六本木ヒルズライブラリー
ライブラリアンの書評 2015年4月
毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?
あなたの「つづける」は何?
『シェフを「つづける」ということ』
井川直子【著】ミシマ社【出版】
ライブラリーでは常に、様々な「働き方」に関しての本が目に留まります。ノマドワークやコワーキングといった、場所を選ばない働き方。ワークライフバランス、クラウドソーシングといった、数年前までは耳にしなかったワード。さらには「かつてのヨーロッパではこんな職業がありました」といった、歴史の視点からのキャリア自体を見つめてみる本。「働き方が変わりつつある」といわれる現代だからこそのタイトルがよく読まれています。
そんな中、ひとつの職業を「つづける」ことにフォーカスした切り口が新鮮です。タイトルは『シェフを「つづける」ということ』。
本書は著者がかつて取材した、イタリアの地で修業をしたシェフたちの、その後の姿です。変遷軌跡は十人十色、道のりは平坦ではなく、紆余曲折を経ての今。ただ共通しているのは、懸命にその道を突き進み、「つづけて」きたからこその言葉の重み、確かさです。語られる言葉自体がシェフその人の人生の在り方そのもの。
「つづける」ということがどれだけの力になるか。それはつづけてみて初めて、形となって現れます。それまではわかりません。登場するシェフたちはその途上/過程に居り、未だ終わりではなく、まだまだ目指す先があります。
少なからず私たちも生きるために何かしらをつづけています(きっと)。シェフとは現場が違えども、改めて自分自身の「つづける」を見つめてみる。あまりにも当たり前になっていることを、今一度新鮮な思いで振り返ってみる。本書はそのきっかけを与えてくれます。
読み進めるほどに、自分自身の「つづけて」きたことと、シェフたちの確かな言葉が響き合うはずです。昨日今日明日だけではない、数年前、今、数年先の長いスパンの視点を得ることで、初心に立ち返り、すっと背筋が伸びる読書です。
合わせて読んだのは
『調理場という戦場 ~「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』
斉須政雄【著】幻冬舎【出版】
たまたま六本木の書店で『シェフを「つづける」ということ』の発刊記念フェアをやっており、登場したシェフ15人がお薦めする本が陳列されていました。
そのうちの5人が推薦していたのが本書。
「作り手の感謝のエッセンスが料理」「まわりに自分がプレゼントできるものを与えてからが仕事」など、料理人だけに留まらない、至言が随所に光ります。
そのうちの5人が推薦していたのが本書。
「作り手の感謝のエッセンスが料理」「まわりに自分がプレゼントできるものを与えてからが仕事」など、料理人だけに留まらない、至言が随所に光ります。
(ライブラリアン:結縄 久俊)
シェフを「つづける」ということ
井川直子ミシマ社
調理場という戦場—「コート・ドール」斉須政雄の仕事論
斉須政雄幻冬舎
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