六本木ヒルズライブラリー

今読むべき最新書籍12冊 -2016年3月-

「個人が力を伸ばしていくための本」、「センスの良さと知性を兼ね備えた本」が続々と入荷している六本木ライブラリー。今月届いた本は何?

新着本からお薦め書籍をご紹介します。



1,500億円もの利益操作を7年間も行っていたにもかかわらず、なぜか「粉飾決算」という言葉が使われず、「不適切会計」とメディアによって報じられてきた東芝。

え、あの日本を代表する優良企業の東芝が?! と、当初多くの人が抱いた驚きは、次々と発覚する事実によって、「日本企業ならどこにでもある話かも」という諦めに変わっていったような気がします。

企業の経理部門が、トップの意向に沿って利益を書き換える。それを不正であると見抜ける監査・ガバナンスや社内の風通しの良さがあれば、少しは状況も違っただろうと説く本書。
メディアや司法でさえ、「空気」によって結論を変える日本の中で、最後の拠り所は数字だったりするのかもしれません。





そのような不正や、組織の間違いが起きる大きな原因の一つは、人が自分の専門分野に閉じこもり、ヨコの繋がりがないこと。これを「サイロ」と呼び、多くの事例を引いて危険性を訴えるのは、文化人類学者としてタジキスタンの寒村に3年間住み込んで研究を行っていたという、FTアメリカの編集長。

監査と同様に、文化人類学者のような他者の目線で組織の慣習を見直すことで、サイロ化は防止できると呼びかけます。

その例として挙げられるのが、ソニーやマイクロソフトを"悪い見本"として掲げ、サイロを排除しようとしたフェイスブック。そのフェイスブックさえ、「IT産業という巨大な社会的サイロ」となる可能性を指摘します。



自分の"思い込み"がどれだけ強いのかは、自分自身ではわかりません。たとえば、「いじめを苦にして自殺した少年の母親が、学校側を訴えた。」というニュースの見出しだけを見れば、ああ、またか、と詳しく本文を読むこともないかもしれません。

しかし実際には、自分の想像を超えた、全く異なる事実が存在したとしたら…?

「母親なら自分の子どもを愛するはず。」という通念が、いつも正しいとは限りません。地域社会の中で、いろいろな人が懸念を持っていながら、連携して問題を解決するには至らなかったのはなぜか。悲劇の後、話が全く違う方向へ進んでいったのはなぜか。

そんな疑問も、少年の心の痛みを思うと何も考えられなくなってしまいます。



(ライブラリーアドバイザー:小林 麻実


粉飾決算

浜田康
日本経済新聞出

サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠

ジリアン・テット : 土方奈美
文藝春秋

モンスターマザー長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い

福田ますみ
新潮社

五色の虹—満州建国大学卒業生たちの戦後

三浦英之
集英社

ターゲット—ゴディバはなぜ売上2倍を5年間で達成したのか?

ジェローム・シュシャン
高橋書店

3.11 震災は日本を変えたのか

サミュエルズ,リチャード・J.【著】プレシ南日子,廣内かおり,藤井良江【訳】
英治出版

進め!!東大ブラック企業探偵団

大熊将八
講談社

電通マン36人に教わった36通りの「鬼」気くばり

ホイチョイ・プロダクション
講談社

世界のエリートが学んでいる教養としての日本哲学

小川仁志
PHPエディターズ・グループ

陽気なお葬式

リュドミラ・ウリツカヤ : 奈倉有里
新潮社

社外プレゼンの資料作成術

前田鎌利
ダイヤモンド社

エンゲージド・リーダー  デジタル変革期の「戦略的につながる」技術

シャーリーン・リー : 山本真司
英治出版