六本木ヒルズライブラリー

【アペリティフ・ブックトーク 第48回】
いにしえの物語〜この国は、いかに成り立しか (19:15~20:45)

【スピーカー】澁川 雅俊 (ライブラリーフェロー)

ブックトーク

【ライブラリーメンバー・一般対象】事前のお申込みは不要です。当日会場へお越しください。
※ライブラリーメンバー以外の方もビジターチケット3,000円(税別)にて、ご参加いただけます。
【会 場】アカデミーヒルズ (六本木ヒルズ森タワー49階)

日時

2019年07月26日 (金)  19:15~20:45
終了しています

内容




今回のブックトークでは古代史小説を読んで、この国の成立ちに想いを馳せてみようと思っています。なにせ小説は事実を素に虚構の世界を描き、愉しませながら事実を映し出しているからです。

古代史小説は歴史小説です。歴史小説は、史上実在、あるいは実在したと推測される人物を中心に書かれた創作です。それに対して時代小説と呼ばれるジャンルの作品があります。それは、時代が特定されているにしても、あるいは実在した人物名が主人公の名前に付けられているにしても、史実とは全く関係ないか、あるいはかけ離れた物語として書かれた作品群のことです。しかしこれも人間とその社会の真実を描き出そうとしています。その境界は曖昧ですが、例を挙げれば、明瞭でしょう。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』は歴史小説、池波正太郎の『鬼平犯科帖』は時代小説です。

古代史小説は、およそ75年前から盛んに書かれるようになりました。その理由は、ここではおよそ40点を紹介しますが、そのテーマを調べてみると幾つかの事象に絞られます。

まず国の治世は天皇が中心でしたから、個々の天皇が題材となっている小説が少なからずあります。とりわけ女帝は格好のテーマとなっています。天皇の権力は強大でした。したがって皇位継承は、天皇家のみならず天皇に連なって権勢を得ようとする人物やその一族の最大の関心事でした。権勢を得ようとする人物や一族が多ければ多いほど軋轢が増し、俗に「乱」とか「変」が起ります。そうした事変も多く描かれています。

また一つにまとまった国家であっても、その国が独立独歩で発展することはあり得ません。地政学的な他国との関係、とりわけ朝鮮と中国の関係がしばしば題材となっています。しかしそれらの題材に個々に焦点が当てられているわけではなく、多くの場合、すべてが陰に陽に絡み合って物語が描かれています。
 


▼ 澁川 雅俊 (ライブラリーフェロー) プロフィール


参考図書

古事記の謎をひもとく

谷口雅博
弘文堂

邪馬台戦記〈1〉闇の牛王

東郷隆 : 佐竹美保
静山社

平城京

安部龍太郎
KADOKAWA


火定

澤田瞳子
PHP研究所

白村江

荒山徹
PHP研究所

朱鳥の陵

坂東真砂子
集英社