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野中郁次郎氏が語る、未来を経営する作法~美徳のイノベーション~

VISIONARY INSTITUTE - 2010 Seminar

更新日 : 2010年10月05日 (火)

第7章 これからのリーダーは「知的体育会系」を目指せ

野中郁次郎氏

野中郁次郎: おそらく賢慮というものは、さまざまな関係性を読み取ることが肝心です。そのとき大きな力を持つのは、哲学、歴史、文学、芸術などの教養です。マネジメントのハウツー本では、大きな関係性や本質を見ることはできません。

教養を得るには時間がかかります。例えば富士ゼロックスの元会長、小林陽太郎さんは教養の勉強会を20年やっています。毎回テーマを決めて2泊3日ぐらいで行われるので、私は女房と参加していますが、20年間ですから、時間がかかるんです。ですので日常の仕事の中で、どれほどリーダーとして本質論をやるかということが重要になります。

また、非常に質の高い経験も必要です。それにはとりわけ徒弟制が効果的だと思います。私は9年間会社に所属しましたが、「ああいう課長になりたい、ああいう部長になりたい」というお手本がいました。実践知は現実の動きの中で判断をするわけですから、マニュアルに書けないんです。ですので、優れた人と共体験をすることが大事です。

私が尊敬する経営コンサルタントの1人に、ラム・チャランというインドの方がいます。アメリカの一流のコンサルタントですが、彼の数十年来の結論が「人材を持続的に育成するには徒弟しかない」なんです。私もそう思います。しかしそれは昔の徒弟に戻れというのではありません。徹底的にITを駆使しながらも、質の高いアナログの共体験をすることが必要だと思うのです。

教養のすごさに関しては、やはりドラッカーは大変な方でした。教養の幅が広いので、人と同じものを見ても、人には見えない本質を見抜く能力がありました。一方、本田宗一郎は「現場・現物・現実」から五感で感じ取って、動きながら考え抜き、普遍に迫る天才でした。

我々は2人のような天才ではありませんから、日常の一期一会、一回しか起こらないものの中に普遍を求めるためには、目的意識を持ったり、偶然を取り込んだりして、絶えず自分の知を練磨しなければなりません。常識を非常識化する、凡事を非凡事化する、日常を非日常化する、そうすることで誰にも真似できない洞察力が出てくるのだと思います。

もっと簡単に言えば、「知的体育会系」になれということです(笑)。SECIモデルのS(Socialization=共同化)とI(Internalization=内面化)はそもそもどちらかといえば体育会系ですが、E(Externalization=表出化)とC(Combination=連結化)は徹底的に分析する分野です。しかしContemplation in Actionというか、動きながら考え抜くということですので分離できません。

動きながら本質を考え抜く、絶えずよりよいことを無限に追求していくことが大事だ、ということです。(終)
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第1回 美徳のイノベーション 未来を経営する作法
野中郁次郎 (一橋大学 名誉教授)

野中 郁次郎(一橋大学 名誉教授)
2007年の『ウォール・ストリート・ジャーナル』誌で「The most influential business thinkers(最も影響力のあるビジネス思索家トップ20)」に選出された野中郁次郎氏のご講演です。


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