オピニオン・記事

安藤忠雄「希望は、自分の心のなかに」

東日本大震災 復興チャリティセミナー

更新日 : 2011年10月14日 (金)

第4章 仕事には実行する責任がある

安藤忠雄氏

「仕事には実行する責任がある。
同様に、ひとりひとりが社会や人と
かかわっていかなければなりません」

「自由に発想し、自ら行動し、最後まで見届ける」という行動理念の原点は、20代の初めに読んだ幸田露伴の『五重塔』にあるという。五重塔が完成して台風がきたとき、現場に駆けつけた主人公ののっそり十兵衛は「もし倒れたら、自分も命を絶とう」と覚悟する。それを読んで「ああ、仕事というものはそういうものか」と得心したという。「仕事には実行する責任がある、自分のかかわったものをどう育てていくか、ずっと考え続けなければいけない」と。 

安藤は、自分が設計した建物、関わったプロジェクトや活動を見守り続けてきた。阪神・淡路大震災の被災地に植樹した花木も、毎土曜日、事務所の所員を水を撒きに行かせた。「これもトレーニング。仕事には責任があることを身体で習得しなければいけない。そうしたことを重ねて、人はだんだん人間のレベルになっていくのです」。

東京湾のお台場のゴミの山を森に変える「海の森」プロジェクトも、今では日比谷公園ほどの大きさの森になった。来年にはその倍に、数年後には明治神宮と同じくらいになるという。「ゴミの山を大きな森に変えたら、世界が日本はなかなかやるな、面白い国だと思うんじゃないか」という発想から生まれたのだ。

大阪の中之島の桜の通り抜けも安藤が勝手に発想し、あちこちに呼びかけて実現した。もともとここには4,000本桜があったが、あと3,000本植えると海までつながる。そこでみんなでやろうと呼びかけた。桜の木が5万円、30年間のメンテナンスが10万円。15万円×3,000本で4億5,000万円。1万円の募金を45,000人集めれば4億5,000万になる。

一番の難関は、国土交通省の管理地、大阪市の管理地、大阪府の管理地にわたっていたことだった。そこで安藤は一計を案じた。当時の小泉純一郎首相に1本目の植樹を頼みに行ったのだ。小泉は「よし、行く」と即断即決した。「国、府、市の境界を越えて、民間が集めたお金で桜を植えるというのは、自分が常日頃言っているとおりだ。だからこれはシンボル事業だ」と植樹にきてくれた。

当時、財務大臣だった「塩爺」こと塩川正十郎も「安藤さん、300人集めたる」と言って、850人から募金を集めてくれた。会食などの際、この話を持ち出して「どうか」と聞く。相手が「いいですね」と言ったとたん、鞄のなかから申し込み用紙が出てくる。塩爺曰く「政治家は信用がないから、自分が言ったことの3倍はやらなあかん」。

安藤は発想したことを実現するため、こうした人々と逢い、口説き、膨大な時間とエネルギーを費やしてきた。そのなかで得たものも多い。安藤は社会と直接かかわることを拒否したコンピュータ世代に向けて熱く語る。「私たちは自分たちの周りのことにかかわりを持ちながら、前へ一歩進まないといけない。人とかかわり、社会とかかわりながら、この国をどうしていくのかを自ら考え、発想し、行動しなければいけないのです」。(終)

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該当講座

アカデミーヒルズ東日本大震災復興チャリティセミナー
安藤忠雄:日本復興を考える 
安藤忠雄 (建築家)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)

3月11日の震災以降、「東日本大震災復興構想会議」の議長代理就任をはじめ、震災遺児を支える「桃・柿育英会 東日本大震災遺児育英資金」を立ち上げるなど、被災者支援に尽力されている建築家・安藤忠雄氏。本セミナーでは、安藤氏が思う“日本再生”のために必要なリーダーシップ、組織について、また各復興プロジェクトの現状について、お話いただきます。


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