六本木ヒルズライブラリー

ライブラリアンの書評    2022年7月

毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?




「映画を早送りで観る」なんて。
けど、観ちゃダメ、ってこともない。それは観る側の自由。
こんな問いにはどう答える?「映画を早送りで観て、なんで悪いの?」

サブスクや動画視聴サービスには、視聴速度を1.5倍や2倍速で観る機能が備わっていて、最初は違和感があったが、すっかり慣れてしまった。さすがに映画を倍速で観ることはないが、情報を知りたいだけのコンテンツは倍速で観る。あれ、映画との違いはなんだろう?

対象が「作品」なのか「コンテンツ」なのか。「鑑賞」なのか「消費」なのか。「作品」なら早送りしてはダメで、「コンテンツ」なら早送りして良い。なんていう線引きは、無い。それは視聴者側が決めること。映画だって、大きな言葉で括るならば「コンテンツ」であるだろう。

情報があふれる世界で、コスパもタイパ(タイムパフォーマンス)も良いものに、できるだけ多く触れたい、知りたい、消費したい。時間はあまり無いけれど、次々やってくる新作を知っておけば、話題にも事欠かない。

わかってはいるけれど、でも、そのままで良いのだろうか? 便利の追求の向こうには、より多くを消費すると同時に、消費される自分がいたりはしないだろうか。「早送り」することは、翻って「早送りされる」ことにはならないだろうか。あるいは時代の速度が、すでに「早送り」なのか。

(ライブラリアン:結縄 久俊)
 
 
 アカデミーヒルズのポッドキャストでも
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映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ——コンテンツ消費の現在形

稲田豊史
光文社