六本木ヒルズライブラリー
ライブラリアンの書評 2018年1月
毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?
幼いときから身近にあり、今まで幾度も口にしてきたであろう「りんご」という果物。今も時折食べるその味に、手にした重みに、赤色まとったその姿に、特に違和感はありません。けれども仮に、「本当にりんごのことをわかっている?」と聞かれたら、意外と知らないことに気づきませんか? わかっているつもりでいながら、改めて思えば、きちんと「りんご」と向き合ったことってないかもしれないぞ、と。
著者は大学の授業で学生に、デザインの基礎を教えるモチーフとして「りんご」を選びました。「りんご」という果実を中心に据え、「学び方のデザイン/デザインの学び方」を、あらゆる視点から観察し、深い洞察でアプローチ。「考えること・作ること・伝えること・そして学ぶとは」という大きな問いに挑む過程が、多様に展開されます。
たとえば、りんごを「色」で考える。手にとってよーく見てみると、実にたくさんの色が潜んでいることに気づきます。りんご一個一個によって違い、赤といってもいろいろな赤があり、黄色や緑も含まれている。それは深い観察によってもたらされます。
りんごの表面積を計るには? りんごの皮をむき、細かく切って並べてみれば、面積はわかります。あれ、細かく切った赤い皮はバラみたいに見えた、と思ったら、りんごは「バラ科リンゴ属」だったということを知って「そうだったのか!」と、思いがけない気づきに出合うこともあるでしょう。
本書を通して、シンプルな「りんご」というものの奥深さに気づくと同時に、日々においても応用できる、物事へのアプローチの方法を学んでいくことができます。
物を知ること=学び方のデザインが、りんごというモチーフを通してダイナミックに広がる感触。それはすなわち、シンプルな「知る喜び」です。
そういえば、りんごをうたったこんな詩もありました。
りんご / 山村暮鳥
両手をどんなに
大きく大きく
ひろげても
かかへきれないこの気持ち
林檎が一つ
日あたりにころがつてゐる
(ライブラリアン:結縄 久俊)
APPLE:Learning to Design,Designing to Learn—りんご 学び方のデザイン デザインの学び方
三木健CCCメディアハウス
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