オピニオン・記事

いま、環境の何が問題なのか

環境問題を取り巻く世界の動向と、問題の本質を捉える

更新日 : 2009年10月05日 (月)

第8章 国際社会で求められる日本という国の意思決定

竹中平蔵氏 アカデミーヒルズ理事長


竹中平蔵: 環境の問題というと、ほとんどの人が「総論大賛成。でも各論になると、よくわからない」と言います。政府は何が必要で、企業は何が必要で、個人は何が必要か、私たちの生活をどう見直すことが必要か、そのいくつかのヒント、トリガーとなるものを挙げて、ぜひ実感に結びつくようにしていただきたいと思います。

小島敏郎: 政府なり政治がやることというのは、将来の方向性を明確に示すことだと思います。例えば、石油や石炭、ガスに頼らない、という方向性を出す。次に、ブレークダウンした目標を出していかなければいけないですね。

日本では、「温暖化対策はなかなか難しい、できませんよ」とよく言われるのですが、外国から見たら、例えば「建物の断熱規制はどうしてしないんだ?“建物からのCO2が増えている”なんて当たり前じゃないか。どうしてやるべきことをやらないんだ」ということです。バイオエタノールも「やろうと思えばできるじゃないか、どうしてやっていないんだ」ということです。

国の中のコンセンサスがとれないから、という理由は簡単なんですが、一番大きな障壁は制度的なもので、技術の障壁ではないと思うのです。制度的な障壁と実際の慣行です。新しい技術を持った会社がマーケットに新規参入しようとしても、流通が押さえられてしまっているので、新技術がなかなか広がらないというケースがある、これは事実上の障壁です。

竹中平蔵: 日本は世界に対して重要な役割を果たす立場にあります。経済産業省が数字を出していますが、同じGDPを生み出すのに排出する一定のCO2の量は、日本は海外と比較してもエネルギー効率の高さを反映して、非常に低い(※編注:経済産業省「エネルギー効率の国際比較」平成19年4月17日発表)。

世界中の国が日本と同じようなエネルギー効率を達成したら、今の世界のGDPを生み出すのに排出するCO2の量はかなり減少します。日本が本気にならないと、恐らく地球環境問題は解決しないとさえ思います。

会場からの質問:日本は、ルールづくりが下手なのではないかと思います。世界のルールづくりに、民間主導で参加していく態勢をつくれないものでしょうか?

竹中平蔵氏 アカデミーヒルズ理事長
竹中平蔵氏 アカデミーヒルズ理事長
小島敏郎: 国内のルールをつくるときに、政府は審議会の意見を聞きます。審議会には民間の事業者も入っています。審議会はコンセンサス方式ですから、少しずつ変わるということには適しているのですが、既得権益にとらわれず、思い切った転換をするための国内のルールづくりは、私は選挙が適していると思います。選挙という平和的なイベントの中で変える、というのがいいのではないでしょうか。

それから、日本は、日本の優れた技術を外国に売っていないと思います。例えば、省エネ電球はすごいのに、ヨーロッパでは売っていないのです。日本の技術が世界に普及すれば、何%も削減できます。もちろん、電圧も違いますし、流通慣行も違いますから、日本で優れていても外国で売れるかどうかは、大きなリスクがあります。問題は、意思なんです。リスクを冒して売りに行っていないのだから普及しない、これが現状です。

竹中平蔵: 地球環境の問題は、これからもグローバル・アジェンダの中心課題であり続けると思います。国際社会の中で、それをどういうふうに意思決定、意思形成していくのか。その主体としての日本の意思決定をどのように行うのか。

小島さんが活躍される場所は、ますます広がると思います。日本や世界を引っ張るコンセプトリーダーとして、パブリック・インテレクチュアルとして、ぜひ一層のご活躍を期待したいと思います。今日は、どうもありがとうございました。(終)


該当講座

いま、環境の何が問題なのか
〜大局的な視点から問題の本質を捉える〜
小島敏郎 (地球環境戦略研究機関特別顧問/前環境省地球環境審議官)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/東洋大学教授/慶應義塾大学名誉教授)

小島 敏郎(前環境省地球環境審議官)×竹中 平蔵(アカデミーヒルズ理事長)
地球温暖化問題が注目を集める中で環境関連の情報が氾濫しており、本質が見失われがちな現在、改めて「環境問題」とは何かを小島氏と竹中理事長に議論していただきます。


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