オピニオン・記事

20世紀から21世紀の「幸福の方程式」へ

~消費と幸福の新しい関係~

更新日 : 2010年10月18日 (月)

第8章 21世紀は、幸福をみんなに広げる「福活」の時代

袖川芳之氏

袖川芳之: 人々は、20世紀的な関係から逃れたいと思っています。その関係は3つあります。1つは組織の上下関係、2つ目は規模の大小関係、最後に、金銭の授受関係です。ビジネスや社会的地位のような経済的な関係から逃れて、ひとりの生活者としての自分の時間をいかに充実させていくか、人とのつながりをいかに豊かにしていくか、自分で自分の価値をどう肯定していけるか、これらが自分の幸せになっていくということです。

そういう視点で見てみると、なぜ今話題の活動に私たちが期待を寄せるのかがわかります。『フリー』という無料経済の本もそうです。これまではお金をたくさん持っている人のところに、人が集まりました。でも今は、人がたくさん集まるところに、後からお金が集まってくるのです。人の集まりをつくれば、これが資本になるというわけです。

それから「クリエイティブ・クラス」という新しい考え方で働きたいと思っている人が、特に若い人の間で増えています。クリエイティブ・クラスというのは社会学者のリチャード・フロリダの造語で、高い専門性を持ち、内発的な動機によって働き、自分にしかできないことを仕事にする人々のことです。

リチャード・フロリダの主張は、「彼らは仕事が好きでたまらないから働くのであって、生活のために働いているわけではない。アメリカにはこういう人が約30%以上いるために、今でも生産性の高い社会でいられる」というものです。

クリエイティブク・クラスは内発的な動機で働いているためとても意欲が高く、生産性も高くなるのです。こうした人々を管理するには、従来の「遅刻厳禁」や「昼休みは12時から1時まで」などのハード・コントロールではうまくいかないので、ある程度自主性に任せるソフト・コントロールによって能力を最大限に引き出すような管理をすること。これが、これからの職場に求められると思います。

すでに、20世紀の幸福文化と21世紀の幸福文化の間で軋み=「カルチャー・クラッシュ」が起きています。「働き方」はハード・コントロールよりソフト・コントロールへ、「組織」はピラミッド型ではなくNPO型のフラット組織へ、「ビジネスの資本」はお金ではなく人間関係に重点が移っていくでしょう。

今後、あらゆるビジネス、あるいは個人の生き方が「20世紀型の幸福文化か、それとも21世紀型の幸福文化か」と峻別され選択されていくのではないでしょうか。働く人も、恐らく21世紀型の幸福文化の会社で働きたいと思うでしょうし、そちらのほうが収益性も高く給与も高くなっていくでしょう。

最後に、「20世紀の幸福の方程式」と「21世紀の幸福の方程式」では何が違うのかをまとめておきます。20世紀の幸福は家族が単位になって消費をし、余暇・レジャーをいかに楽しむかでした。社会学では「コンサマトリー」という言葉を使うそうですが、今を自己目的化して享受する、自己充足的な価値観が重視された時代です。

ところが、それに行き詰まって、人とつながるために自分の時間を何か社会や人のために役立てたいというのが21世紀的な幸福です。それが可能な最も現実的な行動は、消費より仕事、ということです。人は自分の人生の充足につながる仕事をし、将来につながるような時間を過ごしたいのです。

自分の楽しみを追求するのではなく、幸福をみんなに広げるような活動を、私は婚活になぞらえて「福活」と名づけました。これからは、幸福の活動を広げていく時代になると思います。そしてこれこそが20世紀から21世紀の幸福の方程式の変化なのです。(終)
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『幸福の方程式』

山田昌弘
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20世紀から21世紀の「幸福の方程式」へ

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20世紀から21世紀の「幸福の方程式」へ
山田昌弘 (中央大学 文学部 教授)
袖川芳之 (株式会社電通 ソーシャル・プランニング局 プランニング・ディレクター)

山田 昌弘(中央大学 文学部 教授)
袖川 芳之(株式会社電通 ソーシャル・プランニング局 プランニング・ディレクター)
いま、「幸せ」ブームと言われています。戦後、長い間「消費によって豊かな家族をつくるということ=幸福」という図式を誰もが共有していました。しかし価値観が多様化し、不況を迎えたいま、新しい「幸福の方程式」が求められています。本セミナーでは、「パラサイト・シングル」「格差社会」「婚活」など数多くのブームの火付け役となった気鋭の社会学者である山田氏とマーケターの袖川氏が、幸福観の変化から読み解く新しいライフスタイルと消費のカタチについて語ります。


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