記事・レポート
SFアポカリプス
アポカリプスは黙示録
更新日 : 2008年12月10日
(水)
第1章:「アポカリプス」!?
澁川雅俊: 「アポカリプス」とは聞き慣れない言葉だろうと思います。日本語では「黙示」「黙示録」になります。黙示録ということになれば、フランシス・コッポラの映画『地獄の黙示録』や2年ほど前(2006年)に六本木ヒルズで起こった株事件を暴いた最近の本、『ヒルズ黙示録』(大鹿靖明著、2008年朝日新聞社刊)などを思い出される方がいらっしゃるかもしれません。
しかし黙示とは元来キリスト教の用語で、初期のキリスト教において、神が普通の人々には知らせない、知らせていけない真理や神の意志を特定の人に暗黙のうちに啓示すること、とされています。つまりそれは、人間の常識の範囲をはるかに超えたところにあり、……
人間の日常の経験からは疎遠なことであり、また人類史のなかにいまだ起こっていないようなはるか未来の出来事なので、ことさら選ばれた人たち、例えば予言者や聖人に暗黙の内に教示するような内容をもつことのようです。そしてそれについて記された書物、あるいは文書が黙示録です。
なにやらわが国の慣用句「世も末だ」の元となっている「末法思想」(まっぽうしそう)にちょっと似ていますね。それはお釈迦様の教えが始まって一万年後を末法といい、釈迦の教えが及ばなくなって、仏法が正しく行なわれなくなるという終末史観です。
しかし黙示とは元来キリスト教の用語で、初期のキリスト教において、神が普通の人々には知らせない、知らせていけない真理や神の意志を特定の人に暗黙のうちに啓示すること、とされています。つまりそれは、人間の常識の範囲をはるかに超えたところにあり、……
人間の日常の経験からは疎遠なことであり、また人類史のなかにいまだ起こっていないようなはるか未来の出来事なので、ことさら選ばれた人たち、例えば予言者や聖人に暗黙の内に教示するような内容をもつことのようです。そしてそれについて記された書物、あるいは文書が黙示録です。
なにやらわが国の慣用句「世も末だ」の元となっている「末法思想」(まっぽうしそう)にちょっと似ていますね。それはお釈迦様の教えが始まって一万年後を末法といい、釈迦の教えが及ばなくなって、仏法が正しく行なわれなくなるという終末史観です。
●ヨハネの黙示録
キリスト教には、この世の終わりに善と悪の最終戦争が行われ、その後また新しい世界が開けるとする未来観があり、そのことが新約聖書に収められている「ヨハネの黙示録」に書かれています。
『「黙示録」を読みとく』(森秀樹著、1999年講談社刊)はその解説書なのですが、ユダヤ民族流浪の歴史をたどりながら、「終末」、「メシア」、「千年王国」という3つのキーワードでそのキリスト史観を解説しています。簡単にいえばこういうことです。終末とは人間とこの世界の終焉であり、そのとき民衆を救済するメシア(救世主キリスト)が再臨し、その下で千年の平穏な世界が続く。しかしその千年王国の終わりに再び末期的状況(善と悪の最終戦争)に陥る。その時キリストの最後の審判を受けて、人びとは永遠の平穏を獲得する。
なお少々古い本ですが、講談社選書メチエ『千年王国を夢みた革命』(岩井淳著、1995年刊)と『天国と地獄—キリスト教からよむ世界の終焉』(神原正明著、2000年刊)がありますが、前者は、キリスト昇天後千六百年の時を経て新旧イングランドに千年王国がよみがえりピューリタン革命を推し進めたと主張し、その思想的背景としてヨハネの黙示録の意義を語っています。
後者は、ミケランジェロの「最後の審判図」など、大聖堂や礼拝堂の天井画や祭壇画の彫刻に描かれる終末の風景を通じ、西欧人はなぜ世界の終焉に魅せられるのかを読み解いています。
後者は、ミケランジェロの「最後の審判図」など、大聖堂や礼拝堂の天井画や祭壇画の彫刻に描かれる終末の風景を通じ、西欧人はなぜ世界の終焉に魅せられるのかを読み解いています。
※このレポートは、2008年10月9日に六本木ライブラリーで開催したカフェブレイク・ブックトーク「SFアポカリプス」を元に作成したものです。
※書籍情報は、株式会社紀伊国屋書店の書籍データからの転載です。
※六本木ライブラリーでは蔵書を販売しているため、ご紹介している本がない場合もあります。あらかじめご了承ください。
SFアポカリプス インデックス
-
第1章:「アポカリプス」!?
2008年12月10日 (水)
-
第2章:ノストラダムス現象への展開
2008年12月10日 (水)
-
第3章:サイエンス・フィクション
2009年02月06日 (金)
-
第4章:『宇宙戦争』はSFアポカリプスのはしり
2009年03月02日 (月)
-
第5章:わが国最初のSFアポカリプスは『日本沈没』
2009年03月09日 (月)
-
第6章:究極のSFアポカリプス、『深海のYrr』
2009年03月16日 (月)
-
第7章:環境破壊を防ぐ"エコ"意識や行動は、CO2削減だけではない
2009年03月23日 (月)
注目の記事
-
04月18日 (木) 更新
【重要】「アカデミーヒルズ」閉館のお知らせ
「アカデミーヒルズ」は、2024年6月30日をもって閉館させていただくこととなりました。これまでのご利用ありがとうございました。閉館までの間....
-
03月26日 (火) 更新
動的書房 ~生物学者・福岡伸一の書棚
目利きの読み手でもある生物学者の福岡伸一による、六本木ヒルズライブラリーのための選書書棚「動的書房」。2024年3月に新たに21冊が並びまし....
-
03月26日 (火) 更新
本には、人生を変え、時代を創るパワーがある!
2023年4月から2024年2月まで全6回で開催したシリーズ「編集者の視点〜時代を共に創る〜」。モデレーターの干場弓子さんと何度も企画会....
シリーズ編集者の視点〜時代を共に創る〜 <編集後記>
現在募集中のイベント
-
開催日 : 05月28日 (火) 19:00~20:30
メタバースは私たちの「学び」に何をもたらす?
いま注目されているメタバースでの学び。メタバースだからこそ得られる創造的な学びとは何でしょうか? バーチャル技術を活用した学びを牽引するN高....
~学びの本質を見つめ、未来を展望する~
-
開催日 : 05月08日 (水) 19:00~20:30
多様な個性が育むナラティブパワー
「⾃分の物語(ナラティブ)」を語り、社会との関係性や「私たち」の目指す世界につなげていくことで、何か問題があっても、人々の共感を得て社会を変....
~人を巻き込み協働するための本質とは?~
-
開催日 : 05月21日 (火) 12:00~12:45 / 05月21日 (火) 19:00~19:45
ゆる~くつながろう!メンバー雑談
テーマなし!年齢制限なし!ライブラリーメンバーなら誰でも参加できる雑談イベントです。肩の力を抜いて楽しく、そしてリラックスした45分を過ごし....