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日本は文化で世界に打って出る

近藤誠一文化庁長官×竹中平蔵が語る「文化と経済」

アカデミーヒルズセミナー文化政治・経済・国際
更新日 : 2011年09月09日 (金)

第8章 これからの「文化」の話をしよう

竹中平蔵氏(右)近藤誠一郎氏(左)

竹中平蔵: 私はこの3年間で何回か、海外で講演するときはアーティストの演奏会を一緒にやりました。非常に親近感を持ってくれますので、交流の価値はあると思うのです。

文化を外交に積極的に活かすことについて、近藤長官は長年外務省で仕事をされてきたご経験を踏まえて具体的にどんなふうに取り込んでいかれますか。

近藤誠一:  外交における文化は、一言で申し上げると「日本が持っている文化の魅力、ジョセフ・ナイのいうソフト・パワーをもっと活かすべきだ」と思います。しかし先ほどの「政府がどこまで予算を出すか、だれに出すか」という問題と同じように、外務省なり政府なりが外交という観点からどこにどうお金を使ったらいいのかという大きな問題がでてきます。こうなるとつまるところ、「人間の交流」に尽きると思います。

歌舞伎をニューヨークに持っていったり、インターネットでいろいろなアイディアを発信したりすることももちろん大事です。でも日本の文化の魅力を世界に知らしめるのに一番いいのは、海外のアーティストを日本に呼んできて住まわせることだと思うのです。海外のアーティストが日本に3~6カ月ほど住みながら制作活動を行う「アーティスト・イン・レジデンス」というプロジェクトがあるのですが、これを体験して日本が嫌いになった外国人はいません。日本にはそういうシステムをNPOや地方自治体がやっていますが、どこも財政難、人材難で苦しんでいて、欧米と比べると非常に貧弱です。

あるところでは年間に3人しか受け入れる能力がないけれど、それに対して300人以上の応募があったそうです。それだけの需要があるのに受け皿がないのです。そういうところを支援したいと思っていて、予算を政府原案に入れています。

美術品やオーケストラの交流もいいですが、やはり人がその場に行ってインスピレーションを得ることです。そのために人の交流をもっと増やすこと、日本に若い海外のアーティストを呼び込むことが最大の日本文化の発信であり、ソフト・パワーを外交に活かす最も効果的な方法だと思います。

竹中平蔵: こうした運動を具体的にしていくためにはコンセプトリーダーが必要です。文化行政の最高責任者がこれだけアクティブに活動なさっているということで、大いに敬意を表するとともに、コンセプトリーダーになっていただきたいと思います。

そしてきょうお集まりの皆さまには、ぜひ一人ひとり行動を起こしていただきたいと思います。早く帰ってコンサートに行きましょう。パトロネージという言葉がありますが「自分はこのアーティストの作品は必ず見に行く、いい批評家になる」というようなことも、ぜひやっていただきたいと思います。ありがとうございました。(終)

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近藤誠一×竹中平蔵が語る「文化と経済」

~日本は文化で世界に打って出る~

近藤誠一×竹中平蔵が語る「文化と経済」
近藤誠一 (元文化庁長官)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/東洋大学教授/慶應義塾大学名誉教授)

近藤 誠一(文化庁長官)
竹中 平蔵(慶應義塾大学教授/アカデミーヒルズ理事長)
昨年7月に第20代文化庁長官として、外務省からの初めての起用ということで就任された近藤氏。外交官として長期に渡る海外経験から、日本を外から見てきて感じたことは、これからの国づくりにおいて、文化・芸術を柱の一つに据えなくてはいけないということでした。竹中氏が近藤長官と「これからの日本の文化と経済」について語ります。


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