六本木ヒルズライブラリー
ライブラリアンの書評 2018年6月
毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?
「我々は孤独だが、一人ではない」
現代はSNSを通して、会ったことのない人ともつながることができ、言いたいこともネット上で発言ができます。だからといって、本当に便利で幸福な世の中になった…とは必ずしも言い難く、むしろ孤独感が増しているのではなかろうか?という問いを出発点に、たくさんの人に囲まれながらも感じる「lonely」、ではどうすれば「not alone」になれるのかを問う、ちょっと不思議なタイトルの本書。現代における「コミュニティのあり方」を考えます。
私たちは普段、地域・会社・社会といった、何かしらのコミュニティに属しています。そしてそもそもコミュニティとは、インターネットがある以前から当たり前にありました。それがネット社会の到来により、「なにかをしたい」と思えば、新たにゼロからコミュニティを立ち上げることが容易になりました。今では多くの人がその方法を模索し、実践しています。
例として、著者が編集者として携わった『宇宙に命はあるのか』(小野雅裕【著】)の制作過程が、本書の中で紹介されています。SNSを駆使してファンを募り、意見交換を交わし、著者・編集者・ファンを巻き込んで共に本を作り上げるという、本来のスタイルとは異なった方法。結果『宇宙に命はあるのか』はファンを通して広まり、リアル書店にも盛り上がりが伝播して、多くの人に読まれるようになりました。
“誰も仕事として参加していなかった。みんなが楽しいから、やりたいからやった。それ以上でもそれ以下でもない。自分ができる範囲で、自分ごととして参加する。その仕組みを用意することが重要なのだ。”-P102より
「やりたいことをやろう」という風潮はすでに到来し、はじめる人ははじめています。今あるものの良さを引き継ぎ、対応できず古くなったものは捨て、アップデートする。最適解を求めて素早く行動し、より現代にフィットする方法を模索する。
そんな姿勢がより必要になるだろうと読後に痛感すると同時に、では自分自身が属するコミュニティはどうだろう? という問いにもつながりました。問いのはじまりは「lonely」ですが、その先の広がりは「not alone」であるのかと。
(ライブラリアン:結縄 久俊)
WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.
佐渡島庸平幻冬舎
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