六本木ヒルズライブラリー
ライブラリアンの書評 2017年3月
毎日続々と新刊書籍を入荷するライブラリー。その数は月に200~300冊。
その書籍を司るライブラリアンが、「まさに今」気になる本は何?
ゆるやかに、今いる場所を見つめる
最近の書棚で目につくワードが「集中」です。
厚生労働省が中心となって主導する「働き方改革」により、労働時間を見直すとともに、限られた時間でより大きな成果を出すための「生産性の向上」が求められています。生産性向上に至る、より集中する方法は?という問いがあるためでしょう。
本書は数ある関連書籍の中でも、独自の切り口で「集中」にアプローチしています。
多くの本が足し算的に、あるいは体育会系的に「力強い集中」を謳う中、本書は引き算的に、よりゆるやかに「今いる場所を見つめる」のです。
「身の周りの音」に耳を澄ます
静かだと思ってみても、耳を澄ませれば、どこかで音は鳴っています。
ふだんは気付かないような、やり過ごしてしまうような、ささいな音たちが。
耳を澄ませて周囲で起きていることがわかるようになると、自分がどれだけ周りの音に気付いていないのか、ということに驚きます。
そして耳を澄ませるためには、心を静めねばなりません。
その心の平穏は、慌ただしい生活において忘れがちな「心の在り方」を呼び起こしてくれます。
「別の空間」に入ることを意識する
私たちは朝目が覚めてから、夜眠るまで、さまざまな空間を移動しています。
「ある空間」から「ある空間」に移動すると、温度や光の具合、空気の質感の違いがあるはずです。
たとえば職場の扉を開く時にある緊張感、あるいは家の扉を開ける際のリラックス。
試しに、次の空間に入るたびに気持ちを新たにしてみます。
空間が自分にどのような影響を及ぼしているのか、繊細に感じてみます。
空間に意識を向けることで、「今いる場所」が、いつもとは違ったふうに感じられます。
「いらだつ心」を意識する
日々の生活において、つい「イラッ」としてしまうこと、ありますよね。
そのとき、「なぜ自分はイラッとしたのか?」と、自身に問いかけてみましょう。
注意深く耳を傾け、その原因に意識を向けてみる。
先に予想されることに心が向いていて、思い通りに現実がともなわないことに「イラッ」としたのではなかろうか。
そんな時は、「そんなに急ぐ必要がある?」と問い直してみます。
他にも数多くの、日々を見つめ直すヒントが紹介されています。
肩の力を抜き、ひとつひとつを丁寧に実践することで、「今、ここ」に気づくこと。
ゆるやかにしなやかに、新たな視点から「日々への集中」を感じることができる一冊です。
(ライブラリアン:結縄 久俊)
「今、ここ」に意識を集中する練習
ジャン・チョーズン・ベイズ : 高橋由紀子日本実業出版社
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