六本木ヒルズライブラリー
【ライブラリーイベント】開催レポート
【電通Bチーム×Forbes JAPAN×アカデミーヒルズ ライブラリー】
あえてターゲティングしない「インクルーシブ・マーケティング」って何!?
更新日 : 2018年07月02日
(月)
「好奇心ファースト」を合言葉に、電通内で活動するクリエイティブ・シンクタンク「電通Bチーム」。社内外の特任リサーチャーが本業、趣味、大学の専攻、副業 などの得意分野を1人1ジャンル、常にリサーチ。その中から新しいコンセプトをForbes JAPAN「電通BチームのNEW CONCEPT採集」に毎月掲載しています。誌面には書き尽くせなかったあのネタを深堀りする番外編トークセッションを、電通、Forbes JAPAN、アカデミーヒルズライブラリーのコラボレーションで開催しています。
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▼インクルーシブ・マーケティングって何?
第6弾のテーマは「インクルーシブ・マーケティング」。
これまで、独占的で特別感のある「Exclusive」という言葉が、マーケティング業界の中でもポジティブな意味合いで用いられてきましたが、今回、そのExclusiveとは反対の意味となる「Inclusive」という言葉を使った「誰をも受け入れるマーケティング」というコンセプトはなぜ生まれたのでしょうか?
<インクルーシブ・マーケティング生みの親>
今回のコンセプト「インクルーシブ・マーケティング」を提唱しているのは、電通Bチームで社会学を担当し、全国で同姓同名を集めて一般社団法人まで作ってしまった一般社団法人田中宏和の会の代表理事、田中宏和さん。このコンセプトを思いついたきっかけを次のように語ります。
第6弾のテーマは「インクルーシブ・マーケティング」。
これまで、独占的で特別感のある「Exclusive」という言葉が、マーケティング業界の中でもポジティブな意味合いで用いられてきましたが、今回、そのExclusiveとは反対の意味となる「Inclusive」という言葉を使った「誰をも受け入れるマーケティング」というコンセプトはなぜ生まれたのでしょうか?
<インクルーシブ・マーケティング生みの親>
今回のコンセプト「インクルーシブ・マーケティング」を提唱しているのは、電通Bチームで社会学を担当し、全国で同姓同名を集めて一般社団法人まで作ってしまった一般社団法人田中宏和の会の代表理事、田中宏和さん。このコンセプトを思いついたきっかけを次のように語ります。
アメリカのLCC、Jet Blueが母の日に合わせて実施した「Flybabiesキャンペーン」は、赤ちゃんが一人泣くと同じ飛行機に乗った乗客全員が次回のフライトで25%OFFのクーポンをもらえ、4人の赤ちゃんが泣けば次回のフライトは全員が無料になるというもの。子育てをしていると子どもの泣き声が周囲の人に迷惑をかけると思い、飛行機に乗ることを躊躇してしまいがちですが、単にお母さんだけでなく、機内の乗客全員が楽しくなり、むしろ積極的に飛行機に乗りたくなるような手法にインスパイアされました。待機児童を減らすために保育園を作ることも大事なことですが、このような企業努力、企業の知恵はもっとあってもいいのではないかという思いから、インクルーシブ・マーケティングという概念を思いついたのだそう。
▼現在のインクルーシブレベルは?!:みんなのダイバーシティ調査
電通が実施した「みんなのダイバーシティ調査」の中で、LGBTへの理解や職場でのフレンドリーさ、高齢者への声掛けや手助け等についての意識調査では、10代が概ねオープンマインドだったのに対し、40代の理解が進んでいないという結果になったそうです。
マイノリティへの理解や関わりがが進まない社会の要因は、若い層ではなく実は40代の理解が進まないからかも知れないという結論に達し、ほとんどが40代というこの日の登壇者には耳の痛い話となりました。
また、日常生活の中で抱えている「課題」についての設問では、全体の約4割の人が社会的な環境が整っていないことで自分の特徴(例えば性別や年齢、体型など)が弱みになったり、不便につながるなど、日常生活の中で「暮らしにくさ」を抱えているという結果となり、マイノリティに代表される限定的な人の課題と思われがちなことも、ちょっと視点を変えたり、広げたりしてみると、実は自分も含めた一般生活者全般の課題でもあることがわかりました。
▼今、なぜインクルーシブ・マーケティングなのか?
そのような調査結果を鑑みて、今、インクルーシブ・マーケティングが積極的経営戦略として必要だと語るのは、電通ダイバーシティ・ラボの林 孝裕さんです。
現在の日本の企業にとってのダイバーシティとは、女性雇用、障害者雇用、人事・雇用・採用と来て、その次に進めずに留まっている状況で、社会貢献やCSRという文脈になりがち。そして日本では、社会貢献/CSRでのビジネス活動やお金儲けはご法度というムードがありますが 欧米のダイバーシティは公民権運動から始まっているため日本とはレベルが違い、ビジネス活動しようという動きも早いのだそう。
現在の日本の企業にとってのダイバーシティとは、女性雇用、障害者雇用、人事・雇用・採用と来て、その次に進めずに留まっている状況で、社会貢献やCSRという文脈になりがち。そして日本では、社会貢献/CSRでのビジネス活動やお金儲けはご法度というムードがありますが 欧米のダイバーシティは公民権運動から始まっているため日本とはレベルが違い、ビジネス活動しようという動きも早いのだそう。
大事なのは、企業のCSRと本業を切り離すのではなく、どうくっつけて、どうエンジンとしていくのかという事だと言います。これからは、マイノリティへの理解や配慮というレベルではなく、多様性を大前提とした社会におけるあらゆる企業活動のリデザインと、それを原動力とした社会システムのリデザインが必要で、そのためにはンクルーシブ・マーケティングに舵を切らねばならないのだと言います。
例えば、マーケティングの人間がやってしまがちなことは、障害がある人や歩けない人のニーズを知りたいときに、車いすの人を100名集めてしまう。しかし、実は共通な項目は、車いすに乗っていることだけで、彼らを1人の人として見ていない事になります。車いすの人だけを集めても車いすの人にしか通用しないことしか出てこないので、それはただのニッチでしかなく、社会全体を変えることにはならないと言います。
ターゲティングという言葉は、実は戦争用語から来ているそうで、何か塊の中から自分に都合のいいターゲットを選びだすのではななく、パートナーを見つけたり、仲間作りが大事だと。どのようにして魚を獲ろうかと考えるのではなく、どうすれば魚が獲れる豊かな海を作れるかと言うところに目を向けなくてはいけないと林さんはインクルーシブ・マーケティングの必要性を訴えます。
ターゲティングという言葉は、実は戦争用語から来ているそうで、何か塊の中から自分に都合のいいターゲットを選びだすのではななく、パートナーを見つけたり、仲間作りが大事だと。どのようにして魚を獲ろうかと考えるのではなく、どうすれば魚が獲れる豊かな海を作れるかと言うところに目を向けなくてはいけないと林さんはインクルーシブ・マーケティングの必要性を訴えます。
▼注文をまちがえる料理店
最後は、注文を取って配膳をするホールスタッフがみんな認知症という不思議なレストラン「注文をまちがえる料理店」を企画・プロデュースした小国士朗さんが登場。
「注文をまちがえる料理店」は2017年6月と9月にそれぞれ2日間と3日間実施したイベント型のレストラン。9月はクラウドファンディングで資金を集めて、493人の個人・団体・企業から1,291万円の支援が集まって実施することが出来たのだそう。会場ではその9月のオープンの様子のムービーを上映しました。
>どう受け止められ、どう広がったか
このレストランをやってみて想定外の反響があったそう。国内のメディアは百数十社、海外メディアもアルジャジーラやニューヨークタイムズなど最終的には20カ国以上からの問い合わせがあったそうです。これにはご本人も本当に驚き、2日、3日の小さなイベントにも関わらず、そして、思想や方針も違うメディアが、この場所に集まってひとつのことに注目してくれたことがとても面白かったと振り返ります。
▼注文をまちがえる料理店」で起きたこと、気づいたこと
>コストが、価値に変わった
忘れてしまう、間違えてしまう認知症という状態は、ある意味で社会的には「コスト」と捉えられることが多いと思いますが、「注文をまちがえる料理店」では、そのコストがグルンと価値にひっくり返ったと言います。
例えば、お客さんが「オムライスを頼んだんだけれど・・オムライスが届いたんだよね」とがっかりした様子で話しているのを聞いた時、間違えることを一緒に楽しむというマインドセットができることによって、コストではなくむしろ価値に変わり、だから間違えてもまあいいか、と言えるようになる。すると、いままで負の側面と思えたことが意外とキラキラした価値に変わっていくんだ、ということを感じたそうです。
例えば、お客さんが「オムライスを頼んだんだけれど・・オムライスが届いたんだよね」とがっかりした様子で話しているのを聞いた時、間違えることを一緒に楽しむというマインドセットができることによって、コストではなくむしろ価値に変わり、だから間違えてもまあいいか、と言えるようになる。すると、いままで負の側面と思えたことが意外とキラキラした価値に変わっていくんだ、ということを感じたそうです。
>分けずに、混ぜる
注文をまちがえる料理店を実施するにあたり、効率と非効率とか日常と非日常、サービスを提供する側と受ける側といった色々な面での問題点や課題があったと言います。しかし、最終的にはこれらの相対することをあえて分けずに「混ぜよう」という考えに落ち着きました。たとえば、店員係のお年寄りとお客様とか、すべての席を相席にしてお客様同士を混ぜることで、全員が「異物」になりテーブルの会話が弾んだといいます。
そして、社会課題というのは社会受容の問題ではないかと思い当たったそう。法律や制度を変えて環境の整備をすることも勿論ですが、社会全体の受容度が上がれば意外とフンワリと解決していくこともあるのではないか?受容度が高まれば高まるほど、課題は課題でなくなり、誰もが「ここにいていいんだ」、「存在していいんだ」、と思えるような社会が実現できるのではないか。
制度を変えなければ始まらないのではなく、それぞれの意識・行動によってでも課題は十分解決できるのではないかと締めくくりました。
▼インクルーシブ・マーケティング=ごちゃ混ぜ
最後のディスカッションでは、「みんなのダイバーシティ調査」の結果を報告してくださった電通の古平さんが、「注文をまちがえる料理店」の映像が会場に流れたとき、皆さんの表情が一気に和らいでめちゃめちゃ良い笑顔になったことがとても印象的だったと語りました。属性も全く違う人たちがこの日に集まり、同じ映像でみんなが一気に和やかになるというのは、小国さんの言うとおり「混ぜる」ことの良い副産物であり、これこそがインクルーシブ・マーケティングではないかと言います。
さらに、Forbes JAPANの藤吉さんも新しい価値を創り出したり、成功する企業や人には同様の共通点があり、自分たちの持っている得意技をもとにお客さんと一緒に同じゴールを目指す企業は成功する傾向にあるそうです。
制度を変えなければ始まらないのではなく、それぞれの意識・行動によってでも課題は十分解決できるのではないかと締めくくりました。
▼インクルーシブ・マーケティング=ごちゃ混ぜ
最後のディスカッションでは、「みんなのダイバーシティ調査」の結果を報告してくださった電通の古平さんが、「注文をまちがえる料理店」の映像が会場に流れたとき、皆さんの表情が一気に和らいでめちゃめちゃ良い笑顔になったことがとても印象的だったと語りました。属性も全く違う人たちがこの日に集まり、同じ映像でみんなが一気に和やかになるというのは、小国さんの言うとおり「混ぜる」ことの良い副産物であり、これこそがインクルーシブ・マーケティングではないかと言います。
さらに、Forbes JAPANの藤吉さんも新しい価値を創り出したり、成功する企業や人には同様の共通点があり、自分たちの持っている得意技をもとにお客さんと一緒に同じゴールを目指す企業は成功する傾向にあるそうです。
最後に、インクルーシブ・マーケティングとは、ごちゃ混ぜになるということだと田中さんは締めくくります。しかし、今の時代デジタル・コミュニケーションとかSNSなどと言いつつ、実際にはSNS上でおススメされるのは似たような人やモノで、まずまず偏狭な世界に閉じこもる傾向になっていて「ごちゃ混ざらない」時代になっているのかも知れない。
だからこそこれからは、ごちゃ混ぜ力を高める「インクルーシブ・マーケティング」がますます必要なのだと。
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