オピニオン・記事

鶴田真由 X 高木由利子『記憶の底に眠るもの』

存在の表現を通して、文化を発信する

更新日 : 2013年09月30日 (月)

第7章 西表島で出会った奇跡の瞬間

鶴田真由(女優)

 
アニミズムの神様

鶴田真由: 染織家・石垣昭子さんの撮影は、西表島で行いました。西表島は熱帯地方特有の力強いシダがあちこちに生い茂り、ジャングルのような雰囲気があります。私たちが訪れたときは、ちょうどサガリバナ(※編注)の咲く時期でした。夜のうちに美しい花を咲かせ、日の出と共に花を散らし、水面にはたりと落ちていく。島の方々に「すごくきれいだから、見に行ったら?」と勧められ、何か良いものが撮れればと思い、夜が明ける前に船を出してもらいました。

幻想的なサガリバナの姿は、実に美しいものでした。それ以上に印象的だったのは、サガリバナが浮かぶ水面の先、シダの木々から放たれていた強烈な自然のエネルギーでした。夜明け前の静寂の中、ほの暗い木々の間から、アニミズムの神様が不意に顔を出したような気がしました。あの瞬間、由利子さんは何かに憑かれたように、猛然とシャッターを切っていましたね。

高木由利子: シダが放つダイナミックなパワーが大好きで、いつかは撮りたいと思っていましたが、思いがけず出会ってしまった。光の加減や木々の存在感、すべてが完璧でした。あのときは本当に手が止まりませんでした。

鶴田真由: できあがった写真は、まるでたくさんの神様が楽しげにこちらをのぞいているようでした。おそらく別の日の同じ時間に訪れたとしても、同じ写真は撮れなかった。すべてのことがカチッとはまった貴重な瞬間。立ち会うことができ、とても幸せでした。

高木由利子: ますます、作る側のおもしろさにハマりそうですか?

鶴田真由: そうなりつつあります。以前は何かを作りたいと考えていても、まず何から始めたらいいのか、まったくわかりませんでした。大変ですが、それ以上に楽しく、病みつきになりそうです。

『記憶の底に眠るもの』は現在も続いています。すでに次のロケが始まっています。伊勢神宮を舞台に、そこに祀られている天照大神に奉納する、特別な布を織る神社で取材と撮影を行っています。布を織り始める儀式と実際に織る様子をお伝えしながら、日本の歴史の奥深い場所に眠る“存在”を表現したいと考えています。(了)

※編注
サガリバナ
奄美大島以南に分布し、湿地に自生する常緑高木。初夏から秋の夜間、独特の芳香を漂わせながら白やピンクの花を咲かせ、夜明け前後に一斉に落花する。

<気づきポイント>

●素晴らしい表現者には、共通する「美しい芯」がある。
●自我がなくなった瞬間こそ、目に見えなかった存在が感じられるようになる。
●ビジョンや世界観が定まっていなければ、本当に良いものは生み出せない。


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