たな価値を作品に取り入れてきた流れを、経験経済という考え方をキーワードに、一緒に眺めてみようというものです。


話を聞いてるだけでもワクワクするこれらのプログラムをすべて受講しても、3000円ポッキリ!とコスパの高さも魅力ですが、さらに当日は「MAD」の世界をプチ体験できる企画も用意してくれているそうで、さらに期待が高まります。最後に六本木アートカレッジのテーマともなっている「アートってこういうことだったのか!」について問うてみました。

「考え続けていくことがアートだし、“アートってこれだ!”と分かったつぎの瞬間に“いや違うぞ!”って思ったりするのもアートだと思います。決してつかみきれないところが楽しい部分じゃないかと。回答が用意されているのではなくて、あくなき探究心、好奇心を誘うもの、という気がします。また、キレイとかキモチいいとかだけでなく、驚きとか発見とか、すべてがアートにはあるんじゃないでしょうか」

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