六本木ヒルズライブラリー

ライブラリアンの書評    2022年9月

毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?




病院に行くのは自身の、あるいは身近な人の調子が悪くなるから行く。そんな時は早くの回復を願っており、応対してくれるスタッフの方や看護師さん、医師の方が、どういった経緯で医療に携わることになったのか、普段はどんな生活をしているのか、ということはあまり考えない。

そうか、医療の現場、知っているようでほとんど知らない。医療現場とは、具体的にはどのようなところなのか。日々どのようなことが起こっているのか。医師の方たちが、どのような経緯で医師になったのか。

現代医療は過去に比べ、診断と治療の効率化を目指した結果、徹底的に分業化され、高度に専門化されている。内科や外科、それらもさらに細分化され、35個もの専門性に分かれている。オーケストラが個々の楽器を極めた演奏者の集合体であるように、医療の現場もそれぞれの診療科を専門とする医師が、患者の診断・治療にあたっている。

素人として疑問に思うことも、本書を読めばなるほど納得がいく。1時間待って診療は5分だけの理由、医師不足はなぜ解消されないのか、医師の恋愛や結婚、年収のあれこれ、等々...。

医療現場を目指す人に向けられた本書ではあるが、読めば次に病院に行くときの心持ちが変わる。医療の現場で働く人たちへの敬意が増すとともに、その姿がより鮮明に映るだろう。

(ライブラリアン:結縄 久俊)
 
 
アカデミーヒルズのポッドキャストでも
ご紹介しています。



 

ほんとうの医療現場の話をしよう 医学部を目指す君たちへ

高須賀とき
晶文社