六本木ヒルズライブラリー

THE HUMAN HISTORY

人類史を紐解く6冊

更新日 : 2021年10月15日 (金)





コロナ禍を初めとして、異常気象やエネルギー危機など、取り組むべき問題が山積みとなっている現代。あるいは、仕事や結婚といった個人のレベルでも、私たちは日々多くの悩みに直面しています。そんな時、もっとも単純ながら確実に解決の糸口となるのは、過去を顧みることではないでしょうか。

ドイツの文豪ゲーテはこういう言葉を残しています。「三千年の歴史から学ぶことを知らぬ者は、知ることもなく、闇の中にいよ、その日その日を生きるとも。」

これまで人類が歩んできた歴史は、無数の失敗と成功の積み重ねです。今一度人類の道程をたどりなおすことで、新しい未来を切り拓く鍵を探してみませんか。



Humankind希望の歴史 〈上・下〉
人類が善き未来をつくるための18章ルトガー・ブレグマン 著 / 文藝春秋 刊
人類は悪か、善か。スタンフォード大学の囚人実験やホッブスの『リヴァイアサン』など、これまで様々な心理学実験や経済哲学において、人間は闘争を本能とし、集団はたちまち「悪」に染まると語られてきました。本書はそういった「性悪説」を今一度検証しなおし、具体性を持った「性善説」を提示します。人類が地球で最も繁栄することができた背景には他者と協力する能力があり、その根底には善性があったのではないか。これまで文明を支配していた暗い思想を根底から覆す、希望的人類観がここに。

いじめとひきこもりの人類史正高信男 著 / 新潮社 刊動物になくて人類にあるもの、それは「いじめ」だった!?昨今ますます問題視されるいじめの起源を人類の「定住化」にまで遡って考えてみた時、そこには人間社会を構成するコミュニティの問題がありました。集団に結束をもたらすために機能していた「よそ者の排除」は、現代社会では大量の「ひきこもり」を生み出しましたが、今はコロナによって社会の構成員すべてが「ひきこもり」となる時代。人類社会の論理をアップデートする時が来ているのかもしれません。異端児でありながらパイオニアでもあった「ひきこもり」的人々を再評価し、ポストコロナの社会像を見据えます。

なんでも「はじめて」大全
人類と発明の物語スチュワート・ロス 著 / 東洋経済新報社 刊
人類の歴史とは、すなわち発明の歴史にほかなりません。火の利用から始まった人間の発明は、今や人工知能やスーパーコンピュータを生み出すまでに至りました。あるいは人権や宗教もまた、人類が生み出したもの。今では当たり前にあるものも、「どこか」で「誰か」が「はじめて」発明したのです。人類がはじめて靴を履いた時、人類がはじめてワクチンを打った時……人類の様々な「はじめて」を網羅した本書は、文明の進歩をたどるだけでなく、イノベーションの秘密にも迫ります。人類の可能性を切り拓く、まだ見ぬ「はじめて」のヒントが詰まった一冊です。

エネルギーをめぐる旅
文明の歴史と私たちの未来古舘恒介 著 / 英治出版 刊
火を扱い、森を切り拓き、石油を燃やして、果てには原子力に手を出した人類。文明が発展する背後には、文字通り、新たな「エネルギー」との出会いがありました。一方、気候変動や化石燃料の枯渇といった課題に直面している現在、私たちはエネルギーと人類の関係を再考する時が来ています。エネルギー業界で長年働いてきた著者は、科学的な視点に限らず、エネルギーが人間の心、社会にどのような影響を与えてきたのかをも踏まえながら、未来の社会を考えるうえで様々な視点を紹介しています。本書を通し、エネルギーについて、そして人類について考え始めてみませんか。

「木」から辿る人類史
ヒトの進化と繁栄の秘密に迫るローランド・エノス 著 / 水谷淳 訳 / NHK出版 刊
人類史が語られる際、これまで主役だったのは石や青銅、鉄。しかし、類人猿時代の樹上生活から、建築素材、あるいは鉄を精錬するために必要とされた木炭に至るまで、じつは「木」こそが重要な鍵を握っていたのです。生物学者である著者は生体工学の観点から木の特殊性を分析し、その驚くべき汎用性が人類に与えた影響を解き明かします。一方、産業革命以後、木の存在が軽視されてきた結果が、森林破壊やそれに伴う環境変動でした。700万年にわたって文明を支えていた木の重要性と向き合い、人類と木の関係を修復することが、また新たな人類の進化をもたらすのかもしれません。

ブループリント
「よい未来」を築くための進化論と人類史〈上・下〉ニコラス・クリスタキス 著 / ニューズピックス 刊
分断と格差がかつてないほど叫ばれる時代。本書は人類の発展を支えてきた連帯の力を探るため、南極探検隊の遭難者コミュニティから、Amazonのスタッフコミュニティ、果ては人間の枠を超えてサルやクジラのコミュニティに至るまで、徹底して「社会」の在り方を検証します。繁栄する社会の共通点は一体何なのか?人類の進化と歴史から見える「社会」の力とは何なのか?進化生物学、人類学、ネットワーク理論を駆使し、本書が出した結論は、実に「希望」に満ちています。「人類は分断を乗り越えられる」と断言する、エビデンスに基づく楽観主義が、きっとあなたの人間観を変えるはずです。

今、私たちは間違いなく人類史に残る時代の転換点を生きていると言えるでしょう。しかし、誰も経験したことのないような事態を目の前にしても、私たちはこれまで築き上げてきた文明を少しずつ更新することでしか、前には進めません。そして未来を切り拓く新たな視点は、「木」だったり、「エネルギー」だったり、あるいは「ひきこもり」だったりするのです。

歴史を様々な角度から見直すことで、過去と現在の新たな繋がりを発見し、思いもよらない未来をつないでいく。人類史をめぐる本の世界は、まさに生き延びるための人類の叡智がつまっています。

ぜひ、この星の歴史を紡ぐ人類の一人として、ご紹介した本を手に取っていただければ幸いです。



Humankind希望の歴史 〈上〉

ルトガー・ブレグマン
文藝春秋

いじめとひきこもりの人類史

正高信男
新潮社

なんでも「はじめて」大全 - 人類と発明の物語

スチュワート・ロス
東洋経済新報社

エネルギーをめぐる旅—文明の歴史と私たちの未来

古舘恒介
英治出版

「木」から辿る人類史

ローランド・エノス
NHK出版

ブループリント—「よい未来」を築くための進化論と人類史〈上〉

ニコラス・クリスタキス
ニューズピックス