六本木ヒルズライブラリー
ライブラリアンの書評 2017年10月
毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?
ライブラリーの書棚を眺めていると、自然と見えてくる「今」。
最近目につくタイトルは「AI(人工知能)」「独学」、そして「働き方改革」に関するもの。
AI(人工知能)はもはやトレンドではなく、時代を動かす大きな潮流です。いずれの書籍にも大なり小なり、AIによる時代の変化が描かれ反映されており、スマホが世界を席巻したように、その流れに抗うことは難しそうです。
独学についていえば、そんな速い流れの中においての学びは、与えられるのではなく、自ら切り拓いていくことが大切です。試験や資格取得のためもしかりですが、それ以上に「哲学」や「歴史」といった、AI時代が到来するからこその「美意識」「行動指針」を確かなものにするための学びが必要なのかなと。
そして働き方改革。労働時間の短縮はもちろん、関連しての「生産性の向上」も目につきます。社会的な視点というマクロから、個々人の仕事の進め方というミクロまで、変化は確実に訪れています。今までのやり方に固執することなく、よりよい方向を目指してゆきたいところです。
今回ご紹介するのは『人生100年時代の新しい働き方』。
「人生100年時代」も、ここ最近よく耳にすることです。
医療技術の発展よって長寿化が進み、どうやら100歳まで生きることは想像に難くなく、となると「60歳で定年、その後は引退生活」というのはすでに過去の話、80歳90歳まで働くことが必要となってきます。
それはつまり、自らが新しい働き方を、自らの手で作っていく必要があるということです。
そのためにはどうすれば?という問いに対し、本書は「五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)」を軸に、その五感をより拡張してパフォーマンスを高める、という提案をしています。
たとえば「視覚」であれば、
「見渡す(Foresight)…常識にとらわれない広い視野を持つ」
「見抜く(Insight)…物事の本質を見抜く」
「眺める(Viewing)…ありのまま観察する」
と分類し、「みる」ことそれ自体を拡張します。
なるほどその意識で物事を見れば、同じ問題であっても新たな視点で新たな気づき、ブレイクスルーが訪れることもあるでしょう。
-VR(ヴァーチャル・リアリティ)、AR(拡張現実)などは、人間の能力を拡張するもの。
五感の拡張は、そこにもつながるような気がします。
本書の表紙にある「LIFE SHIFTER」というワード。
それは人生という長い旅路を、自らの五感でもって切り拓いていく旅人のごとくです。
自分の人生とは他の誰が生きているわけでもなく、自分という人が生きている。
現状にぶらさがったりしがみつくのではなく、むしろ軽やかにダンス、雲間ひらけて未知なる場所へと踊り出でわくわくしようと、著者自身が自ら切り拓いてきた新しい働き方に、学ぶべきところが多くある一冊です。
(ライブラリアン:結縄 久俊)
人生100年時代の新しい働き方
小暮真久ダイヤモンド社
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