六本木ヒルズライブラリー

ライブラリアンの書評    2015年9月

毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?

沢山のモノたちとのお付き合い、うまくいっていますか?

私たちは普段、沢山のモノに囲まれて生活をしています。そんなモノたちとの付き合い方を改めて考えてみようとするタイトルが、このところの本のトレンドです。

その言葉も一般的となった『ようこそ断捨離へ』が発刊されたのが、2009年。昨年英訳され、世界でもベストセラーとなった『人生がときめく片づけの魔法』が、2010年。その頃からより身近になった、「モノを捨てる」「モノとの付き合い方を改めて考えてみる」という風潮は、今なお様々な切り口でのタイトルが発刊されていることから、より多様になり、かつ求められていることがわかります。

いずれの書籍にも共通しているのは、「その先にある幸福」を得ようとする気概です。溢れかえるモノに囲まれて生きてきた著者たちの世代にとって、本当に大切なものとは何なのか、という問い。そのひとつの答えとしての「モノを減らそう」とする意識には、時代が変わりつつある中、豊かさの定義・価値自体の変化を見ることができます。

モノとの付き合い方を改めて考える3冊

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』
元々は沢山のモノに囲まれて生活をしていた著者が、モノを捨て、減らしていくことで、なぜモノが増えるのか、どうやって捨てていけばよいのかについて、改めて考えていきます。
『断捨離』『人生がときめく~』から更に発展した「ミニマリスト」についてが語られ、本書で著者は、「幸福は<なる>のではなく<感じる>こと」である、という思いを獲得します。

『必要十分生活』
日常生活を快適に過ごすために必要なモノは、実際は限られている、とします。モノに縛られないことで、自分にとって本当に大切なものに向き合う余裕を持つことを説きます。必ずしも多くを捨てることを推奨してはおらず、本書はあくまで道標であり、個々人の一番の快適を探してみる良い機会になるでしょう。

『減らす技術』
初版は2009年。近日改めての新装版として発刊されました。身の周りの様々を制限し、シンプルにすることで、本当に辿りつきたい場所、本質に至るための技術を得ることができる、とします。「集中」「習慣化」「小さく始めること」の大切さが身に沁みます。

「足るを知る」の獲得

私たちが何かを購入したり、手に入れたりするのは、もちろんそのモノが欲しいからなのですが、その先にあるのは、そのモノを通して得られる満足や喜びです。自覚的にモノと付き合うこと=自分の欲望ときちんと向き合うことを、いずれの書籍も述べており、丁度良いところを知る、すなわち「足るを知る」精神の獲得が、モノが溢れる時代に、自らを失わずに生きていく心得であるのかも知れません。
(ライブラリアン:結縄 久俊)


ぼくたちに、もうモノは必要ない。

佐々木典士
ワニブックス

必要十分生活

たっく
大和書房

減らす技術 新装版

レオ・バボータ
ディスカヴァ−・トゥエンティワン

ようこそ断捨離へ モノ・コト・ヒト、そして心の片づけ術

やましたひでこ
宝島社

人生がときめく片づけの魔法

人生がときめく片づけの魔法

近藤麻理恵
サンマーク出版

持たない幸福論

pha
幻冬舎

服を買うなら、捨てなさい

地曳いく子
宝島社

LIFE PACKING—未来を生きるためのモノと知恵

高城剛
晋遊舎