オピニオン・記事

東日本大震災・海外報道の舞台裏

なぜ過剰報道は起きたのか

アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際
更新日 : 2011年09月26日 (月)

第7章 専門家を登場させるなら、バックグラウンドを明示すること

アカデミーヒルズセミナー「東日本大震災・海外報道の舞台裏」会場の様子

会場からの質問: 私は原発の技術者だったのですが、原発に多少詳しい人間であれば、当初から想定できたこともあったと思います。ただ、それを政府がどこまで発表できるかというのは全く別の話だと思うのです。

例えば、都内の浄水場で放射性物質が検出されましたが、あのときの状況では増える可能性も当然あったと思います。けれど政府が「これからもっと増えるかもしれません」と発表したら、恐らくひどい混乱が起きたと思います。政府がそれは避けたいと思うのは当然です。個人という立場なら気軽に言えるけれど、政府という立場だと慎重に言わざるをえない。そうした政府の立ち位置を報道側はどう伝えるべきなのでしょうか。

エリック・ジョンストン: これ1つで解決するという方法はないと思いますが、最初からもっと懐疑的に政府や東電を追求しながら、放射線の危険性や体への影響を詳細に説明したらよかったと思います。それからメディアが専門家を出すときは「何々大学の教授」と紹介するだけでなく、「その人は基本的に原子力を促進している人か、反対している人か」も指摘しなければなりません。ジャパンタイムズが専門家を取材するときは、基本的に反対派か支持派かということを指摘します。そうすることで、その人の立ち位置がよくわかるからです。

アメリカにThe Center for Public Integrity(センター・フォー・パブリック・インテグリティ)というNPOがあるのですが、そこの記事には、例えば原発について発言する大学教授や原子力の専門家が原発支持派なのか反対派なのか、それからどのような専門なのか、過去に原子力発電所からお金をもらっていたか、などの詳細が書かれています。「この人はどう考えているか」だけでなく、「この人はどこにつながっているか」も説明しているわけです。

今回のような場合、こうしたことは非常に大事です。大切なのは、あなたたち日本国民が、情報が正しいかどうか自分で判断できるようにすることだと思います。

石倉洋子: 状況が悪化する可能性がある、と政府が発表するとパニックが起こるとよく言われますが、「これから悪くなるけれども、この地域では水は十分あるから買いだめしなくても大丈夫です」ときちんと言っておけば、「私のところはまだ大丈夫だから買わないでおこう」と冷静な行動はできると思います。理想的には。でもある番組で言ったらワーッと広まってスーパーから水が消えるとか、特定の食料が売り切れになるという現象は、今回の原発だけではなく、ほかにも結構ありますよね。だから冷静に考えるという啓蒙活動も必要かもしれません。

エリック・ジョンストン: ドイツの記者たちも、そう指摘していました。

世界はこれから日本がどういう選択をするのか、原子力を継続するのか、あるいは自然エネルギーをはじめとする新エネルギーに移行するのか、復興はどうなるのか、皆さんを見ています。これからの責任はマスコミより何より、あなたたち日本国民の責任です。

石倉洋子: では私たちは何をしたらいいのでしょうか。先ほど、在日外国人たちが過剰報道に対する反論活動を始めたと言われましたが、そういう「草の根」的な、ソーシャルメディアを活用した活動を私たちもしたほうが良いのでしょうか?

エリック・ジョンストン: したほうがいいと思います。

石倉洋子: 誰かに任せておくのではなく、やはり私たち個人がちゃんとものを言わないと、変なことは「変だ」「どうしてなんだ」と言っていかなければいけないということですね。

エリック・ジョンストン: そうです。

石倉洋子: ありがとうございました。(了)

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Eric Jonston
ジャパンタイムズ


該当講座

東日本大震災・海外報道の舞台裏

~外国メディアは日本をどのように報道したのか~

東日本大震災・海外報道の舞台裏
Eric Johnston (ジャパンタイムズ大阪支局次長)
石倉洋子 (一橋大学名誉教授)

エリック・ジョンストン(ジャパンタイムズ大阪支局次長)
石倉 洋子(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)
3月11日に発生した東日本大震災がもたらした未曾有の被害と原発事故は世界中の注目を集めました。
海外メディアの報道はセンセーショナルで不正確な情報も多いと指摘される過剰な報道がされました。20年以上日本に滞在し、日本語で原発問題を含めて取材活動を続けているジョンストン記者をお招きして、東日本大震災における海外報道の舞台裏に迫ります。


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