記事・レポート

みうらじゅんの物集め紀行

それでも、やっぱり、これが好き♡

更新日 : 2013年11月22日 (金)

第8章 何の得にもならないことが、少しは人の役に立つ

写真:みうらじゅん(イラストレーターなど)

 
「甘えた坊主」シリーズ

みうらじゅん:  これは「甘えた坊主」です。僕が「こいつ、甘えてやがんな」と思った坊主たちの置物です。最初は四国で買いました。派手な服を着て、背中にネズミを乗せ、木魚にもたれてスヤスヤ寝ている。口元に鮮やかな紅をさし、頬もほんのり赤い。修行中の身なのに、どことなく誘っている雰囲気もあります。

最初に見つけた時、みやげ物屋のおばさんにたずねると、「一休さんですよ」と言われました。一休さんにそのような逸話があるなど、聞いたことがない。僕がそう言うと、「いや、昔からそれは一休さんですよ。ここらのみやげ物屋さんは、みんなそう呼んでいます」と言う。本当かなと思いました。後日、山形県に行った時に、同じようなモノを見つけました。店のおじさんにたずねると、「雪舟さん」だと言う。

後日、タイや中国に行ってみると、同じ形態の「甘えた坊主」がたくさん売られていました。「さてはこれ、日本が発祥じゃないな」と、僕は気がつきました。「甘えた坊主」シリーズは東南アジアや中国で発生して、いつの間にか日本に伝来し、一休や雪舟として出回っている。それが分かったのです。分かっても、何の得にもならないですが。

人生とは苦であるけれど

みうらじゅん:  「人生とは苦である」と、お釈迦さまは軽くおっしゃられています。僕自身も、こういうことを一生懸命説明したり、いらないモノを一生懸命集めたりすることが苦であることは理解しています。むしろ、苦行を通じてヒマを埋めている、という感じでしょうか。単に買っているだけでは、ヒマな時間は埋まりません。家に帰ってから、あらためて眺めたり、自問自答したり、人にあげたりすることで、おそらく、1日4時間ぐらいは確実にヒマをつぶすことができています。

僕はあちこちで展覧会も開いています。想像してみてください、ジョン・レノンみたいに。展覧会が終われば、大して思い入れもない大量のいらないモノが、僕の所に戻ってきます。ゾッとしますよね。

みなさんが「今日はなんか、辛かったな」と心が沈んでしまった時は、僕のことを思い出してみてください。きっと、「アイツよりはマシだな」となるはずです。こうしたことがあるからこそ、スーベニール・ゴッドはこの世に生かされているのです。(了)


<気づきポイント>

●「いらないや」と思う前に買ってしまうのが、スーベニール・ゴッドのルール。
●「ムダではないモノとは何なんだ?」と、常に自分に問うてみる。
●物集めは人生における苦行であり、修業である。