六本木ヒルズライブラリー
ライブラリアンの書評 2016年11月
毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?
『ヒア』
リチャード・マグワイア【著】
誰も見たことの無いような、読んだことの無いような本。
今回ご紹介するのは、アートブック? グラフィックノベル? それとも哲学書? と、誰も出合ったことの無いような、一風変わった一冊です。
ページをめくるとなんの変哲もない一室の部屋。そこには暖炉があり、ソファがあり、窓がある。ページの左肩には「2014」と数字が書かれてあり、どうやらそれは2014年のその部屋の様子らしい。もしかするとそこは、私たちが今いる部屋かもしれない、そんな風にも思えるような、こざっぱりとした空間。
そして、ページをめくると…。
「2014」の数字がめくるめく変化し、どうやら同じ場所の違う年代を表している模様。その場にいる人が喋ったり、笑ったり、泣いたり。なんら特別ではない日常風景が連なります。
なのですが、関連する場面、あるいは無造作に連なるカオスな状況が、今まで味わったことも読んだこともないような読書体験に導いてくれます。記憶のかけら、誰かの声、空間が覚えているひとつひとつの出来事が、見たことのない視覚表現で描かれ、地球の原始から、はるか未来までを見通す空間のまなざしに、遠いところまで連れていかれるようです。
まずはライブラリーの書棚で手にお取りください。
そしてぜひ、あなた自身の体験に重ね合わせて、感じてもらいたい一冊です。
(ライブラリアン:結縄 久俊)
ヒア
リチャード・マグワイア,大久保譲国書刊行会
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