六本木ヒルズライブラリー

文披月 ふみひらきづき に読みたい 6冊

詩集・書物・紙にまつわる本

更新日 : 2021年07月20日 (火)





梅雨が明け、太陽がまぶしく照りつける7月。
気持ちものびやかに、活気づく季節です。

7月の別名「文月」の由来には諸説あるそうですが、七夕の短冊に詩歌を書き連ねるという文化や、七夕の時期に書物や紙を干す風習から転じてできた「文披月ふみひらきづき」などが有力な説のようです。

今回はこの「文月」にちなんで、詩歌を嗜むことや、書物を読むことにフォーカスを当てた書籍をご紹介します。



つながる短歌100あんの秀子 朝日新聞出版第一章「恋のうた」は七夕を題材にした短歌から始まります。
平安時代の在原業平と、現代の作家俵万智が短歌を通じて共感し合う、見開きで味わう二つの短歌。時代を異にしても共通する、人間の豊かな感性を楽しむことができます。
本来短歌は上の句(五・七・五)だけで構成されますが、それが下の句(七・七)ではなくほかの短歌と呼応することでどんな化学反応が生まれるのでしょうか。

アルカリ色のくも
宮沢賢治の青春短歌を読む佐藤通雅 NHK出版
「アルカリ色のくも」とはどのようなものか。
宮沢賢治の短歌に触れたとき、その独特な表現に心が揺れます。その心の機微の中には、どのように解釈したらよいのかという迷いの念もあることでしょう。
本書はその迷いに徹底的に向き合った9人の現代歌人が、宮沢賢治の短歌を紐解く手助けをしてくれます。宮沢賢治の世界観に触れる入門書としてもぴったりの一冊です。

文豪の凄い語彙力山口謠司 新潮社日本を代表する文豪たちが言葉と向き合い、磨き続けた語彙の力。
本書では文豪たちが独自の感性で紡ぎ出した小説の一部分が取り上げられており、ときには辞書にも載っていないような独創的な言葉も掲載されています。一見すると難解で一筋縄ではいかないものばかりですが、言葉に隠された本質を理解していくことで、次第に語彙力を鍛えることに繋がるはずです。

本を読むときに何が起きているのかピーター・メンデルサンド フィルムアート社「そのとき、突然誰かの叫び声が聞こえた。」 この一文から、どのような声音を想像しますか。
解釈は人それぞれ。しかしわたしたちは「想像」でその叫び声を補填することができます。
本書は、このように本を読む際に自然と頭の中で作り出されるイメージについて、現象学的なアプローチをもとに記しています。

デジタルで読む脳×紙の本で読む脳
「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てるメアリアン・ウルフ インターシフト
わたしたち人類が文字で意思疎通を図る道を選んでからというもの、長い時間をかけて紙を媒体とした「読書脳」を発達させてきました。
しかし今では紙の本を模したデジタルデバイスなどの登場で、どんどん紙の本を読むことから離れつつあります。
進歩し続けるデジタル文化といかに向き合うべきか。考えるきっかけをくれる一冊です。

ネット時代の手紙学宮田穣 北樹出版わたしたちが当たり前のように使っているSNS。それは人類の歴史から見るとほんの最近始まった文化です。膨大な情報を提供し、気軽な交流を可能としたそれらは、そのめまぐるしさゆえに表層的な情報処理をわたしたちに求めます。
本書はそのような現代に疑問を投げかけます。物事を熟読玩味する力、そしてコミュニケーション能力を培う術を「手紙」の観点からご紹介しています。

7月の別の呼び方として「 愛逢月 めであいづき 」というものがあります。これは織姫と彦星が会えない期間に手紙でやり取りをしていたことから名づけられたそうです。
文月に、愛でる心地をペンを乗せ、久しぶりに手書きの手紙を書いてみるのはいかがですか。




つながる短歌100

あんの秀子
朝日新聞出版

アルカリ色のくも 宮沢賢治の青春短歌を読む

佐藤通雅
NHK出版

文豪の凄い語彙力

山口謠司
さくら舎

本を読むときに何が起きているのか

ピーター・メンデルサンド
フィルムアート社

デジタルで読む脳×紙の本で読む脳「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる

メアリアン・ウルフ
インターシフト

ネット時代の手紙学

宮田穣
北樹出版