六本木ヒルズライブラリー

ライブラリアンの書評    2016年9月

毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?

『となりのイスラム~世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』
 内藤 正典【著】



ライブラリーの書棚は、私たちが生きる現代「まさに今」を知り、そして来たる「これから」を知るにふさわしい、まるで羅針盤のようです。棚を眺めていればおのずと、窓外に広がる海原めいた東京のパノラマに向かうための符号、時代を読み解くキーワードが浮かんできます。

少し前から書棚に増えてきたキーワードは「イスラム」について。これからの時代「イスラム」を知ることは、他の多くの知を得ることと並んで重要なことに思われます。



「イスラム」というと、どのようなイメージを持つでしょうか。世界中で起こっているテロの問題、それに伴う難民の問題が思い浮かび、できればかかわりたくない、と思うかもしれません。ただ2016年の現在、世界人口の四分の一にあたる15、6億人、いわば4人に1人がイスラム教徒であり、近い将来、3人に1人がイスラム教徒になる、ともいわれています。すなわち「かかわらざるを得ない未来」が来る可能性は大なのです。

本書はそんなイスラム世界についての知識を得るのに最適な一冊。イスラムってつまり、どういうこと? どういう人たちなの? という疑問への理解が深まります。西欧社会とは根本から違う、相容れない世界観を持つイスラム世界とは? 私たちの価値観と何が共通し、何が根底から異なるのか? ますます多様化が進んでいくこれからの時代だからこそ、知っておきたいことばかりです。



長年イスラム社会の歴史を研究してきた著者が、自身のイスラム的経験を踏まえての肉声で送る本書。暴力によってこれ以上の人命が奪われる負の連鎖を断ち切るために、私たちができることとは?

そのためにはまず知識を得て、先入観で判断することはせず、きちんと理解したうえでお互いを認め合うこと。新しい時代に踏み出していくための一歩として、今知っておきたい「イスラム」の扉を開けてみましょう。

(ライブラリアン:結縄 久俊)


となりのイスラム—世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代

内藤正典
ミシマ社