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音楽と物語と生きること

~<音楽と物語で世界をつなぐ>セミナーシリーズは、なぜ生まれたか~

更新日 : 2018年12月18日 (火)

<音楽と物語で世界をつなぐ>セミナーシリーズは、なぜ生まれたか【前編】

2018年度のアカデミーヒルズスクールでは、シリーズ「音楽と物語」を起点に、働き方や生き方、そして不確実なグローバル化の進む世界での指針のあり方を考えるシリーズ<音楽と物語で世界をつなぐ>を開催しています。
「音楽と物語」は太古より、その社会で共有され語り継がれ、進むべき道筋を示してきました。グループや組織も、想い(ストーリー)があってはじめて、同じビジョンに向かって進んでいけるでしょう。このセミナーシリーズが、「どのような想いで創られたのか」ご紹介します。

文:唐木明子(PwCコンサルティング Strategy&パートナー/社団法人アーツ・ファンタジア理事)

気忙しい不安な時代
生産性という言葉がもてはやされている。確かに、不必要にだらだらと仕事をするのは時間の無駄遣いである。その無駄な時間に対して給与や時間外の手当が支払われているとすると、それは個人のみではなく、組織としての無駄となる。
いまは大変に忙しい時代である。確立された大企業のビジネスモデルを揺るがすような新興勢力や、新しいテクノロジーの台頭が著しく、そのスピードが極めて速い。私たちの生活は、20年前、10年前と比較してすら大きく変化している。20年前はまだ職場でもメールは社内のみにとどまることも多かったし、iPhoneが日本に上陸したのは10年前である。子供たちが成人するころには、職業の在り方も生き方も大きく変わると言われている。日本企業も各社こぞって、新しい市場環境への対応に迫られている。今までの仕事に加えて、新しいものへの対応もあるのに、残業なしに帰宅が奨励される。家庭内でも夫婦がそれぞれ柔軟に様々な役割を持ち始めており、素晴らしい動きだが、やることが増えている。
気忙しいだけではなく、日本も世界も大きな変動期の真っただ中にある。社会が分断されていく動きは世界中に広がっている。世界の先行きは暗く、不透明で、不安に満ちたものに思える。
やるべきことが沢山あるのに、絶え間なく入ってくる情報の波に埋もれてやるべきことが分からなくなり、忙しい不安感だけが先行してしまいがちである。

「ぼくもそうしたいけど」王子さまは答えた。「あまり時間がないんだ。友だちを見つけなきゃいけないし、知らなきゃいけないこともたくさんある」
「なつかせたもの、絆を結んだものしか、ほんとうに知ることはできないよ」キツネが言った。
「人間たちはもう時間がなくなりすぎて、ほんとうには、なにも知ることができないでいる。なにもかもできあがった品を、店で買う。でも友達を売っている店なんてないから、人間たちにはもう友だちがいない。」

星の王子さま(新潮文庫) サン=テグジュペリ

生産性の誤解
気忙しい不安な時代に、生産性という言葉が横行するのはわからないではない。やるべきことが沢山あり、時間も頭数も変化ないのであれば、生産性を上げない限りはアウトプットの量は変わらない。
しかし、誤った生産性の追求もよく目にする。誤った生産性とは、目の前の仕事のみに集中した近視眼的な生産性の追求である。短期的な結果のみを求め、ステップをそぎ落としすぎ、定型化しすぎて、その仕事の本来の目的を忘れてしまうことになりかねない。そうなればアウトプットの量は増えても質が落ちてしまう。例えば、店舗で買い物をして、淡々とレジを処理するだけなのか、相手の様子によって声をかけられるかという違いである。誰かと話をしたいときに、顔なじみの店員にさりげなく声を掛けられれば少し気持ちも晴れ、そのような店員のいる店には足を運びたくなる。逆に、ただレジを処理するだけであれば、替えの効く店の一つにすぎない。

また、誤った生産性の追求が行き過ぎると、想定外の事態には対応することができず、組織全体の調和がなくなり、職場自体が無機質でギスギスとした心のないものになってしまう。そもそもの仕事の目的を共有し、理解するゆとりもなくなる。職場の同僚はいても、会話をすることもほとんどなく(生産性のない無駄なものとされるので!)、その同僚がどのような人間なのか、何を大事にしているのかを知ることもできない。そのような組織は、顧客との絆だけではなく、構成員の間の絆や連帯感も弱く、構成員それぞれのリーダーシップも発揮されない作業者の集団となってしまう。
生産性の罠に囚われないためには、「本当のロジカルシンキング」と、「コミュニティの構築」を目指すことが必要だ。



<該当講座>

第1回:2018年7月27日 開催「脳に効く!音楽とストーリー ~モチベーションを上げ、クリエイティブな発想を生む~」
~青砥瑞人 (脳科学者)×平井元喜 (ピアニスト)×
唐木明子 (コンサルタント)~

第2回:2018年12月27日 「音楽とストーリーとリーダーシップ」
~高津尚志 (IMD北東アジア代表)×
春野恵子 (浪曲師)×石山智恵 (キャスター)~

第3回:人の絆・コミュニティに注目した企画にて、2019年に開催予定。

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