アカデミーヒルズの会員制ライブラリーで毎月開催している英文原書のエッセンスを読み解き、英語で意見交換するリーディング講座の講師、若尾和紀さん。参加者から「多様なバックグラウンドの皆さんと英語を使って意見を交わしながら深く学ぶことができる大変貴重な場」との声が寄せられる“英語リーディング講座”はどのように行われているのでしょうか？ 本レポートでは、大学生で起業した若尾さんのキャリアやリーディング講座の様子をお届けします。

文 : 清水香帆

そんなドキッとするタイトルのイベントを以前開催したときに申込んでくださったのは約500名！AIによる自動翻訳が進化しても、日本人の英語学習に対する関心は依然高いままです。

「外国語学習の科学にもとづく効率的な習得方法」というサブタイトルにもある通り、人間の言語習得のメカニズムを研究する「第二言語習得論」に基づいた学習法を解説したこの講座は、これまで色々な方法を試しても英語が上達しないと感じていた参加者たちにとって、まさに「目から鱗が落ちる思いだった！」という感想が多く寄せられました。

この講座の講師が、今回ご紹介する英語学習のスペシャリスト、株式会社SKY Educational Partners CCOの若尾和紀さんです。

若尾さんは現在、毎月1回、日本でも話題となった英文原書から良書を厳選し、英語で読み解き、英語で対話をするシリーズ、「英語リーディング講座」の講師も務めてくださっています。

アメリカ・ボストンで「第二言語習得論」を学び、日本人にとって最も効果的な学習法を追い求め、試行錯誤して研究を重ねてこられた若尾さん。ここでは若尾さんのキャリア、留学時代のお話、そして現在、定期開催している英文原書の読書会の様子をレポートします！

帰国子女でもなく、英語学習のことをずっと考えてきたわけでもない。そんな若尾さんが、どうして英語学習のスペシャリストとして起業することになったのでしょうか？

「以前から起業したいと思っていて、起業するにあたっての事業のネタを探していたときに、英語ならいけるのではないかと思った。」と若尾さん。
中高で英語の授業がつまらないと感じていた若尾さんは、実践で使える英語を習得するにはどうしたらいいのかを当時、自分で考えて工夫して勉強されていました。
大学１年生でイギリスに１か月の短期間留学したとき、自分の英語が現地の人との会話で通用することを発見し、自分の勉強法は間違っていなかった、と確信したといいます。
その後、体系的に外国語学習法について学ぶため、大学３年生のときに米国・ボストンに7か月留学。第二言語習得論を学び、脳科学に基づいた効果的な外国語学習法を研究します。米国での学びによって、人間の言語習得のメカニズムは世界共通のものがあると理解すると同時に、一方で日本語と英語の構造が全く異なることから、米国での研究をそのまま日本に輸入して適用することはできないのではないか、と感じたそうです。そこで米国で学んだ第二言語習得論を応用しながらも、日本人に適した学習法を２年以上模索し、自分で試行錯誤を重ねた末に、若尾メソッドを確立させていったのです。
目標通りに大学在学中に個人事業としてRipple Englishを立ち上げ、英語研修事業をスタートさせた若尾さん。
彼が推奨する英語学習法は、外資系企業に勤務するライブラリー会員からも「脳科学をとりいれた効率的な外国語学習の話がユニークで効果的に感じました。若尾メソッドをもっと具体的に知りたいです。」とコメントを頂くほど注目されています。

第二言語習得論の概要で、若尾さんが強調するのは「理解可能なインプットの反復」が必要条件であること。アウトプットが重要だと思われがちですが、最初はインプットに専念して、理解可能なインプットを消化し続けることの方が大事だといいます。
また、「理解可能な」というところもポイントです。自分のレベルと合わないインプットをしても効果的ではないにも関わらず、現状の英語力を超える教材を使ってしまう人が多く見受けられるそうです。

アウトプット学習も、もちろん必要ですが、ある程度インプット学習を行って語彙力やリスニング力を伸ばさないとアウトプットをしても無駄になってしまいます。レベルにあったインプットの反復を一定期間行い、理解可能なインプットの消化を継続してから、アウトプットと組み合わせることで習得に繋がるのです。

英語学習法のイベントでは、個別の悩み相談に応じて第二言語習得論を踏まえ、日本人の学習に適した教材や学習計画の立て方などをアドバイスしてくださった若尾さん。

「コロナ禍で海外に行く機会が減ったことで英語を話す機会が減り、自然な会話の勉強のお勧めはありますか？」という参加者からの質問に、「会話は独り言練習が有効」と答えた若尾さんからは、どんな環境に置かれても、「自分でできることはある」という姿勢も学びました。

ライブラリーメンバーとの「英語リーディング講座」では、英文原書のエッセンスを参加者の皆さんと読み解いています。

洋書は日本でも話題になった良書ばかり。過去に崩壊した文明を分析し、そこから得られる示唆が描かれているジャレド・ダイヤモンドの名著『文明崩壊：滅亡と存続の命運を分けるもの』から、睡眠の科学を記した『睡眠は最強の解決策である』や行動経済学のブーム火付け役となった『予想通りに不合理：行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』など、硬軟織り交ぜた、幅広いテーマの本を取り上げています。

気になる講座の内容は：
①インプット：本の中から一番関心を持たれそうな部分の内容の抜粋（400単語くらい）のテキストを参加者が読む。
②サマリー：その後に自分が読んだ内容のパートを英語で自分の言葉で要約して説明する。
③ディスカッション：インプットした内容をもとに、自分自身の経験や考えを踏まえて参加者全員で意見交換・対話することで理解を深める。
④プレゼン：最後にその日に自分が得た学びを90秒でまとめて、英語でプレゼンする。

まさに、若尾メソッドの要素が盛り込まれており、インプット学習に重きを置きつつ、最後にアウトプットの場も設けることで双方のバランスが取れた設計になっていることがお分かりになるのではないでしょうか。

また、若尾さんは語彙力やリスニング力などの英語力があれば英語ができるようになるわけではなく、背景知識や教養が必要だと考えています。この英語リーディング講座では、名著と言われる良書を厳選することで、英語だけを目的にせず、教養を身につけることも目指しています。


最近では、「日本語より英語の方が楽に話せる自分にとって、このイベントなら参加できると思った」、「本を読む時間がなかなか取れないが、本を読むきっかけにしたくて参加した」と外国人の会員のご参加もいただいております。

一方で、英語で発言するのはハードルが高いけど、インプット学習のために「聴講だけ」の方もいらっしゃいます。「聴講だけ」の方でも、自己紹介に参加いただいたり、チャット投稿で日本語で若尾さんに英語に関するご質問をいただくなど、ご自分に合った形で自由に参加できることもご好評いただいています。

毎月1回、メンバー同士でカジュアルに楽しく本をネタに英語で語り合う英文原書の読書会。
今後は『2030年：すべてが加速する世界に備えよ』（ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー著）や、『21 Lessons』（ユヴァル・ノア・ハラリ著）などの英文原書を取り上げていく予定です。メンバーの皆さんのご参加をお待ちしております！

■若尾さんのインタビューをポッドキャストで配信中！
　大学生で起業が当たり前！？英語学習のスペシャリスト、若尾和紀さんに聞く

■若尾さんの英語プログラムのサイト
　若尾さんが提供する英語研修事業のサイトでは、一部無料で教材を公開しています。　　　
   https://www.ripple-realprogram.com/


■ライブラリーメンバー限定「英語リーディング講座」
   2022年11月10日(木) 19:00-20:30 開催
　The Future is Faster Than You Think:
　How Converging Technologies are Transforming Business, Industries, and Our Lives　　　
   https://www.academyhills.com/library/calendar/20221110.html